Let's go to him. side創
第1章最終話は創とちいのデートです。
創は他の男子がとっても気になっております。
「…で、ここで良かったのか?」
「うん。創君と久し振りに見たかったんだ。ここの桜」
私と創君は二人で小学校に来ている。
私達を1年生の時に教えてくれた先生が、再び小学校に赴任するというので、先生と連絡を取って小さな同窓会をすることになった。
全員集まる事は無理だろうけど、それなりに集まるみたいだ。
私が創君に相談して、結果的に二人で幹事をすることになってしまった。
私達は、先生との打ち合わせの後、かつての1年2組の教室から中庭の桜を見ている。
「あの頃の私達って、ちっちゃかったのね」
私は低い椅子と机を見て呟く。
「そうだな。先生に見つかると怒られるだろうけど、机に座るとちょうどいいのな」
「本当だね。なんか、くすぐったいね」
私達は顔を見合わせて笑い合った。
「で、広瀬とのデートはどうだった」
「どうって?必要な参考書を買って、少しローラースケートをして、マックに行った…だけだよ」
「ローラースケート?」
創君は怪訝そうに私を見ていた。そんなにトロく見られているのかな?
「実はね、滑れるんだ。今度一緒にやる?楽しいよ}
「そうだな。それよりも、今の時期の清水公園はどうだ?ちょっと遠いけど」
「そっか。桜が一杯咲いているかも。創君は行ったことある?」
「一度もない。お前はあるよな。だったら俺と連れて行ってくれよ。アスレチックもやりたいなぁ」
「それはいいけど…。ねぇ、創君」
私は、確信はないけれども…一つだけ気がついた事があった。
その事を…彼に聞いてもいいだろうか?
「創君、もしかして、ひで君達にヤキモチ妬いている?」
「さあ?どうだか?ちいは…どう思う?」
逆に聞き返される。やっぱり図星だよね。でも、気付いて欲しくないのだろうな。
「それは、分からない。私は創君じゃないもの」
「そうだよな。今日のちいは、少し意地悪サンだな。何かあったのか?」
これと言って、私に何かあった訳ではない。
「少しだけ…変わった位。でも、それは悪い子とじゃないから平気だよ」
「何かあったら、俺に言えよ。俺が一番…客観的に見れるから」
確かにそうかもしれない。私が感情的になっている時にクールダウンさせてくれたのは、いつも創君だ。
ひょっとすると、私自身が知らない私を彼は見ているかもしれない。
「もう少し、お世話に…なるかも」
「いつまでも、ちいならいいぜ」
創君は笑顔で私を見る。そんな彼の笑顔が眩しくって、ちょっとだけドキリとしてしまう。
私はゆっくりと彼の側を離れた。
ベランダに行くことができるドアを開けた。
春の香りが一気に教室に入り込む。
「S高で大丈夫か?」
「自分で決めたんだから、今から後悔はしたくない」
「そうだな。義人とはどこに行ったんだ?」
「義人君は、朝の練習で君塚に行ったの。そうそう、創君の言う通りだったの」
「あいつは…何をやらかしたんだ?」
「うーん、ほっぺ引っ張られたでしょ。満員電車だったけど、腕の中の押し込まれた。
私がそう言うと、創君の眉間には立派な皺が出来ていた。
「あいつ…シメル」
「義人君は、はとこだから…。いつものおふざけのつもりだと思うから…ね。それよりも…」
「それよりも?」
「創君には、笑っていて欲しい。今だから言うけど、入学式の時の創君の絵がいに私は救われたようなものだから。あの時は、本当にありがとう」
あの時は、精神的にボロボロだった。
よっちゃんの家で生活していた頃だ。
彼の笑顔は、私が辛い時はいつも隣で笑ってくれていた。
あれから時間がたった今でも、彼は私の側にいる。
「ちい、俺が支えてやろうか?」
「えっ?」
「俺、ちいが好きだから」
「創君、私…今は…」
「分かってる。今、伝えても俺の手を取れない理由は」
「うん。ごめん」
「だから、これからの時間を使って、ゆっくりでいいから…俺を見て?俺の事をもっと知って?」
「創君」
彼はゆっくりと私に近づく。
そして、私は彼の腕の中に閉じ込められた。
「これで義人と同じだな。でも…少しだけこのままじゃ…ダメか?」
「そうやって言って、逃げ道をなくすのは…ズルイ」
「ちょっとだけズルくてもいいだろ?お前はすぐに逃げ出すんだから」
「むぅぅ」
小学校からずっと同じクラスだった彼だけに私の事はそれなりによく分かっている。
もしかしたら…ゆうくんよりは私の事が分かるかもしれない。
見た目的には創君に包まれるように抱きしめられているのに、不思議とドキドキしない。
よっちゃんは昔からよくギュウっとしてたせいだと思っていた。
創君にされている今は…不思議と安心する。
無意識に私は彼に甘えているのかもしれない。
彼の事は好きだ。でもそれは彼が求める好きではないことは分かってる。
「ちいは…ちいだけにちっちゃいな。思い切り抱きしめたら壊れそうだ」
「そんな事はないと思うけど…。ねぇ?創君、独占欲が強くない?ひょっとして」
「そうだな。それはお前限定かもしれないけどな。早く全てが解決するといいな」
「そうね。でも。これだけは分からないよ」
「あぁ。これ以上は何もしないから、もう少しこのまま桜を見ようか」
「絶対だからね」
「あぁ…分かってるよ」
私達は暫くそのまま、中庭の桜を眺めていたのだった。
第一章終了です。
創は勝負に出てしまいました。智の様にスルーさせない様に仕掛けるあたりは若干腹が黒い彼らしいところでしょう。
第二章は高校1年生編です。創のデート後数日たったある日からのスタートになります。しばしお待ちください。




