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In other word・・・  作者: トムトム
1章 A turning point ~中3冬~
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I will graduate something? 何を卒業するんだろう? 8

「そう言えば、理絵はちいの攻撃の本音を明かしてないよね」

「そうね。あれだけ聞けただけで今はいいとするよ。多分暫くは私にとっての最強の敵だと思うから」

「ま…ね。合唱祭でも揉めるとは思わなかったよ」

「あぁ。あれね。私としては忘れたかったのに」

3月の予餞会と一緒に行われる合唱祭。

E組の私達は他のクラスよりも推薦入試と私立第一志望が多かったから、思い切ってベートーベンの第9番合唱を歌う事にした。

曲を決めたのはいいけれども、ソロパートを誰が歌うかを、私立入試が一区切りついてから誰が歌うか決めようという事でクラスでは決まっていた。

そのソリストを決めるときに大揉めに揉めたのだ。



パートごとに何人かをパートで選んで、選ばれたメンバーを入れ替えたりして決めることにした。

皆で決めた結果で行こうとなった時にたった一人だけ反対した。理絵だけが反対した。

多数決の原則でいけば、我慢しようねって対応で終わるところなんだけども、あの時はお金持ち発言等で

クラスが真っ二つになって真相を明かしたばかりだった。

クラス全体が理絵に対して腫れものを触るような扱いをしていた。

今までのクラスの雰囲気だったら、確実に理絵が選ばれていたと思う。

けれども、今回は私が選ばれてしまったのだ。

「皆して、ちいにするように手を回したんでしょう?」

ありもしない言いがかりを理絵につけられた。

申し訳ないが、そんな面倒臭い根回しをする程、私は興味すら持ってなかった。

喜べない人間が喜びの歌なんて歌えるの?位しか思っていないのに。



「皆が決めた結果を見せてよ。そうでもなければ納得できない」

理絵の方は勝手にヒートアップして、どうにもなりそうにない。面倒臭い人だな、全く。

「私…ソロやらなくていいよ。目立ちたくないもの」

私は皆に向かって切り出した。

私が辞退するんだから、コレで話が終わるものとそう思っていた。

「ちい、今のこの場でその対応は反則。皆が勝ちたいと思っているのに」

「ごめん、皆が勝ちに行くのが分かっているから…辞退したいんだよ」

「それじゃ意味が分からない。ちゃんと説明して」

「今の私じゃ、曲をちゃんと理解して歌えない。ソリストだったらそこで足を引っ張るから」

「そこまで言う気持ちは分からなくもないけど、俺達は今でも十分だと思ってるぜ」

識者の木下君がそういうと皆も頷いている。

今のままでい言っていっても、歌っていくうちにレベルが上がるんだよ。

そうなった時に、自分がキャパオーバーになりそうだと今から警鐘がなっている。

「でも、荷が重いんだよ」

「分かった。だったら、曲を変えて二人に歌ってもらおうか。決まったパートの人も

ちょっと付き合ってくれよ」

「あぁ」

テノール担当の篠田君が了承する。アルトもバスも了承したんだろう。

「曲は何がいい?」

木下君が私に聞いてくる。曲の理解が必要な曲…だったら。

「ふるさとのアカペラか、赤とんぼかな」

「それならふるさとでいくか」

結局、私と理絵で歌う事になったのだった。

「だったら、皆が決めるんじゃなくて、選ばれたメンバーに一任してもいいか?」

「そうしてくれると助かる」

篠田君がそう言ったので、その方向で決まってしまった。

アカペラで歌うってことは、メンバーとの相性を決めるってことだ。

コレで決まったら、呆れめるしかないか。

「いいよ。私はそれでいいよ」

私は腹を括ることにした。



「あの時のふるさとは鳥肌たったよ」

「今褒めても、何も出ないわよ。あの結果で良かったのかな?」

静香にあの時の歌を褒められる。何かくすぐったい。

「差は歴然。担任がちいの時には涙ぐんでいたじゃない。それが結果だよ。ちいの歌はね。何となく風景が見えてくるような気がするの」

「そうかな?それよりも明日の謝恩会の歌の方が不安なんだって」

「ちい、迷ってるでしょう?そんな感じがするよ」

「静香には分かるか。今の私があの曲を歌いこなせるメンタルじゃない事に」

「うん。喜びの歌の成功が謝恩会音歌の決めるきっかけだったらしいし」

「そうだよねぇ」

私はそういうと深いため息をついた。

「私が欲張りなんだと思うよ。幸せそうというより、切ないイメージなんだよね」

「そうだね。幸せな花嫁さんじゃないといけないのにね」

「うん。先生のチェックがアヴェマリアだけだからね」

「誤魔化せない事は分かってるよ。大丈夫。静香」

「そうだよ。あのソロを歌いこなしたんだよ。あれで優勝したようなものなんだから。ちいはね、もっと自信をもちなよ」

「そうだね。やってみる。ギリギリまで足掻いてみる」

「明日の朝、音楽室借りたから、ギリギリまで練習しようね」

「ありがとう。よろしくね」



明日の謝恩会では、先生に言われてソロで歌う曲と先生や創君・雅子ちゃん達と一緒に歌う曲がある。

ソロで歌う曲がアヴェマリアとアメージンググレース。

先生が求める出来栄えにならないアベマリアが私にとっての重圧だった。

先生が求めている解釈が今の私には辛くて表現し辛いものだったから。

そろそろ、私自身も割りきらないといけない時期になったのかもしれない。

その現実を私はまだ受け入れることができなかった。


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