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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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宮野先生のホームルームが終わると、私はよっちゃんが迎えに来るまで生徒会室にいるようにと言われてしまった。

「大丈夫?ちいちゃん?」

「はい、今は大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」

「今日は直也と帰るの?」

「いいえ。高専にいるはとこが迎えて来てくれるそうです」

「そう。それまではここで勉強している?生徒会の仕事は今日は特にないからね」

千世さん達は作業があるみたいで、資料を広げている。私は生徒会の片隅で補習のプリントを解くことにした。

「ちいちゃんは何の勉強?」

「数学です。補習プリントが毎日出ているので」

「それは大変ね。分からない所はある?」

「大丈夫だと思います」

私は自由帳を取り出して問題を解き始める。補習がプリントの方が今日の数学の授業で解いたプリントよりも難しい。今日の授業プリントは後半クラスでは課題なのかもしれない。

「こんにちは。ちいちゃん、今日の授業プリントって終わっている?」

「うん」

「ちょっと見せてもらってもいいかな。不安な所があるんだ」

遅れて来たまなちゃんに言われて私はノートを手渡す。

「ちいちゃんは凄くノートに書き込むんだね。さっきのプリントももう書いてあるんだ」

「そうかな?今日のプリントって……後半クラスは課題のような気がするの」

英語の先生は後半クラスとは違うけれども、数学は両方とも山崎先生が担当していたはずだ。

「それはありえるね。定期テストはどうだろう?」

「えっ?違うの?」

「今まではグループでテスト範囲は違っていたわよ。特にうちのクラスのちいちゃん以外は皆附属なのだから」

「そっか。そうなると……かなり難しいってこともあるのよね。なんか……大変な学校に来たのかもしれないね」

「後悔している?」

「していないよ。だって決めたのは私自身だから」

「でも、早めにテスト対策始めたほうがよさそう」

私達がノートを見ながら話している。やっぱり定期テストもかなり難しいのか。


「お前達は過去問があるだろうが」

確かに直君からノートも過去問も貰ってはいる。でも今までの過去問は外部生のみのものであって、今の私達がいる前半クラスには通用しないのではないかと私は内心思っている。

「あっても……どうだろう?」

「うん。私もそう思う。もちろん参考にはするけれども」

私もだけど、まなちゃんもかなり意識しているようだ。

「だって、ちいちゃんあんなに難しい問題を補習で解いているじゃない。ノートに書き込んであるの見たけど、私すんなりとは解けないよ」

「そうなの?私だってすんなりとは解いていないよ。けれども、あのクラスの皆はそれなりに解けるのだろうと思っていた。だって、山崎先生はプリントをくれる時に、あいつらは一度勉強しているんだけどなって言うんだよ」

私が答えると、まなちゃんは頭を抱えている。

「私、あのクラスでは、半分以内にはいるとは思うけど、スラスラなんて無理よ」

まなちゃんが、今日の数学のプリントを見せてくれる。確かに全て解いてはいなかった。

「ちょっと見せて」

そういうと私の手元にあったプリントを裕也君がじっと見ている。

「この問題……どこかで……思い出した。去年の夏期講習だ」

私のプリントを見ていた勇也君が呟く。そしてレベル高すぎとも。

やっぱり前半クラスのハードルは相当たかい気がしてきた。


「一年の今で、これがハードだと思っている私は、理系を目指さない方がいいでしょうね」

まなちゃんはどうやら自信がないようだ。

「今だけじゃない。山崎先生のレベルに合わせるのに慣れたら大丈夫だと俺は思うけど」

「ちいちゃんは、どうやって勉強しているの?」

「とにかく問題を解いて覚える。苦手な教科は分かるまで何度も復習をするかな」

「やっぱり、それしかないよね」

「うん。私はそれが最短だと思うよ。きっとだけど……私がグループAに入っているのは、3月のテストの時に最後まで問題と書いたからだと思う。合っているかは別にしてね」

「そうなの?私もあの問題は途中まで書いたような気がする」

「恐らく。あの問題は、本来は中等部を試すものだったと思うの。だから、外部生はその一問手前まででどれだけ解けているかを見たんだと思う」

「じゃあ、英語は?」

「英語はちょっと分からないなあ。でも正解数と入試の時の和訳がどれだけできていたか……そんな気がする」

入試ではちょっと変わった問題があって、約二行程の英文を二十文字で要約する問題が毎年必ず出題されているのだ。この学校を受験するのに、英検三級があったほうがいいと中学の先生たちが言うのはそういうところなのだろう。

「やっぱりそこか。結局は英語の能力だけではなくて、簡単な作文能力まで見ていると考えているのかな」

「はい、英検三級でも似たような設問がありましたよね?」

「そう言われると俺も納得できるかも。確かに俺たちの時もグループAの面子は大抵英検三級持っていたな」

勇也君が私の言ったことに納得している。

「で、ちいちゃんは英語のテストは同じ問題ではないと考えているんだな」

「はい。定期テストの時に順位を張り出さないというのは、範囲が皆同じじゃないからです。要は問題のレベルにも差があるということを指しています」

「そう考えるのは妥当だね。ちいちゃんはどのテストを重要視しているのかな」

「自分の学年での位置を把握するには文化祭明けの実力テストですね。定期テストだって手は抜けません」

もしかしたら、皆は気が付いていないかもしれないけれども既に中間テストまではもう一か月はない。間に五月の連休があるから実質的には後三週間位しかない。

今の私は成績が全てだ。手を抜くなんてあり得ない。

私が特待であることはまだ知られていないはずだ。自分から言う事ではないと思っているし、先生方にも私が特待生であることは言わないで欲しいとお願いしているからだ。

後半クラスにいる特待生たちは、少しずつカミングアウトしてる人もいるようだ。そうすることによって、自分で退路を断ってしまっているようにか私には見えない。

時計を見ると四時を過ぎた頃。よっちゃんがそろそろ迎えに来る頃だろう。

恐らく朝の光景もかなりの人に見られているはずだ。そのことによって事実でないことを既に言われてるだろうけど、それを私が否定すれば問題はないはずだ。

ただ一つだけ気がかりなのは理絵の存在だった。


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