終わった恋の悲しみは 11
「だって、ひで君が私の事をどう言っているか分からないから。
何かにつけてひで君と比べられたら…彼がひで君といた時の私と嫉妬したら…そう思うと怖かった。
あの頃は、何かするにもひで君と一緒がいい、ひで君大好きって言えたけれども、
優君には言えるだけの自信が無くって。そんな時に優君にK学園を一緒に受験しようって誘われたの。
同時期にクラブの同期からも、皆が受けれそうだから一緒に受けようって誘われてて…
誰か知っている人がいるのもいいなぁって思ってK学園にしたの。
先生からは反対されたし、M大付属とS学園の推薦入試の話もあったよ。推薦はお断りしたよ。
私…高校で泳ぐルつもりはないからね。公立高校を受けることが実質上無理だったからね。
創君がいるから、もう一度ね。私は商業高校に行きたかったのよ。もう理由は分かるでしょう?
早く働きたかったからね。でもね、その商業高校には亡くなった母の従兄妹にあたるおじさんが
教師で勤務しているんだ。だから、私は受けても落とすって宣言されていたから止めたの。
それに、入院とかで欠席数が多いから、学力に見合った学校も無理だったのよ。
s高にしたのは…プールが無いから。ねぇ、笑わないでよ。そこが私には重要なの。普通の子に
なりたいから。それに、お金やすいしね。誰も受けなそうだったし、通っているのも広瀬先輩が
一人だけだしね。ちょうど12月に入って期末テストが終わってすぐの土曜日にいつものように
マックで勉強してたの。ちょうどその日に英検の結果通知が来て、二人で見たら二人とも
合格していたからお祝いしようってことになったの。
その後に、塾に行くのに、駅前通りに出たら、街路樹のイルミネーションが一気についたの。
塾のクラスの子からすごくきれいだって聞いたから、一度一緒にみたいねって話したことが
あってね。優君…覚えてくれてて私は嬉しくってありがとうって言うのがやっとだった。
その時に-こんなときだけど、一緒にいたい。好きだからもっと君を知りたい-って告白された」
「で、何て…答えたの?」
「私も…ずっと好きです。私も同じもの見てもいいの?って聞いたの」
「ちいも大胆だねぇ」
「なるほど。参考にさせて貰おう」
私がされた告白を聞いて、皆が冷やかし半分で言って来くる。一緒にいたいって言うのって
大胆なのかな?それにそういう言葉って、自分の思いをちゃんと伝えないといけないと思うの。
私はそう思ったけど…あえて口にはしなかった。
「何気なく、俺らよりも恋愛偏差値があったら…高いよな?」
「あぁ、言いたいこと分かるわぁ」
「言えてる。それに経験値だって」
「ねぇ…キスしたの?」
「それよりもどんな感じ?噂通りなカンジな訳?」
「えぇっと。恋愛偏差値と経験値はどうか分からないけど」
「絶対に高いから。皆には言えないのがちょっと悔しいな」
「そうかな?でも…そういうことって秘めておきたいな」
「俺は皆に言いたいぞ」
義人君がきっぱりと宣言する。義人君はそうだよね。否定はしないよ。
「そこは人それぞれだからね。これだって答えはないと思う。数学の証明のように
証明はできないでしょう?」
「それはそうだよな。で、何か心掛けることってないのか?」
「うーん、キスってのはそこのところは、その時までお待ちください…ね」
「リップって重要だよね」
「そうだね。冬は男子もリップ位は…ハードルが高いかな」
「そんな事を云いながら…ちいお前赤くなるなよ」
「だって…こんなこと私言ったことないんだよ」
私は真っ赤になって皆に向かって反論する。
「悪乗りした俺たちが悪かったな。悪い」
確かに悪乗りなのは認めるよ。でも、こういう話はこうなるのも分かる。
「私…怒ってないよ。いずれは、誰かとキスするって。付き合い始めたからってデートらしい
デートはしてないんだ。告白した時もデートと言えばデートなのかな?会うときは塾かマックか。
たまに、図書館や公園も入ったよ。K学園とN高は学校見学に一緒に行って校内見学もしたよ。
創君はN高を見に行った時に会ったって聞いたけど、すれ違いかな?」
「俺が見たのは、N高から帰ってくる、ベタベタしてるカップルで…。いつも教室で見ているちいとは
別人で差。俺…見てて恥ずかしくって。俺…彼女が出来てもあんな事絶対にしない」
「あのぉ…何をしてたの?」
「ちょっと…ちい?」
「えっと…N高の時でしょ?制服ではキスして無いよ。ちょっと寒くて肩を抱かれたのと、駅のホームで
後ろから抱きしめられた…けど?他に何かしてたっけ?」
「お前…今の発言は十分に刺激が強いから…もう言うな!!」
「いいなぁ…私もされてみたい…」
雅子ちゃんはポツリと漏らした。雅子ちゃんはバスケ部のポイントゲッター。
ちびっ子の私とは逆で女の子としては背が高い。実際…創君の方が背が低い。
「雅子…高校入ったら、先輩狙いでいっとく?」
静香がからかうように言う。そんな事いう静香だって、そこそこの身長がある。
「ちい…大胆なんだから。でも…本当は私もひで君とちいがキスしているのを見たことがある」
「そう。ひで君とはかなり見られてるから…気にしてないし」
「でもさ…制服キスは…したよね?絶対に」
「さあ?どうでしょう?同じ学校だったら、ジャージ姿も道着姿も見れたのにね。
テストの時は…本当にごめんね。これだけ今は話せるけど、まだ気持ちのセーブはついてないんだ」
私がそう言うと皆は言葉をなくしてしまった。