Let's try!! 5
「ごめんね。クラブの同期がいて、話をしていた」
「ナンパされたのかと思った。本当に知り合いなのか?」
「何?ヤキモチ妬いているの?」
「ヤキモチなんか妬いていてないって!!」
広瀬はムキになって答える。
彼の知らない私の世界に嫉妬している事は良く分かった。
絶対に本人は認めないと思うけれども…ね。
「はいはい、からかったのは悪かったわ」
私は彼にちゃんと謝ることにした。
これで機嫌を直して貰えればそれでいい。
「まっ、いいよ。何ものなかったんだから」
「ここの方校舎天国って、よくクラブの皆で来ていたんだ。だから…少しだけずるかったかも」
「そうなんだ。俺、あんまりやった事がなくって」
彼は小さな声で言う。
まあ、渡した無理矢理誘ったのが事実だしね。
「ちゃんと言って。その位では何も言わないから。私が平気だったのが…悔しいんでしょ?」
「…凄く…悔しい」
広瀬は呟いて少し俯いてしまった。ちょっとやり過ぎたかな。
「だったら、また今度一緒にやろうよ?どう?」
「いいの?」
「私は楽しいからいいわよ。それにね…私一輪車も乗れるのよ。もっと意外なんじゃない?」
「えっ?」
「信号の先では一輪車が乗れるのよ。乗りたい?止めておく?」
さっきまでローラースケートで遊んでいた三人は今度は一輪車で遊んでいる。
「なんか意外。そういうのは、出来ないんだと思っていた」
「成程。きゃあきゃあ言うと思ってた訳ね」
「ちょっとだけ…期待していた。ごめんなさい。ちいちゃんローラーブレード平気なの?」
「じゃなければ、この服装では使わないよね。スラロームとかなら出来るけど?披露しとく?」
「俺出来ないから。見ててもいい?」
「いいよ。でも1回でいいや。ちょっと待っててね」
私はそう言って、スラロームを超えていく。久しぶりなせいか少しだけぎこちないのは愛嬌だ。
「凄いね。俺も慣れたら出来るかな?」
「私だって、凄く転んだもの。大丈夫。出来るって」
「ようし、だったら…練習してみようかな」
素直に現実を受け止めて、受け入れる。こういう事がすんなり出来るのが、広瀬のいい所だと私は思う?
「それでは、手を繋いでいきますか?ともくん?」
「ともくん?」
「今、思いついた。誰もそうやって呼んでないよね?嫌なら置いていくわよ」
「置いていかないでよ。確かに…誰も言ってないかも」
「はいっ!!決まり。行くわよ」
私達は互いに手を繋いで暫くローラースケートを楽しんだ。
「どうだった?ローラースケートは?」
「すげー、おもしろかった。また来ようよ。いいよね?」
「時間が合えばいいよ。遊びに行く位」
「やったぁ!!それと…本当に食べていいの?」
「いいけど、食べないの?冷めるとおいしさ半減するよ」
私達はマックでポテトとコーラとサンデーを食べている。
先月のあの日まで、ゆうくんと来ていたマックに今はとも君といる。
それが少しだけ不思議な気分だ。
「ねぇ、俺が聞いたら…教えてくれるの?」
「何を?」
「その…男と別れた理由」
昨日の今日だから、聞かれる事は十分分かっていた。
「今?」
「言える範囲でいいから。静香ちゃんがちいは悪くないって言っていたから…」
私は考え込む。まだ私が知っている全てを話せる状況ではない。
私が皆に放した2月のあの日よりは、真実は見えてきたから、彼がなんでそうしたかは理解できる。
けれども、どこまで…とも君に言っていいのか分からない。
私が言える範囲だけでいいから放そう。私も現実を受け入れないと。
ようやく、パラレルでの呼び名が出てきましたね。
今後は広瀬ではなくて、とも君になります。




