終わった恋の悲しみは 3
「今…この時期に言うのが嫌なの。私の言いたいことは分かるよね?
広瀬は、そこまで馬鹿じゃないでしょ?」
「そう言われると…そうかもな。世間的には受験生だものな」
私の意図するものがようやく分かったらしい。それなら…それでいい。
「それにね、私は…恋愛は秘めておきたいな」
「なんで?」
「だって…思っている人にだけ、自分の事を分かってもらいたいから。
やっぱり知られたくない」
こいつは信用できるんだけど…静香の様に全てを話せる訳ではない。
「ちいちゃん…俺にも彼女が出来るかな?」
私が一番答えにくい質問をしてきた。なんて答えればいいんだろう?
「それは…人それぞれじゃないの?」
「人それぞれ?」
広瀬はきょとんとして私を見ていた。
「そう。広瀬はどんな恋をしたいの?それが答えじゃないのかな?」
「じゃあさ、参考までに聞きたいんだけど。ちいちゃんはどんな恋をしているの?」
「私は…」
答えようとするけれども、言葉に詰まってしまう。
思いだすだけで目に涙が浮かんでしまう。
「私は…同じものを見て、一緒に笑える…そんな恋だよ」
そう、先週までは…そんな恋をしていた。
いつも二人で顔を合わせて笑っていた。
あの日々がすごく遠い日の様な気がしてきた。
それに…私の隣には彼はもういない。
「ふぅん」
広瀬は良く分からないって顔をしている。これ以上話をしていたら…
絶対にボロが出てしまう。
「ねぇ、ちいちゃん」
「ん?何?」
「俺、ちいちゃんと同じ学校に行ってもいい?」
「ふぇ?」
いきなり広瀬に言われて何て答えていいのか分からない。
「まだ…ゆっくり考えたら?後1年あるんだからね」
とりあえず、どっちとも取れる答え方を私はあえてした。
むしろ、そんな理由で高校を選ぶ彼をたしなめないといけないかもしれない。
「そのうち、直也君に電話すると言っておいて」
「分かった。言っておく。ちいちゃん…S高受かるといいね」
「そうだね。私…冷えたから帰るね。じゃあね」
私は立ち上がってスカートをはたいた。
「またね、ちいちゃん」
広瀬は広くなったベンチに寝転んで空を見ながら手を振っていた。
そして私は屋上を後にした。




