I will graduate something? 何を卒業するんだろう? 24
今回は使わない、右側の舞台そで。私達はそこで着替えることになっている。
私は先生たちの言われるままに、パイプ椅子に座っている。
「まずは、頭にカーラーを巻こうね」
私は岩城先生と家庭科の栗山先生におもちゃにされている。
髪にカーラーがどんどん巻かれて、あっという間に仏像みたくなる。
「暫くそのままだから、次はこっちよ」
栗山先生に綿を渡される。
要は、ブラジャーの中にその綿を詰め込めという事…らしい。
「いい?隙間なく、ふっくらとさせるのよ。いい?」
先生…。そこまで強調しなくってもいいんじゃないでしょうか?
私はヤケになって綿を詰め込んでいく。
「先生…足りない…」
「大丈夫よ。まだあるからね。どんどんいってみよう」
私は栗山先生のノリについていけない。
確かに、先生に借りるドレスは多少胸がないと綺麗に切られないデザインだ。
必死になって綿を詰め込んでいる自分で大丈夫なのか?とかなり不安になる。
「先生は…私をどうしたいの?」
「えっ?佐倉ってば聞いていないの?仕方ないなぁ。佐倉はどっちかというと可愛い系だよね?」
「…なの?どうかなぁ?」
「いいから。それをね、なんとセクシーな女性に改造するの!!」
私はすごく気が遠くなった。
私はお世辞にもそんな体系には程遠い。
「それって、マリリン・モンローみたいな?」
「そこまでじゃないけど、近い所かな?メイクは唇だけにするけど、真っ赤な口紅でちょっと大きめにかいて、最後に眉ずみでほくろを書くの。そうすれば別人になるわよ。任せなさい」
「何も言いたくないです。だったら髪の毛は?ゴスペルの時はロングのかつらでしょう?」
「そうよ。今のはアヴェ・マリアの準備。ヴェールをかけるからすっきりとまとめようと思ってね」
私の髪の毛は今は肩にかかる程度の長さしかない。そんなんでまとめられるのかな?」
「ちょっと辛いけど、髪をまとめるわよ。歌い終わったら最後までいないで生徒会室の広瀬と帰るの?」
「帰るかは分かりませんが、最初から最後までいる気はありませんから」
「だから、制服でも帰れるようにまとめてあげるから、安心しなさいね」
「ありがとう。先生」
先生たちはテキパキと私の髪をセットしていく。あっという間に、編み込みでまとまった自分がいた。
いつも。。。見なれている自分じゃない気がして恥ずかしくなる。
「ところで…広瀬の紅白は受け入れるの?」
「追いかけて行くにしても、1年は遠距離か。いいね。若いって」
先生たちは言いたい事を言うが、私は広瀬にいつ告白されていたんだろう?
「先生…私、告白されていた?記憶にない」
「プッ、佐倉ってば…」
「広瀬ってば…。可哀そう。でも佐倉は失恋したばかりだっけ?」
「う…うん」
もう、私には隠す必要がないから答えることにした。
「でも、あれだけの思いをのせられる恋をしたわけだ」
「うん」
「ちょっと早いけど、大人になるには一度は経験することだからね」
「本当に?」
「本当よ。じゃあ、佐倉。恋の次は何になると思う?」
「恋の次?愛かなぁ?分かんないや」
私は首を捻った。
「分かんないって言いながら、分かってるって」
「そうね。愛。分かりやすく言えば、好きから愛おしいに変わるってことかな。日本ととしては愛しているという事はを的確に表現できないから」
「愛しているという表現も明治より後の事だから」
「だから、明治の文豪が、死んでもいいとか月がきれいですねと訳したってことなんですね。それとも…お
慕いしますって事になるんですかね?」
「そうなるね。佐倉が彼とどれだけの期間一緒にいたのかは知らないよ。でも、二人の間には確かに愛が存在したんだと思う。だから、別れをすぐに受け入れられなかったのよ」
「そうなのかな?」
「多分…ね。こういう事には答えはないから。いろんな恋もあるし、同じように会いもいろいろあるの。今は辛いだろうけど、彼に出会えたことは佐倉にとって良かった事になると思うわよ」
「うん。それは分かってる。彼が私に嘘をついてまで決めた別れだから。何か絶対に隠している」
「そうなの。それは余計に辛いね。ゆっくり時間がかかるけど、忘れて行くから。そのうち…彼とばったり会っても笑える日が来るからね」
「そう?」
「そうよ。たまには大人を信じなさい」
「はい、先生。頼りにしてますよ」
私達は顔を見合わせて少しだけ笑った。
こんな話…先生と話してもいいのかな?