I will graduate something? 何を卒業するんだろう? 11
「最近、理絵が静香で怖いの」
私はちょっと気になることを静香に振ってみた。
「一応、反省していると思いたいけど、そこは分からないぁ」
「だよねぇ。後、3年かぁ。長いよねぇ」
「ちいの不安の元は分かるけど、理沙を意図的に理絵が利用していたのは確かだったよ」
「やっぱりね。それなりに吹っ切れてきているけど…いい気分じゃないね」
「理沙から不良グループに広めようとしたらしいけど、失敗って所」
「それはそれでまた厄介な事を考えてくれて…」
理絵が本当にどこまでやろうとしていたのか、その最終目的がやっぱり分からない。
「そうだね。でも、原因が分からないんだ。私も」
「もしかしたら、ゆう君が全てのカギかもしれないって思う時がある」
「そうかもしれないし、全く違うかもしれない」
静香なりに、調べてくれたらしい。
「私…頼んでないよね。ありがとね。静香」
「私がきになったのよ。今まで全く接点のなかった理絵がちいに絡んできた理由を。その理由が見えないから、それが不自然に見えたの」
「そう言われればそうだね。まぁ、見下されていたとは思うけど」
「それはそうだね。同じ学校を受験するのにあんな事をすることがかえっておかしいよ」
そう言われると、そうとも取れる気がする。
「とにかく、3年間、気をつける。暫くは誰かを好きになろうって気になれなそうだけど」
「でも、噂ってさ…恋愛とは限らないからね。春休みはどうなるの?」
「基本的には家にいるよ。あっ、でもね。クラブの同期でスケートに行くかも」
「ちい、寒いのに平気なの?大丈夫?」
「冷やすのは駄目だけど、ちょこっとは平気だから。少しだけスケートする」
「ひで君は来るの?」
「分からない。一応は誘ってはあるけれども」
「そうなんだ。あの日以来、ひで君はどう?」
静香が私とひで君との事を聞いてきた。
聞かれるとは思ったけど、答えるのはちょっと困る。
「あれ以来、過保護気味なんだけど。ひで君の気持ちは分かるんだけどね」
「何か言われたの?」
私が言葉を濁すと、静香が聞いてくる。こういう所は鋭いんだよね。
「全てを受け入れるから、俺といろって…」
「口説かれたって事?」
「うん。そんな気になれないから、もちろん断ったよ」
「ちい、泳いでいたらひで君の事知らない人はいないよね?」
静香は私が取った行動に驚いたみたいだ。
「そんな事、嫌って程分かってるよ。スイマーとして成功したひで君と県大会レベルがやっとな平凡な私なんだから」
「ちいはこの選択でいいのね?後悔しない?」
「うん。ひで君といることを選んだら、ひで君を利用するってことになるもの。そんな事を私はしたくない」
「そうか。そう言えば皆って競技続けるの?」
「さあ?クラブに残る人もいるし、クラブ辞めてクールダウン的に部活って人もいる。隆君と忠君はクラブ辞めたって。それから、ひで君は春休みは今日が合宿だって」
「そりゃ、去年の全国3位だものね。オリンピックはどうなの?」
「どうなんだろうね。まだ高校1年だからね」
結果はともかく、トップレベルのひで君は、長期の休みには何らかの強化合宿が入っている。
その現実を見ても、やっぱり…平凡な私といると言うひで君が不思議に見えてくる。
「ふぅん、ひで君は、2年前にちいが逃げ出した後も想ってたという事なのね」
「うん。すごく重いなぁと今は想うよ。ひで君が出る試合にも私が行った位だもの。」
「そんなにべったりだったの?あんた達って」
「あの頃はそんなものだと思っていたんだもの。誰も教えてくれないでしょ?そう言う事って」
私は渋々と答えた。
「重いねぇ。それで何年付き合ったんだっけ?」
「だいたい…4年半くらいかな?最初はこうじゃなかったんだけどもなぁ」
「ねぇ、誰も止めなかったの?年長組もいたのに?」
「うん。ひで君の独占欲は今思い出せば凄かったもの。自分の側に私がいないとすぐに探す位だったから…あの頃のひで君は」
あの頃のひで君は、自分のモノって自己主張していたようなものだった。
だから、別れた後の彼は大変だったと私は思っている。
ひで君なりに頑張ったから、今のひで君になれたのだ。
あの時の別れは間違ってなかったと思いたい。
ゆう君との時間があった今だからわかるけれども、今の私ではひで君と一緒にいられない。
「でも、重いって思える位に愛された言って思うな。ちいは、人には決して自分の事を言わないけど、恋愛偏差値ってあったら、かなり高いよね」
「なんで?そんな偏差値あっても困るけど。私、好きになった人って二人しかいないのよ」
「その二人と付き合ったんだから、時便を道なよ。それだけ…ちいには魅力があるって事だよ。今だから言うけど、ゆう君といた頃からちいは綺麗になったもの」
「静香…寄せて集めてAカップでも?」
「胸なんてそのうち大きくなるわよ。きっと等身大のちいのことを見てくれる人が側にいてくれるようになるよ」
等身大の私か…。そうなるといいなぁ。
「そうだね。その日あg来るのを待っていようかな。それとね、私夏休みに入院するから」
「そうなんだ。良くなるといいね」
「うん。私みたく処置する人もいるんだって」
「そうなんだ。お見舞いに行くよ」
「大丈夫。大したことないんだから」
「分かった。でも、去年の入院はびっくりしたよ」
「私もね…体は完全に回復したみたいなんだけども」
「どうかしたの?」
「アレから…生理がないんだ」
「入院前は…確かあったよね」
「うん。病院の先生はホルモンのバランスが悪いんだろうって。だから夏休みの入院に合わせて一気に検査しようって言われた。ちょっと不安だなぁ」
「その話は理絵には知られたくないね。もちろん、私は言わないけど」
「静香だけだよ。私が何で入院したかを知っているのは」
「言えるわけないでしょ?そんな事。ねぇ、将来って赤ちゃんは産めるの?」
「大丈夫だって先生は言うけどね。普通の人だって簡単に妊娠しないみたいだから…少しだけ覚悟はしているよ」
私は静香に行った。人と比べても仕方がない。だったら…のんびりマイペースに付き合うしかない。
「明日があるから、今日はもう切るね」
「分かった。ちい。また明日ね」
「そう言って。私達は電話を切った」
先生に求められている解釈を私は再び思いだした。
愛する人を想って歌う事。
ゆう君の事まだいい思い出とまでは思えなくって。
その気持ちを歌にのせていいのか、それでいいのか悩んでいた。
そう、私一人だけが、あの日から歩き出せていなかった。