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In other word・・・  作者: トムトム
1章 A turning point ~中3冬~
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I will graduate something? 何を卒業するんだろう? 21

「さっきの調子で歌いなさいね。広瀬君は今日はお疲れ様」

岩城先生は、そう言うと、私達に向かって近くなったら教科のモニュメントの下に集合よと私達に告げる。

私たち全員は、ゆっくりと第二音楽室を後にした。

「ちいちゃん、俺、待っていてもいい?」

別れ際に広瀬が私に聞く。

「別にいいけど…何?」

「直也から伝言があって…」

そう言うと、彼は言葉を濁す。人前では言えない話って訳ね。

「いいよ。適当な所で謝恩会を抜けるから、生徒会室で待っててね。迎えに行くから。ところで、今日の昼は?広瀬はどうするの?」

「今日はコンビニに買いに行くから。俺のこれから行くんだ。じゃあね」

そう言うと、彼は手をヒラヒラしながら、私達と逆の方向に向かって歩いて行った。



「なあ、さっきの広瀬の発言ってさ」

「そうそう。すごく意味深だよね」

「ちいは後輩を手なづけるの上手いからなぁ」

「さっきは一年生から花束貰ってたろ?」

皆はさっき委員会で世話をした子達から花束を貰った事を言ってるらしい。

「私…大した事していないのにね。それに…帰ったら仏壇に直行なのに。申し訳ないなぁ」

私は肩をすくめる。確かに私は同学年はともかく、年上にはいじられ、年下には懐かれる事が多い。

「ちいは広瀬はどうな訳?」

静香は再び、その問いをする。

「今は、誰であっても…無理。それはね、例え創君だって、義人君だって…同じだよ。今は姉と弟見たいになっているけど…私達の初対面の酷さは知っているでしょう?」

「…でも、アレから4年たつのね。あの時は本当にヒヤヒヤしたんだから」

「あのお陰で、私の想い通りになって、結局は先生達のプライドは保てたんだから…さ。大人の言う通りにしていたら…あぁはならなかった」

「そうね。確かに」

「広瀬か…先の話は分からないなぁ。個人的には直也君といる方が楽なんだけどね。直也君…彼女いるから」

私は正直に答える。本当の事を言うと、今は誰かと付き合う気がない。



「じゃあ、俺なんてどう?」

義人君が冗談っぽく聞いてくる。

「ごめん。優しいだけの人は、ゆう君だけでいい。私が尻込みしていたら引っ張ってくれる?」

優しくていい人の称号をほしいままにしている義人君には耳が痛いだろうな…きっと。

「ちっ、振られたぜ。それにちいが何気なく毒を吐いているし。だったら…創は?」

創君かあ。忠実。誠実が売りだよね。

「うーん、私が違う方向に行こうとしたら…私の事怒れる?」

「そんなの無理に決まってるじゃない。創が振り回されちゃう。ああ見えて、ちいはかなりのチャレンジャーなんだもの」

静香が創君が答える前に遮った。

「静香…そんなことないもん」

「十分あるって。ちい…先週末にたこ焼き食べたさに日帰りで大阪行ったよね?」

「うん…行ったよ。天下取りごっこも出来たしね」

私は正直に答えた。折角大阪に行ったんだから、お城には行くべきだと思うのね。

そうしたら、一人で空想を眼グあらせてもいいと思うんだけどな。

あれ?何か皆が呆れているように見えた。

「チャレンジャー過ぎ。むしろ、行動力ありすぎ。創、止めておきなよ」

雅子ちゃんも静かに同意する。



「それにさ…確か、この子ってば、屋上に行きたいがためにドアを思い切り蹴っ飛ばして壊したよね?」

「そんな事…あったような、ないような」

渋々私は答えた。何で2年前の事を今になって言わないといけないのよ?」

「なんでそんな事をしたのよ?」

「校舎の上を飛んでいるトンビを写真で取りたかったの」

「写真のコンクールに出したやつだっけ?」

「そう。アレのお陰で怒られなかったんだ」

あの写真は、入選したんだよね。プールと作文以外で賞を取ったのは初めてで嬉しかったっけ。

「夏のSLは新聞に載ったよな」

夏休みに近くをSLが走った時に知人の家から写真を撮ったり、駅で撮ったりした。

皆の言う写真は顔に石炭がついて汚れてしまった駅員さんを撮ったものだ。

「高校で写真は?」

「多分、やらない。使い捨てカメラは持ち歩くとは思うけど」

私が使っているカメラは亡くなった父が使っていたものだ。

大事には使っているけれども。ちょっとお金がかかる。

「最近は?」

「雪が降った時に何枚か撮ったよ」

「今…持ってる?」

「今はないけど、写真屋さんで現像を頼んだから写真屋さんにあるよ」

「今度見せてね。それより、ちい、先生が呼んでるよ。大丈夫だから行っておいでよ」

「うん、行ってくるね」



私は急いで、先生達の元に行く。斉木君の卒業証書を渡したら、すぐに歌うんだって。

それってさ…すぐだよね?すごく嫌だなぁ

「「まぁ、歌っておいで。アカペラでいくから、思い切り気持ち良く歌いなさい。佐倉」

「岩城先生まで…酷いなぁ…もう」

「マイク必要?」

「いらない。発声練習としてうたうから大丈夫」

「そこが、佐倉のプライドな訳ね。行っておいで」

「はい、行ってきます」

進行役の先生のアナウンスがあって、私はゆっくりとステージに上がる。

ステージ中央に立ってから一礼をする。

私は深呼吸を大きく一つする。大丈夫。私はできる。

それから私は歌い始める。



岩城先生が言うには、私は音程がほとんど外れない。

私自身はピアノの経験は全くない。

静香の家にあるピアノで少し触る程度。

高音域が広いらしく、合唱コンクールとかでは今までは控えめにしていた。

多分…先生は知っていたんだろうなぁ。

高校に受かってから、先生に誘われる形でヴォイストレーニングを始めた。

レッスン料は私の今の生活で十分払える料金だ。

正直に言うと学習塾よりも安い。良心価格だと思う。

歌うのは楽しい。両親も…渡した覚えている範囲では良く歌っていた記憶がある。

これからも、趣味として歌えたら…いいなぁ。

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