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In other word・・・  作者: トムトム
1章 A turning point ~中3冬~
55/134

Let's try!! 1

本編番外になります。

「おはよう、ちいちゃん」

「おはようって言うよりも、こんにちはじゃない?」

「まあ、深い所は追求しないでよ」

「はいはい。広瀬、先に貰えるものを貰ってもいい?」

「兄貴のノートなんかで大丈夫なのか?」

「なんかね。彼女さんのノートもあるらしいよ」

私は受け取った紙袋を廊下に置いた。

かなりの重さがあって…こんなに貰ってしまっていいのかな?と考える。

「もう行けるんだよね」

「うん。行こうか」

「おじゃましました」

「行ってきます」

言うけれども、返事はない。いつもの事だから私は気にもしない。

「あれ?誰もいないの?ちいちゃん」

「いいのよ。ほらっ、行くわよ」

玄関のカギをかけてから、私は自転車を取り出す。

「駅は近い方でいいよね?」

「そうだね。広瀬は夕方までに帰れればいいでしょ?」

「俺はね。ちいちゃんは?違うの?」

「似たようなものよ」

私を待っている人なんて、この家にはいない。

私達は自転車に乗って駅に向かう。



「ターミナル駅まででいいよね?」

駅で切符を買う時、私は彼に聞く。

ついでだから、彼の分の切符を買って手渡した。

「ありがと。ちいちゃん。お金払うね」

彼の分の料金を貰って、二人で改札口に向かう。

「広瀬…昨日は本当にごめんね」

「今日、ちょっと用事があって学校に行ったら、岩城先生がいて聞いたんだけども。練習のアカペラを録音していたんだって。聞かせて貰ったよ」

「いつの間に…。やっぱり先生、侮れないね。学校の用事は終わったの?」

「生徒会の書類を出し忘れたのがあったから、ちいちゃんの家による前に出してきたんだ」

「俺ね。何も知らなかった」

「何を?」

「ちいちゃんが、あんなにすごい歌を歌いこなす事」

「あんな歌?昨日の事?」

「うん。別れた後たってのに、あんなにまだ想っていている事。普通なら、あの歌は歌えないのにそれでも歌おうとするから」



「広瀬。確かに、彼はもう私と一緒にいることはない。けれども、彼を想った気持ちを、彼の想っていた時間をなかった事には今の私にはできないし、一人じゃないの。私は、一人ぼっちじゃないの」

「ちいちゃん…」

「それに彼が私に嘘をついてまで別れることにした彼を…今は辛いけれども信じることにしたの」

「それでいいのか?」

「うん」

「俺だったら、その彼に会いに行く。その考えはないの?」

「本当は…そうしたい。けどしない。多分、何かのトラブルに私か彼か、それとも二人で巻き込まれたんだと思う。それが泥沼にならない為に、彼が決めたのがこの別れなんだと」

「ちいちゃんは強いね」

「そんなことないよ。たくさん泣いたよ。私だって…女の子だよ?」

「ごめん。言い過ぎた」

「その位、気にしてないよ」

わたしは彼に余計に心配掛けさせたくなくて、笑顔をみせる。

多分かなり痛々しく見えているとは思うけれども。



「それでね。先生と練習中のアヴェ・マリアも聞いたんだ。聞いててすごく悲しくなった。何があったの?」

「何と言われると困るけど…自分の気持ちを自分が受け入れられなかった頃だと思う。結局自分の気持ちに対して開き直ることにしてみたの。それだけよ」

「ふぅん。そうなんだ。ってことは明日は?」

「一日中掃除だよ。毎年恒例の。えっ、ちいちゃん手伝いに来るの?」

確かに卒業式後は毎年大掃除をする日が一日ある。

今年は卒業式が土曜日だったから、翌日にできないだけか。

出し忘れの書類は多分大掃除関連なんだろうと私は思った。

「昨日も、準備があったんじゃないの?一緒に帰って平気だったの?」

「準備は空き教室に用意したから大丈夫だし。役員は生徒会室の大掃除しないといけないから少し片づけできたから」

「フライング…よくない」

「小さい事は気にしないの。それにこの時期の大掃除はゲーム感覚でしょう?」

「そうだね。先生がいいって言ってくれたら、帰れるからね。毎年10時には帰れたもの」

「なにそれ?何でそんなに早く帰れるの?」

「うーん、気合い?嘘よ。大掃除の為に、少しずつ窓を拭いたりしておいたからね」



「なるほどね。それから…これ」

広瀬から、小さな包みを渡される。

「これは?」

「今日は何日?」

今日はなにかあったっけ?世間的にはホワイトデーで浮かれている。

確かにバレンタインデーも家に取りに来たっけ。

私はあげているけど、お返しは兄弟でまとめて貰っていた。

「ホワイトデー?」

「それと卒業祝いも兼ねたのだって。兄貴から」

なお君からのプレゼントを受け取る。

「兄貴からって今年からは別になったの?」

「っていうか、ちゃんと渡したいなぁって思って。でも…何がいいのか分かんなかった」

「なるほど」

「でも、今までの感謝の気持ちは多少なりにあるんだけど…何が欲しい?」

広瀬らしい直球な質問に私は拍子抜けした。

私は広瀬の顔を見る。なんとなく、ちょっと子供がえっへんって威張ってる感がないわけではない。

その姿は普段見掛けない表情でちょっとおもしろい。

ここは素直に喜ぶべきか?それともモノ申すべきか?

「気持は有難くお受け取りします。ありがとう」

「何もいらないの?」

「っていうか、思い浮かびません。いきなり言われても」

「そりゃそうか」

とりあえず、素直に感謝の言葉を伝えることにしておいた。


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