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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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「それは人それぞれだな。ここなら普通に高校生が出来ると……」

「中井先生。まあ……そんな所ですね。もう自分の恥を晒すみたいで嫌です」

「そうか。それは悪かったな。この話でまた佐倉のイメージが変わったな」

私を見てにこにこしている中井先生がどの手も怖いのですが、口に出せません。

「こんなに控えめな子久しぶりに見たかも。しかも直也の妹分だなんて。ねえ、今度お兄さんとお茶しない?」

いきなり三年の先輩に手を握られた。直君の妹分認定は凄く不本意だけど、全力でそう否定しちゃうと直君に返り討ちに会うからまた面倒だなあと思いつつもお茶は嫌だなと思って対処する事にした。

「あの……お気持ちは嬉しいのですが、名前が分からない状態でお互いがいるのはどうかと思います。初めまして、一年三組の佐倉倫子と申します。お名前を伺っても宜しいでしょうか?」

嫌ですなんて即答は絶対に選択肢はないから、まずはワンクッションを置いた方がいい。長引かせていれば直君が助けてくれるはずだ……多分。逆に面白がって助けてくれない可能性もあるけど、賭けてみる事にした。

「そっか、名前か。俺は部活紹介にいなかったものな。俺は三年三組の久保葉月。分かるだろうけど、八月生まれだから葉月。よろしくね。あっ、体育祭は一緒だから。最終的には生徒会なのかな」

「分かりません。予定は未定です」

「久保。止めておけ。ところでタイプは?やっぱり直也な訳?」

「直君は、一緒にいるだけならいいですが……それ以上は、いったあい」

私は頭上から拳骨を貰ってしまったようだ。そんな事をする人は一人しかいなくて、痛い頭をさすりながら言い返す。

「直君は、彼女がいるでしょ。もう、私の事を玩具にするのはやめてよ」

「それは聞けないな。ちい、お前をマネージャーに引き込む事だけは諦めてやる。お前もさ、ここでにこにこしておけが株急上昇だったのにな。本当に惜しいヤツ」

「私はね、見た目の評価はいらないの。そういうものには興味がないの……忘れたの?」

「私がきっぱり言い切ったのを見て直君は笑いだした。

「そうだったな。こいつは人見知りはするが、人を覚えるのも早いし、女と言うよりは男に近いから」

「それを言うことないでしょ。今はそれなりに……。それを暴露することないじゃない」

「もしかして、お転婆とか言われた事があるんだ」

「そうだな、うん。そんな所だよな?」

「タイム計らないのなら、もう帰ります」

直君に玩具にされて、私が起こるのは仕方ないと思うんだ。


私をバスケ部の皆の前で、ある程度からかった後に何事もなく練習が再開された。五十メートル走の計測は私で、記録を中井先生に記入して貰う。マネージャーさん達と一年生は交代でストップウォッチの練習をしている。

「いやあ、作業が本当に捗るね。佐倉さんには申し訳ないとは思うけど」

「いいですよ。あの人に逆らうと本当に厄介なので。私の方も感覚が鈍ると困る事もあるから、助かったというのが本音です。

「えっ?」

「現役のスイマーは止めましたけど、同期達の応援にはいきますから。まあ、この程度ならインハイで計測を頼まれても大丈夫な感じですかね」

「ああ、さっき言っていたね。まだ現役の彼らを見ていて辛くない?」

「いいえ。皆が私の叶える事の出来なかった夢を叶えてくれるから……いいんです」

私が完全に競技を止めた時から、それを目にしているからそれで十分だ。まあ、その事を誰かに言うつもりもない。それが私と同期達との絆だと私が思っているから。

「ふうん。知れば知るほど、引き出しはたくさんあるって面白いよね。マネージャーを断ったのは、あの子達を気遣ってだろ?」

中井先生が真意を探ろうとしている。そんな分かり易い理由でもない。本当の理由はそれ以上にシンプルなものだ。四組の担任の中井先生ではもしかすると分からないのかもしれないけど。


「先生……私、放課後の補習対象者なんですよ。中間テストが終わってからの入部だと、文化祭実行委員の方にも支障がでてしまいます。なので、それ以前の理由でマネージャーになれないんですよ。でもあの場でその話をすると人によっては学力自慢と思われる可能性があります。私はそんな事を望んではいませんので」

「それもそうか。済まないな。物理は分からない所があったら気軽に聞きに来なさい。ところで授業の方はどうだ?」

「早いですね。分からないままにするのが怖い位に」

「そう言えば、お前は特待か。直也は知っているか?」

「話していません。私が知っている範囲では、ほとんどが八組だと聞いていますよ。テスト順位の張り出しは六月の実力テストですよね。それまでは知られたくないのが本音です」

「それはそうかもしれないな。四組には特待はいないんだよ」

「えっ?そうなんですか?」

「佐倉と同じ条件はいない。あいつらは内部進学だからな。その分、奴らは逆に意識している訳だ。担任んお俺が言うのもどうかと思うが、注意はした方がいいだろう」

「そうですね、個人的には仲良くしたいんですけどね。今以上に注意はします」

「そうだな。それがいい」

中井先生に言われた事は注意しなくては……と更に私は気を引き締めた。


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