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In other word・・・  作者: トムトム
1章 A turning point ~中3冬~
57/134

Let's try!! 3

「ちいちゃん。ちいちゃん、どうしたの?」

広瀬が私を覗き込んでいた。

「うわぁ…びっくりしたぁ。ちょっと考え事をしてた。ごめんね。ねぇ…それよりもまだ背が高くなってない?」

「そりゃ…成長期ですから。それから、それを挨拶言葉にしないで下さい。いつも言いますよね?」

「うーん、私としては、おはよう感覚なんだけどなぁ…なんでよ?」

「親が…俺がまた大きくなったって泣いているから」

俺が凄くまじめな顔をして言う。

私は意味が分からなくて、怪訝そうな顔をする。

「制服を買い替えるんだって…さ」

それは確かに親泣かせかもしれない。

けれども、広瀬にはなお君…兄の制服があるはずだよね。

それはどうなっているんだろう?

「なお君の制服は?あるはずだよね?」

「兄貴の制服を今着ていて…。その制服がきつくなってきて…」

シュントした顔で呟く。

なるほど…なお君より大きくなったってことね。

親としては嬉しいけれども…同時に親不孝もしているんだ。

「いいじゃない。それでも。そんなに高くなりたくないのなら…私にちょうだいよ」

「ちょうだいって…。そんな子供見たく言わないで。あげられるものなら熨斗を付けてあげますよ。今すぐに」

「まあまあ。それはともかくとして、何であろうが広瀬は広瀬でしょう?」

「ちいちゃん、俺の事が苦手なのか嫌いなのかと思ってた」

いきなり言われたことの真意が分からない。

それよりも、なぜ私が広瀬の事を嫌いにならないといけないのだろう?



「なんで?」

「ちいちゃん、背の高い男…嫌いだろう?それとも苦手なのかな?」

真剣な顔をして言う彼を見て、私は微笑む。

それは…ちょっと違うんだよね。

説明して、分かってくれるといいんだけど…。

「背が高いから嫌いじゃないの。上から一方的に見下すように見られるのが嫌なだけで、背が高いだけで嫌いって言ってる訳じゃないの。それに私より背の高い男が嫌いってなったら…ほとんど皆嫌いになっちゃうよ。ってことは、私の恋愛対象になるのが、小学生じゃない。そっちの方が…個人的にはどうなのかな?言っておくけど、そういう趣味の人を悪くも言ってないから」

私は広瀬に分かってもらえるように説明する。

こう言う時、人に伝えるのがいかに難しいか痛いほど分かる。

「ちいちゃんの言いたい事が分かったよ。じゃあ、俺は嫌われていないんだよね?」

「もちろん。あのね…嫌いな人とはそれ以前に一緒に本屋に出かけたり、デートなんてしません。お分かり?」

私は彼の目を見て話す。

嫌いな人と出かけるお人よしなんて、この世に存在するんだろうか?

そうならば、ぜひ一度お目にかかりたいものだ。



「ごめんね。気になることを言って。それと、聞いてみたいんだけど…」

「ん?何?」

「兄貴の事はなお君なのに、どうして俺は広瀬なの?」

「…なお君は、去年の学校見学であった時に言われたのよ。それだけなんだけど」

「ふぅん。なんか…兄貴ムカつく。俺も呼び捨ては嫌だな。本当は」

「そう。何て呼ばれたいのよ?さとしくん?」

「それも…ちょっと…」

「何か考えます。それでいい?」

「なんで?」

「だって…皆と同じなのは嫌なんでしょう?だったら時間が欲しい」

私は思い浮かばないからすぐに答える事はしなかった。

「じゃあ、楽しみに待っているから」

彼は目を輝かせている。

そんなに期待されてしまうと却ってプレッシャーになってしまう。



「今日はどこに行こうかな?お金かけない所がいいよね?」

「えっ、本屋とか文房具屋じゃないの?」

「それだけでいいのなら、それでもいいけれども。期末も終わって、ちょっとは遊びたいでしょう?」

「だって、ちいちゃん…実力テスト」

「一日位遊んで出来ないテストな訳ないでしょう?それにこれからはずっと勉強できるんだから。今日くらいはいいじゃない?それなら…少しだけ遊んで帰ろう?」

「うん…だったら、遊んで帰りたい。それよりもお金をかけないで遊べるの?」

「もちろん。でも、ウィンドーショッピングじゃないから。とりあえず、本屋に行こうか?文房具屋は変える前でいいから。行こう」

私達は、本来の目的である本屋での参考書探しをすることにした。

「これでいいの?ちいちゃん」

「うん。貰った中に教科書ガイドもあったしね。ひつようならまた買うからいいわ」

「ふうん。そうなんだ。…で、どこで遊ぶの?」

広瀬は不安げに私を見ている。

彼のイメージでは、私は休日に外出しないイメージなのだろう。

確かに私が自分の意思で出掛ける事は少ないけれども、誘われてそれなりに出かけているんだけどな。

「大丈夫。たまには私に任せなさい。とりあえず行くわよ」

私は広瀬の前を目的地を目指して歩いていく。

今日は日曜日の午後。それでお金を使わないとくればアレしかない。



「歩行者天国でローラースケートをしよう」

「ローラースケート?できるの?」

「アイススケートよりは…ね。アイススケートはなんとか止まれる程度だけど…もしかして…出来ないの?」

「俺も…子供の頃にやったけど…」

「じゃあ、決まり。靴は借りれるから…ほらっ、行くよ」

こうなったら、久し振りに楽しもう。折角の休みなんだもの。

「分かったよ。ちいちゃん、俺が上手だったらどうする?」

「まっくでポテトおごってあげるよ…クスクス」

彼は元々負けず嫌いだから、私の言い方で火がついたみたいだ。

私は早速靴を借りて、歩行者天国で滑り始めた。

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