終わった恋の悲しみは 12
「あの日はな…びっくりしたぜ」
「あんな状態でも受かるんだから流石ってところか」
「ところで、別れるきっかけでも分かった?今日は…家に泊る?」
静香が本題を切りだした。あの大泣きした日から1習慣。一度だけひで君と話した。
「それが…ひで君と話したんだけども、きちんと分からないの」
「分からないか」
「うん。優君にひで君達が聞いてくれたけど、優君は…一緒にいたらもっと傷つける。
俺はりんを守ってやれないから…しか言わなかったって」
「守ってやれない…か。かなり重いな」
「お前…今更何だけど。彼に守ってね…なんて言ったことあるか?」
創君は素直な感想を口にして、義人君は疑問を口にする。
「守ってもらおうなんて思ったことない。私は一緒に歩きたかっただけ…」
「男の子一般が彼女は守るべきって思いがあると思うよ」
「それはそうかも。ただね…。前の彼女と別れてすぐなら、取った・取られたは分かるけど…。
3ヶ月もたってそれはないでしょう。むしろ、冷静になればおかしいって分かるよね」
「うん。何でも欲しがる子だったら、3ヶ月でも前は私の彼だから…ってなるかも」
「それと彼にとってのちいのイメージが守ってあげたいだったのかも。ちいの生い立ちは
知っているんだよね。当然ひで君経由で」
「そうなると、守ってあげたいって言い方はありになるな。ちい、俺がN高に入って聞けるように
なったら聞いてやる。時間かかるけど…待てるか?」
「うん。時間がかかれば、笑って聞けるよね。ありがとね。創君。多分、泣いてもごねても
元には戻れない事は分かっているから…もう大丈夫」
私は、そう4人に言った。元に戻れなくっても…ゆう君を好きではいられる…はず。
「ねぇ…理絵が絡んでいるね。限りなくいろんなところで」
「そうだな。ちい…何かしたか?」
「静香。それは仮説だよ。絶対じゃないよ」
佐多氏は静香を牽制する。理絵なのかどうなのか…まだ分からないから。
もし理絵じゃないときには取り返しのつかないことになる。
「ごめん、ちい。私も理絵が一枚噛んでいると思ってるよ。うちのクラスには理絵の親友の
麻友がいるからね」
「ちいの噂がC組とE組だけってのが逆におかしいぞ。ちいのいるE組だけならまだ分かるけど…
俺らのクラスに噂があるってのが…不自然だろ?」
雅子ちゃんに言われるまで、私は真由ちゃんの存在を忘れていた。
義人君の言う事も…言われてみたら…その通りだ。この噂がD組とE組だったら
私は多分納得していたかもしれない。
「一つ…聞いてもいいか?」
創君が私に聞く。
「その別れた男と付き合ったのはあてつけか?」
「わたし、そんなふざけた理由で男の子と付き合えない。それに…そんなに軽くはない」
「だったら理沙に吹き込んだ奴が犯人じゃん」
「今までの私がした話を聞いた上で考えても…理絵…か」
「雪乃は?」
「多分…ないと思うな。雪乃のおばさんにこの事が知られたら雪乃が大変だよ。
だから、それはないと思う」
「何かあったの?ちい?」
「大したことではないんだけど。私、英検を受けたのは個人受験だったのね。だから…
塾で問題を聞いたんでしょ?ってしつこくって…。つい言ったんだよね」
「もしかして…」
「雪乃はどんな問題が出たのかメモを取る位きっちりと聞いていたのに…って。
私は何行くらいの長文だったのか位だったのにね…。それで落ちたんだからさ、
八つ当たりもいいところなんだけども…さ」
「でもさ、そんな事ってよくあるはなしじゃない。模試の内容なんてよく皆して先に
受ける子たちに聞いてたよ。人によっては答えを聞いていたけど…あれは、本番は
どうするつもりだったんだか…」
「それは確かに」
「当日は基本的に玉砕だよね」
「模試はともかく、雪乃の問題聞いたのだって…実際意味があったのかどうか。
何せ、肝心な一次試験を落ちてるんだもの。後味悪いの。」
「確かに、後味は悪い。けど、ちいに当たるものではない」
「ありがとね。とにかく私もこれからはもっと気を配らないと。理絵の事もあるし」
「そうだね。ところで、ちいの最後の模試の偏差値っていくつ位だった?」
「うーん、私偏差値で高校選んでないからあんまり覚えてないけど、数学が60位?」
「それって…学年トップ3位だろ?俺その時、3位だったなぁ」
義人君がいきなり成績の事を聞いてきた。私の場合は成績と志望校が一致して無いから
全く興味がなかったからこういう話題は正直に言うと焦る。
一番苦手な数学がこの位だった程度の記憶しかない。
「そうなの?私は義人の次くらいかな」
雅子ちゃんが続いて言う。二人とも私とは違って理系が得意だ。
「俺は6位だった気がする」
創君もつられて言う。数学でその位なら…本当ならN高より上位行行けるよね?
「ちいは、無関心すぎよ。だとしたら、誰がトップなの?ちいの苦手な数学が
さっきの成績なんだから」
「私はずっと稔君がトップだと思ってた」
私はずっと思っていた人の名前をあげてみる。
「それが…稔は最後に失速したんだよ。そこまでの成績はない」
「じゃあ…清美ちゃんかな?あの子の数学のセンスはすごいもの」
雅子ちゃんが思いだしたように呟く。
「そうかもな。清美の存在忘れてたよ。清美はどこ受けるんだ?」
「聞いてないけど…女子高か君塚高じゃないの?」
「どっちにしても、卒業式前には分かるから」
「今、気がついたんだけど、ちいのその態度が安井に火をつけたんだろうな」
創君が私達のやり取りを見て思ったみたい。
「そのことは…これからの課題だね。ありがとね」
私は今日何度目かの感謝の言葉を口にしていた