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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
120/134

前半はちい目線、後半は宮野先生目線になります。

なんとか学校には着いたみたいです。

Sideちい

「すみません。ありがとうございました」

学校の坂の上までタクシーで初めて通学した。学校までタクシーで来ることは禁止されていない。正門の前で降りて、坂は歩くことになっていた。例外は怪我等であることが困難な時だけだ。

直君が言うには、事前に学校に連絡をしたら大丈夫だと言う。直君に支えられるように昇降口に入ると「広瀬ご苦労様」という声がした。そんな私を待っていたのは宮野先生と保健の先生。

「すみません」

「大丈夫よ。今日は保健室で落ち着くまで過ごしましょう」

「はい……すみません」

「怪我なく来られたのだから広瀬には感謝しなさい」

「広瀬先輩、ありがとうございます」

「俺だけじゃないだろう?ちい?」

「……よっちゃんも……だよね」

先生に知られたくなくて小声で答える。

「今日はそれでいいや。ノートの方は俺に任せておけ」

「それが一番」

信用できないのと言おうとしたらものすごい勢いで

「たまには俺を立てろよ」

「面倒くさい人ですね。珍しく先輩呼びをしているというのに」

「そうだったな。俺は行くぞ」

「うん」

先生たちに釣れ垂れて保健室の前で直君と別れた。


「まずはバイタルを見せてもらってもいいかしら?腕を出して」

先生は血圧計を取り出して私の腕をとった。あっという間に測定を始める。

「うーん、低血圧でいいのかしら?」

「はい」

「そう……。目の下を見せてね。うわあ、真っ白じゃない。立派な貧血よ」

先生の一言で私はホッとする。貧血でいいという訳じゃないけど、他の病気じゃないということでもないという事でいいのだろう。

「顔色もかなり悪いわね。宮野先生。この子はいつもこんな感じかしら?」

「そうですね。大人しいほうではあるけれど、今日は血の気がないな」

「成程。ちゃんと寝ている?」

今度は私の日常のチェックらしい。先生に聞かれるままに私は答える。

「ちょっと睡眠時間が思っている以上に足りていないのかしら?まずはゆっくりと休みなさい。誰にも邪魔されないように、先生が保健室にいるから」

「はい。お手数おかけします」

「これが先生の仕事だからいいのよ」

ちょっと出ていくけど、保健室にいてねと言って保健の先生は宮野先生と保健室から出て行ってしまった。ひんやりとした保健室に私一人が取り残された。

「何がいけなかったんだろう?」

自分なりに最近の行動を思い返してみる。あれかな?夕飯を作るのが面倒でカップスープにしていたせいかな?やっぱりちゃんと食べないといけないのか。

先生に休みなさいと言われたので、保健室のベッドに入り込んで横になる。ひんやりとしたシーツも今の体には心地よい。

先生が言っていたように睡眠不足は事実だったようで私は自然とドリームランドに誘われてしまうのだった。


Side宮野

「まずは保護者に連絡か」」

佐倉の個人データを調べるためにファイルと手に取る。自宅の電話番号は書いてはあるが、緊急連絡先は自宅を指定していない。昼間は共働きで家が不在になるからと両親の勤務先という事もありがちなのだが、彼女の場合はそれにも当てはまらなかった。

何より気になったのは保護者の欄だった。かなりの違和感を生じてしまう。

まずは連絡先の一つに指定されている弁護士事務所に連絡をすることにした。

「大変お待たせしました―弁護士事務所です」

「私、S高校の宮野と申しますが。佐倉さんの件で」

「倫子ちゃんがどうかしたのですか?」

「いえ、通学途中で貧血を起こしてしまいまして」

「本人は?大丈夫でしょうか?」

「一人で通学していなかったので、今は保健室で休ませています」

「そうですか。お手数おかけします。つかぬことを伺いますが、彼女のもう一件の連絡先は……内さんのお宅でしょうか?」

「はい、そうなっています」

「それなら同い年のはとこくんが一緒に通学しているのでしょう。私の方から内さんには連絡しましょう。近日中に病院で検査をさせますので、学校を休ませたいのですがよろしいでしょうか?」

「その方がいいでしょうね。今後のこともありますから」

「今日は誰かが学校に迎えに行くことになると思います。私たちが無理なら内さんの息子さんに頼むことになりますので、その際はよろしくお願いします」

「はあ。その息子さんはどこに通っているのですか?」

「高専です。恐らく帰るときも一緒のはずですから」

「分かりました。一度、彼女のことでお伺いしたいことがありますのでお時間を貰えますか?」

「事務所の者と相談して折り返し連絡いたします。校長先生は彼女の事情を知っておりますので伺うとよろしいかと思います。失礼します」

通話が終わったので受話器を置く。校長先生は何かを知っているようだ。学生時代も行きたくないと思っていた校長室に俺は向かう。

そして校長先生から知っている範囲でと前置きをされてから聞かされたその生徒の生い立ちはかなりドラマティックなものだった。


先週のおさぼり分と今週の分を纏めて更新します。

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