君が嘘をついた・・・10
無事に地元の駅に着いて、自宅に戻るまで4人で自転車で戻る。
朝は別々に来たのに…なんか不思議だ。
唐突に静香が聞いてきた。
「ちい?彼に会えた?彼もKを受けていたよね?」
静香にゆう君の事を話していたのを…忘れていた。
静香だけはそのことを知っていたことを。
義人君と雅子ちゃんはかなり前を二人で自転車を漕いでるから
私達の会話は聞こえることは多分ないと思う。
「彼とは…昨日の夜に…別れたの。泣いた理由も彼を見たから。
ごめんね…今はそこまでしか言えないんだ」
「そっか。そんなことがあったら辛いね。前の二人にはどうするの?」
「言えたら…明日終わってから話す予定だよ」
「いいの?今まで隠していたのに?」
「終わった恋だし。それよりもクラスにも私と彼のこと知ってる人いるし」
「そう…なの?」
「うん。理絵は同じ塾にだし、冬期講習のクラスが一緒だったから
知らない訳がない。それと理沙が転校前の友達がゆう君の私の前に
付き合っているんだもの…」
「世間は本当に狭いなぁ。でも…なんか変と言えば変ね」
「…でしょう?別れさせるのが目的なら…合格後でもいいんだもの」
「彼に対してか、ちいに対してか分からないけど…悪意があると
ちいは考えてるのね」
「うん…。それとクラスの事も連動しているのかな?って思って」
「ないとは言えないけど…。ついでに調べてあげる」
「ありがとね…静香。決めた。今二人にゆう君と別れたこと話す」
私は決意をした。今の現実から逃げない。もう少しだけ強くなりたい。
「いいの?」
「だって…悔しいじゃない。やりたいようにやられてるだけなんてさ」
「そうだよ。やられたら、やり返さないと」
「いいと思う?」
「私は…いいと思うよ」
静香は私の行動が間違っていると、ちゃんと違うって言ってくれる。
そんな静香がいいと言うのだから…大丈夫なんだろう。
「クラスが崩壊するよ?それでもいいの?」
「私達皆が…今までちいにしたことに対しての報いだからいいと思う。
それに…私は側にいるよ。ちいだけには本当の事言えるから。
ちいが私には何でも話してくれたようにね」
「静香…」
静香がそう言ってくれるだけでも、私はそれが嬉しかった。
川沿いに小さな幼稚園がある。私達が通った幼稚園だ。
ちょうどお迎えの時間にあたるようで、義人君は妹を迎えに行くと言う。
義人君の妹と姪は同じクラスの仲良しさんで、姪からは毎日話を
聞いていた。
幼稚園のそばの交差点で、私達4人は止まっている。
「俺…母ちゃんにお迎え頼まれたんだけどさ…どうする?」
私はチラリと時計を見た。確かに後30分したらお迎えの時間だ。
「私は…叔母さんが迎えに行くから帰るよ」
「そっか、だから…子供乗せ自転車なのね」
「偉いよねぇ。妹がかわいいんでしょ?」
「いいだろう?その位」
義人君の妹への溺愛ぶりがおかしくて、雅子ちゃん達はそんな彼を
からかっている。言うなら今かもしれない。
「昨日の夜ね、私付き合っていた人と別れたの。そのせいで不安定に
なって…皆を巻き込んでごめんね」
「それは…普通に泣きたいね」
「もっと早く言えよ…馬鹿だな」
「二人とも。彼の事はほとんど知られてないのよ。他校の人だからね。
だから言うに言えなかったんでしょ」
「…うん、静香の言う通りなんだ。でも…私は一人じゃないんだよね?」
「一人じゃないよ」
「これからは違うよ」
「俺らは信じられるだろ?」
そうだね、3人は信じられる。少しだけ甘えてもいいだろうか?
「うん、ありがとうね。じゃあ、帰ろうか?」
義人君は幼稚園に向かい、私達は自宅に戻ることにした。
家に着いたら…叔母が幼稚園に迎えに行ったようで誰もいなかった。
少しだけホッとする。叔母と二人でいるのも実は辛い。
制服から私服に着替えて私は朝の事を考えた。
ゆう君は私の目を見てから目を反らした。
ゆう君は目を見てから目を反らす時は大抵嘘をついている。
今日のも…多分私に対してだと思う。いや、そう思いたい。
静香には話したけど、私の知らない所で確実に何かが起きている。
ゆう君の元に戻れなくてもいいから、今起こっていることに向き合いたい。
ゆう君が私についた、悲しい嘘を裏側にあったと思う…
彼の気持ちだけを信じて。