終わった恋の悲しみは 2
「あぁ、かったるいなぁ・・・げっ、人がいる」
私と同じような考えを持った人がいるようだ。私はゆっくりと振り返る。
そこにいるのは、1学年下の広瀬智がいる。私が受験したS高には彼の兄が通っている。
何しに来たんだろう?
「何?2年生も自習なの?広瀬がここに来るのって珍しくない?久し振り…元気だった?」
「それを言うのならば、ちいちゃんだって。今日はK学園の発表じゃないっけ?
でも…ちいちゃんは余裕か。今、ここにいるんだから」
広瀬はそう言うと、私が座っているベンチの隣に座る。
「いや…そうでもないんだけどね。そろそろ合格発表の時間かな?10時だったはずだし」
「ふぅん、本命はSだろ?兄貴の後輩になるなんて物好きだよな」
「あのね…別に直也君じゃないわよ。私の行く目的は」
「何なのさ。本音は…」
「プールがないから…ねぇ、なんか呆れてない?」
私がS高を選んだ理由。それはプールがない事。学校見学もしていて、プールがないことは
しっかりと確認している。
「そういえばさ、ちいちゃん」
「ん?何?」
「ちょっと前に千葉で彼氏と歩いていたでしょう?」
私は一瞬だけ凍りついた。何で今ここで聞くかな。
私は小さくため息をついてから答えることにした。
「あぁ…そんな事もあったね。広瀬が見たのっていつのことかな?」
いきなり、触れて欲しくないことに触れられてしまい、私は内心焦っていた。
二人でいるところを見ていた人が他にもいた。もう終わった事だし…仕方ないか。
「相変わらず、余裕あるなぁ。俺が見たのはクリスマスだったかなぁ?兄貴と二人で
出かけてさ、その時に見たんだ。いいよなぁ…クリスマスデートなんて…」
その時の相手はゆう君だ。でも…あの時間はもう戻って来ない。私は涙を必死にこらえる。
「ごめん…そのことはあまり知られたくないんだ。誰にも言わないで貰えないかな?」
「なんで?だって彼氏なんでしょ?俺なら言うけどなぁ」
私に他言するなと止められて、広瀬は納得していないみたいだ。
こいつは直也君と違って、頑固者だから…ちょっとだけ面倒臭い。
どうやって…納得させようかな。