君が嘘をついた・・・13
今回の騒動のきっかけはすごく些細なことなのかもしれないんだけども、
思っていた割にややこしい事になりそうだと直感的に理解できた。
表向きの犯人は安井ってことになるのかな?あいつも踊らされやすいからな。
きっと…理絵に利用されているだけだと思う。理沙と同じように。
安井も…男の子なのに、女のこみたいな事を平気で仕掛けるからな。
重度のシスコンって言うのは本当のことなんだろうね。
ただ、やり返すだけは私としてはつまらない。二度とされないように、
犯人の確定が取れたら、徹底的に叩くだけ。
叩くと言っても、暴力ではない。理論で攻めて相手に反論をさせないだけ。
安井自身B高の推薦入学の内定が取れているから、今以上のことを仕掛けて
こないだろうと私は考える。安井だって内定取り消しになるような事を
仕掛けてくる程馬鹿じゃないだろう。
ただ、お金の事を言われたのは悔しいから、安井に対してはそこを徹底的に
叩いておこうと思う。
机に置いてある高校ガイドを取り出した。そしてあることを私は調べ始める。
「言った・言わないで揉めたとしても、このデータが切り札になる。
それにしても…あいつって…この事実知らないで言ってたんだ。馬鹿だなぁ」
そうつぶやいてから、私はある事を確認したくって何件か電話をかける。
電話の相手は私の頼みを聞いてくれるそうだ。今回の依頼が安井の件については
私の切り札になる。そう自分に言い聞かせた。
土曜日、なんとなく学校で授業をこなした。先生の説明は全て素通り状態。
別に公立試験対策の問題を解いているだけだから…別にどうでもいい。
数学や理科はS高の方がはるかに難しいんだから。
静香は静香なりに調べてくれているようだ。今日は理沙に近づいている。
週明けには何かが分かっていそうな気がする。
行きたくはないけれども、私は塾に向かっていた。2年間続いていた習慣って怖い。
自宅を出るとき、テーブルに塾に行ってきますと書き置きをして家を出る。
これで、私が塾から戻るまでこの家は無人になる。
母達が亡くなって、もう8年になろうとしている。最初は祖父母が一緒に暮らして
くれた。小学校に入るのと同時に、叔母達がやってきた。
最初のうちは、母の様に私に接してくれたけど、姪…綾乃が生まれてからは
距離が出来て…溝が出来て…修復不能になった。
この溝はもう戻ることはないだろう。もう、家族ごっこをする気はない。
家の事は…少しずつ相談をしている。市役所の子ども課だったり、保険課だったり、
試験が終われば、そっちの方もある程度しっかり解決したい。
学校の担任は、そこの所に理解を示してくれている。だから、これから早退が
増えても問題ないだろう。
千葉の駅に着いた。駅からほど近い塾は駅に着くと見えている。
とにかくすぐに職員室に行かないといけない。K学園でのパニックについて
先生に謝らないといけないからだ。
「先生」
「おう…少し痩せたか?」
「そんな事ないよ。あの日はごめんね」
「立ち直ったか?」
「そこまではまだ。休むのがもったいなから。私…ケチだから」
「そうだな。お前は自分の学費は自分で払っていたな」
「そう。親の庇護はないからね」
私はくすりと笑う。
「まぁ、座ったらどうだ?合格が決まった奴らから来なくなるからな。
優の奴…今週は来ないってさ。風邪らしいけどな。電話があった」
「そうですか。もう…終わったからって言った方がいいかも…ね」
「本当にそれでいいのか?もっど悪あがきしたらどうだ?」
先生は私にインスタントだけどと言ってコーヒーを淹れてくれた。
「本当は…そうしたい。けど…あの後、少し落ち着いてから気付いたの」
「気がついた?」
「ゆう君が嘘をつく時の癖…先生も知ってるでしょ?」
「あぁ、お前も知ってたか」
「うん。あの時も、あの癖が出ていたの。ゆう君がどんな嘘をついているかは
分からないよ。調べていないからね。強引な嘘をついてまで…私と別れたんだったら
何かがあったんだと思うから」
私はそう言ってからコーヒーを一口飲んだ。
「そうか、それで…これからどうしたい?」
「私…まだ、ゆう君を嫌いになれない。でもね…同じ空間で授業を受けたくないってのが
本音だけど、それじゃゆう君に対して失礼だからいつも通りにする予定」
「そうだな。でも、嫌なら平日に振り替えろよ」
「気遣いありがとうね。先生」
先生までもが気にしてくれていることが素直の嬉しかった。




