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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
123/134

今回はクラスの委員長綾瀬太一目線。彼の個人的な事情も分かります。

Side太一


「えっ?」

「だから、俺は見たんだって。佐倉さんが高専の男に肩を抱かれるように駅の階段を下りていて……」

「そ、そう。でも彼女はまだ来ていないよ」

英語の課題を提出するために少しだけ早く量を出たら、昇降口で同じクラスの麻生と会った。

朝一番の会話がそれでいいのか?そんなことを言っている麻生も今日はいつもより早いと思う。

「今日は麻生も早くないか?」

「俺はちょっと練習をしたくてな」

麻生は吹奏楽部。個人練習がしたかったらしい。今は朝の八時前。朝のホームルームは八時半からだ。

「太一だって今日は早いだろ?寮なのに」

「ああ、英語の課題を提出するのと分からないところを聞きたくてな」

「補習のか。お疲れちゃん。どんな問題が出ているんだ?」

麻生が問題を見せろというので、俺はプリントを手渡す。

「何これ?定期テスト並みじゃないか」

「そうなんだ。とにかくこういうのを毎日解くんだよ」

「へえ。数学は……佐倉さん一人か。どんな補習か聞いているか?」

「プリントを貰って解いて提出するらしいよ。間違った問題を中心に解説するんだろうな」

「なんでそれを知っているんだよ」

「ん?本人に聞いたから。通学もはとこくんと一緒に生徒会の……えっと……」

「広瀬先輩?」

「そう。その人と一緒だって言っていたぞ。だから高専の男は、はとこ君だろうな」

俺が答えると、麻生はいいな……太一は委員長だからと零す。

「彼女、話しかければちゃんと返してくれるよ。お前も話してみろよ」

俺たちはゆっくりと職員室に向かうと、保健室から宮野先生が出てきた。


「綾瀬。佐倉は今日は体調が落ち着くまで保健室にいるから。いろいろと頼むな」

「はい、何があったんですか?」

「途中で貧血を起こしたそうだ。今の状態で家に帰すわけにもいかないからこっちで様子を見ることにしたんだ」

「だってさ、麻生。麻生は駅で見かけたみたいで心配していたし……な」

「貧血だったんだ。確かに真っ白だったかも」

「じゃあ、クラスの奴らにはお前達から言ってくれ。本人も無駄に騒がれたくないだろうし」

「そうですね。分かりました」

「じゃあ先生。音楽準備室の鍵貸して」

「麻生は自主練か。ホームルームにはちゃんといるように」

「はーい。太一待たな」

そう言うと麻生は一気に階段を駆け上がった。

「ところで綾瀬は?

「英語の課題の提出と分からないところを聞こうと思って」

「そっか。お前も……無理はするなよ」

先生は俺の頭をポンポンと撫でた。

「分かっていますよ。自分の立場位

「だから、程々にな」

そう言ってから手をひらひらさせて、先生は自分の席に戻っていった。


先生が俺に無理をするなと言ったのは、理事長が俺の父だからだろう。

俺が小学校に上がるとすぐに父と母は離婚した。父が学校経営に参加するために君塚に引っ越しをしたかったらしいが、都内から離れたくなかった母。子供ながら幼い母だなとは思っていた。

その後、祖父の進める男性とお見合いをして再婚。今の俺には年の離れた妹がいる。今の父とは良好ではあるけど、休みの度に君塚にいる父との生活も俺にとっては楽しいものだった。

高校進学の時に、俺は父が理事長をしているこの学校を選んだ。面接時の理由は相当適当なものだった。合格して君塚で過ごすことから俺は祖父から条件を飲むことにした。祖父の条件は……最終的に祖父の後を継ぐことだったのだ。

俺の祖父は現役の国会議員。名前を出せば知らない大人は多分いないと思う。

妹の進学を理由に今の両親は祖父母の家からほど近いマンションに引っ越した。君塚に来てからは週末は父の家で過ごす。これは入学手続きが終わってから、俺が理事長……父に提案したことだ。

生徒達の事が知りたい父と父と過ごしたい俺。それ以来、週末は父と共に過ごす。父の住む家は、学校からほど近いちょっとだけ庭の広い一戸建てだった。

「あれ?前の家は?」

「あれは区画整理事業で移転が決まっていたんだ。今はあまり家はないが、太一が卒業するころにはかなり建っていると思うぞ」

どうやら、中学に入って部活が忙しくて父の所で過ごせなかった機関にいろいろとあったようだ。

来年度からは私立大学の毛入れる高2なることも、経営母体がキリスト教系の為、敷地の一部に教会が建つことも皆より早く本当は教えられていた。

大きく変わるのはその位で、経営等今まで通りらしい。そういえば、週に一度教会で集会をするというのが増えたんだっけ。そういうところにキリスト教系になるんだなって意識させられる。

キリスト教系の行事も行うけれども、強制イベントにはしない予定だという。

学校に近い生徒と寮で暮らす生徒には参加依頼がかかるだろう。

久しぶりに会った父は、かなり多忙だったんだなと俺は思っている。休日は普通の親子よりも仲のいい親子だろう。宿題で分からないところは教えてくれるし、一緒に食事の支度もする。

今の時間は楽しい。例えそれが期限があるとしても。一生徒としてやるべきことをしようと思っている

「さて、知ってしまったからには様子でも見たほうがいいかな」

俺はゆっくりと保健室に向かった。


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