Let's try!! 6
「あるトラブルに、私が知らない所で巻き込まれたみたいなの。それから守る為に彼は私と別れることにした。…それだけ」
彼はコーラを一口飲んでから私を見た。
「それだけって。それって、嫌いで別れた訳じゃないって事だよな。二人で乗り切ろうと思わなかったのか?」
「それは…別れた彼しか分からない。ただね。私は二年近く彼の想ってきたの。彼が他の女の子と付き合っていた時もただ見ていただけだった。私が平凡だから、自分に自信が持てなくて」
「自分に自信がないのは…それは今でも変わらない?」
「うん。多分。私何の取り柄がないんだもの」
そう言うと、私は頼んだサンデーを口にする。バニラの甘さが心地いい。
「あんなに凄い歌を歌うのに?俺は凄いって思うのにな」
「でもね。それしかないの。泳いでいた時だって飛び抜けて早かった訳じゃない。学力だって…塾だったらそうでもない。全てが人よりもちょっとだけ出来るだけなのよ」
「ちいちゃんのちょっとだけって全くちょっとじゃないから」
とも君は、そうやって言うけれども、私が自分に自信がないものは仕方がない。
「だから…私はもう少しだけ…強くなりたい」
「なあ?ちいちゃん。これ以上強くなってどうしたいの?」
「人に頼らないで歩けるように」
ついつい甘えてしまう自分が好きじゃないから。これからの人生は多分、一人で生きていかないといけない。だから…。
「それは違うと思う。俺…ちいちゃんはもっと頼っていいと思う。おじさん、おばさんに」
とも君は考え込む私に、叔父達に頼ってはどうかと聞いてきた。
「いいのよ。あの人たちは、私がこれ以上頼ったら迷惑になるだけ」
「親でしょう?」
疑いもせずにとも君は言う。その言葉に私の心がチクンと痛む。
「…親じゃない。同居して貰ってるだけ」
「ごめん、俺…」
とも君は呟くように言ってから俯いていしまった。
「ねえ、とも君。顔を上げて。この事でとも君が気にすることはないからね。だって事実だもの」
「ちいちゃん、そんな事を言わないで」
「だめよ。私には親と言える人はもういないの」
「少しは聞いたことはあるけど、詳しくは…」
「私の両親は…私を守る為に…。だけど、親に捨てられた訳じゃない」
私は簡潔に説明をする。
「そうだったんだ。大変だったんだね」
「もう、かなり忘れてきているの。本当は忘れたくないのにね」
「でも、過去に縛られているのを、ご両親は望んでいると思う?」
「そうだね。ありがとう。…で、叔父夫婦と同居する時、名前をどうしても変えたくなくて、私は養子にならなかったの。だから、私の戸籍には今は私しかいないの。子供の癖に…生意気に我がままを通したのよ」
あまり言わない事だから驚くよね。
「だから…綾乃…姪が生まれたことで、私の存在は荷物になりつつあるの」
「だから、今日も誰もいなかったんだ」
とも君はどこか納得したみたいだ。
「そう言う事になるね。学校とかでは保護者になっているから、そういう時だけは繰るけどね。表向きは叔父達を親と呼んでいるだけ。本当は…他にもいろいろあるけど…高校を卒業するまでは家にいる事は決まっているから。本音は今すぐにでも家を出たいのにね」
こんなことまで、とも君に言っても良かったのかな?
「じゃあ、なぜ静香ちゃんは知っていたの?」
「それは…私の家の田畑と静香の家の田畑が隣だった…それだけよ」
「へえ、知らなかった。俺は初めて知った」
「そりゃそうよ。近所の人しか知らないと思うよ。そんなたいした話じゃないでしょ?」
多分、大人は知っていても子供になると知らない話もあると思う。
「それってさ、財産があるってことでしょ」
「ま…ね。そう言う事を言うと、安井みたく変な事を言う奴がいるから知られたくない」
「安井って…やっちゃん、何かしたの?」
「お金を持っているから、私立に行くって言い触らしてくれたのよ。けれどね、安井が行くB高の方がS高よりもお金がかかるのにね」
「…やっちゃん、口が軽いからなぁ」
「そう。安井はそこを利用されたの。そのお陰で一時的にクラスの空気がすこぶる悪くって。私なんて、本当に行きたかった学校を泣く泣く諦めたっていうのに」
「何それ?俺知らない」
「私、誰にも言ってないもの。担任も知らない話だから」
「どこに行こうとしたの?」
次回で第1章最終話になります。が、おまけが2話程くっつきます。
義人「広瀬だけデートずるいよなぁ?」
創「広瀬だけ俺得じゃね?後輩の癖に」
トムトム「はいはい、あんた達もデートしたいのね。パラレルの中で大人しく…いてぇ」(口を塞がれる)
二人「僕らもデートしまーす」
…だそうです。




