I will graduate something? 何を卒業するんだろう? 23
私は知っているから。ちいは腹筋も凄いものね」
「それよりも、静香の体のバランスの方がいいって」
「それはちいのアドバイスのお陰だよ。私、今の方が体が軽いもの」
「何よ…それ…。静香、抜け駆けはないんじゃない?」
雅子ちゃんが本気で怒っている。
「まぁ、まぁ。二人とも。身長があるんだから、バランスが取れていればいいのよ。もしも、私がだるまみたいだったら…どうする?」
4人は一気に黙る込む。本気で想像しているようだ。酷いなぁ。
「私がやっているのは、体育の本にストレッチがあったでしょう?あれを1時間位かけて全部やって、凄くゆっくりペースで1時間走って、ゆっくりと筋力トレーニングをしているだけだよ」
「本当にそれだけ?」
「うん。それだけだってば。今から始めれば、入学式位までには腹筋と背筋はすっきりとするよ。腕や太もも周りは、ちゃんと続ければ夏服の頃には結果が出ると思うよ」
「皆は…って」
「それ以外に何かあるのか?」
「私には…いろいろあるのよ。増やしたい所がさ」
4人は苦笑いをして私を見る。今の私は変身前のワンピース姿。
まっ平らで奥行きがない私がそこにいる。
「まっ、成人式だろ?その時が楽しみだな」
「そうそう。後5年後あるからさ」
「皆が振り返る女になってるかも」
「意外なところで奥さんになってたりして?俺の奥さんにでもなってみるか?」
4人は言いたい放題だけども…最後のはどうなんだろう?
「私…結婚願望ないよ」
「でもさ、あんなに凄い恋愛するんだもの」
急に声のトーンが下がる。一応気にはしてくれているみたいだ。
「私ね、今まで告白されてから付き合ってきたじゃない?」
「そうね」
「そうだな」
「だからね、受け身の恋はもうしないって決めたの」
「ちいはどう…ありたいの?」
「付き合う人が、私で傷つくんじゃなくて、私が守ってあげたいの」
「無理だろう?そんな事」
創君が即答する。そんな事は誰よりも分かってる。
「現実的には、無理なのは分かってるよ。でもね、私といることで、彼の足を引っ張りたくない」
「それは相手次第じゃねぇの?だったら、広瀬の次に俺も立候補しようかな?あいつなんかより俺の方が近い距離にいるんだから」
ノリの良い義人君は言ったけど、最後は早口で良く聞こえなかった。
「ずりぃ。義人がするんだったら俺も立候補する」
創君まで言い始める。
「じゃあ、私は誰かを紹介してあげよう。どんな人が好み?」
「こいつのハードルはかなり高いんじゃないか?今までだって、そこそこレベルの高い男といたんだし…」
創君はそう言ってから、私を見る。
「そんな…私のハードルって高くないって」
「とりあえず、最低ラインを言ってみな?」
「えー、私より背が高い事…かな」
「はぁ?」
「そこが最低…なんだ」
「じゃあ…次は?」
「えっと…私が凄いなぁと思う何かがある人がいいな。後は…私を丸ごと受け入れてくれることだよ」
4人は呆気にとられている。なんで?どうして?
「そっ、そんなに低いの?」
「それなら、俺らも大丈夫だよな」
「ちい…俺は?義人がいいなら、俺も…だよな?」
「ねぇ、ちい。敢えて聞くけど、スポーツマンとガリ勉…どっちがいい?」
4人に一気に言われる。そんなに矢継ぎ早に言わなくても。
雅子ちゃんがある意味で究極の選択を迫ってきた。どうしようかな?
「うーん、脳みそ筋肉バカも、勉強しか取り柄がないのも、ちょっと困るな。程々がいい」
「なるほどね。程々な訳か。だったら…顔は?」
「それはね、性格の悪さが顔に出ていない事。これだけは譲れない。ねぇ…やっぱり…ハードル高い?」
私は4人を見回した。
「いやあ。あまりにもハードルが低すぎて」
「ただ、そこからが大変なんじゃないの?…ね?」
静香はそう言ってから私を見る。確かにその通りな訳だけど。
「今度はね。自分から告白したいなぁ。したことないんだもの」
「それは…どうかな?イメージとしては守ってあげたいってタイプだよね」
「それは見た目よね。ちっちゃいし、きゃしゃだし。肌白いし」
「でも…頼んだことはそつなくこなすよね」
「うん、うん。器用貧乏っていうの?」
「…なんか、凄い言われようね。ねぇ、いずれは皆にも恋人ができるよね?そしたら皆で会いたいね」
「いいんじゃない?グループデートって」
私は上手くかわせたかなと思ってホッとしていた。
それから私は時計を見た。先生指定された時間が近い。
それと一つだけ確信した事があった。
私は一人ではない事に。まだ頑張れる。
「ごめんね。私、別人になってくる」
「そうだったね。いいように化けておいで」
「何だよ。その別人って」
「まあ…後で分かるから…くすくす…」
「静香!!」
「はい、はい。ちい、行っておいで」
私は皆より先に着替えないといけない。ないものをあるようにしないといけないから。
何もしないで着替えだけの静香と雅子ちゃんが羨ましかった。