I will graduate something? 何を卒業するんだろう? 12
「もう卒業だね。ちい」
「うん。静香。本当にいいの?私と合わせると…朝が」
「平気だって。私も部活があるし、雅子の学校も不便な所だし、創は彼を探す気だし。それに義人君は同じ駅なんだからいいじゃない?」
「分かったよ。私の嫌は…皆には届かないみたいだね」
私は少し首をすくめて見せた。今日は卒業式当日。いつもより、ゆっくり登校してもいいんだけど、私達はいつも通り登校していた。
教室の中はまだ早いせいか、私達二人しかいない。
「おーい、俺も忘れるなよ」
「おはよう。創」
「おはよ。創君。忘れてないよ。創君は朝早くていいの?」
「満員電車は辛いと思ってさ。早いのは部活の朝連を思い出せば。それよりは遅いから気にすんな」
「ごめんね。それと…ありがと」
「ちい、お前…その言い方反則」
私と創君のやり取りを見て静香はニコニコして見ている。私は創君が何を言いたいのか分からない。
「俺…お前の事好きだった。でも、今のお前を見せられると、又…ちいに恋をするぞ」
「えっ、はっ、創君…」
「いいんだよ。ちいはちいのままで。それにしても、落ち着いてきたみたいだな」
「うん。あれから1ヶ月だものね。少し位はね」
「いつか…あの時のお前らみたく…俺も見せつけてやるからな」
創君は私の背中を叩いた。どうやら宣戦布告されたらしい。
「お手柔らかにお願いします」
「それより、ちい…声は大丈夫?」
静香が急に思い出したくない、現実に引き戻す。そうだった。
練習の為に早く来たんだっけ。
「いい感じに忘れていられたのに…。静香、練習したいから、鍵を借りてくるね」
「だったら、私も付き合うよ」
「謝恩会のか?ちいは何を今から練習するんだ?」
「…アヴェマリア…」
私は小声で答えた。まだ、とりあえず歌えるってレベルだけども…。
「お前のドイツ語すごく聞き取りやすかったからさ、これも綺麗に歌うんだろうな」
創君がそう言うのと聞いて、私は固まる。
「そんな事ないよ。普通だよ」
「どっちでもいいよ。俺も聞きたいから一緒に行く」
結局、私達s何人は音楽室へ行くことになった。
静香のピアノで発声練習をする。アヴェマリアの伴奏は静香がやってくれる。
「そろそろいい?」
「うん。お願いね」
放課後、何度となく聞いた音を頼りに私は歌っていく。
この曲を歌う事を知っているのはごくわずかな人しか知られていない。
謝恩会は好きなグループで、各自に発表をすることになっている。
私は音楽の岩城先生達と一緒にやることになっている。
そこには創君や静香達と一緒にジョイフルジョイフル…ゴスペルに挑戦する。
それとは別に今から静香と組むアヴェマリアを歌う。
本当はそれだけのはずだったんだけども、3日前に急遽アメージンググレースを
歌う事になった。この事はまだ、二人も知らない。
先生たちにいいように巻き込まれたようなものだ。
しかも、全て日本語じゃないときたものだ。
先生のアドバイスの通りに歌ってはいるんだけども、何かが足りない。
私はチラリと静香を見た。
最後まで歌いあげてから静香のピアノが止まった。
「ちい、泣いてもいいから、彼の事を想ってみなよ」
静香に言われたことに対して私は返すことが出来なかった。
先生から言われているアドバイスは大切に思っている人を考えて歌いなさいだった。
私はゆう君の事ではなくて、静香達の事を考えていた。
私の大切な友人たちの事を…。
「まだ、吹っ切れていないのなら、いいじゃないか。あいつに向かって愛を語らうように歌えばさ」
真面目な顔で創君が言う。
中学の皆に会うのは、離任式を除いたら、今日が最後になる。
だったら開き直ってい前と言う事なんだろう。私はゆっくりと創君を見た。
創君は私に対して優しく微笑んでいる。
「ちいなら出来るよ。大丈夫」
いつもならそんな事ないよって思えるのに、今日はなぜかそんな風に思えなかった。
成功するも、失敗するも…私次第。
だったら…最後に皆と笑いたい。
「本当にいいの?知らないからね。静香…もう一度いい?」
私は、静香にもう一度伴奏をして貰う為に頼む。
自分に負けていたら…ずっと負けたままだ。そうそれは嫌だった。