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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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王様と従者……その現実1

「やるとは言ったけど、何を計測するの?」

「五十メートル。マネージャーに任せられなくて」

直君から聞かされたお手伝い……今から嫌って言う訳にはいかないだろうか。

「へえ、ちいちゃん。両手で計測できるんだ」

「この作業は、今日じゃなくてもいいものだよね。私達も見てもいいですか?」

「別にいいぜ。すぐに帰れる支度をしてからならいいぞ」

直君の一言で、今日の作業の終了が決まってしまった。

「だから……私……」

「やるよな?ギャラリー連れて来るんだから」

「うっ……、鬼、悪魔。私の敵」

「言うだけ言え。ちい、そろそろ行くぞ」

「分かったってば。私へのフォローは?マネージャーさんを出し抜くんだから」

「お前の過去を明かせばいい」

あっさりと直君が答える。確かにそうだけれども、それでいいのだろうか。

「仕方ないですね。全く、この人は。ごめんね。手伝うしかないみたいだから皆は早く帰っていいよ」

私は鞄に荷物を詰め込んでいく。

「大丈夫よ。綾瀬君は寮だし、私達は徒歩通学だから。いいものが見られそうだからバスケ部の練習を見てから帰るわ」

「佐藤が言うのも一理ありそうだな。これからもこいつを頼むな。ほらっ、本当に行くぞ」

私は直君に引き摺られるように廊下に出た。

「私、急には走れないよ」

「ンな事は分かってる。その分のケアは家に帰ってからやってやる」

「それなら……いい」

「それでいい。お前は深く考えるな。頼りにしているぜ」

「それよりも急ぐんじゃなかったの?」

「そうだった:

私と直君は急いで陸上トラックに向かうのだった。


「先生、助っ人を連れて来たぜ」

直君に促されて私は先生の傍に行く。そこにいたのは、私のよく知っている人だった。

「あれっ、直也の言う助っ人は佐倉さんか。三組も文化祭の話し合いを始めたんだって?」

「もちろんです。早めに準備する事がいい結果を導くと思いませんか?牽制されている気がするなあ……。何よりも、先生がバスケット部の顧問ってことが一番の驚きだわ」

「お前、先生の見た目から……化学部とか思ったんだろ?」

「そりゃ、そう思うのが普通でしょう」

「オリエンテーションで、基礎体力があるのは知っているけど……一人で四人計測できるの?」

「スポーツテストのレベルなら……。ダメなら帰ります」

「これを使えな。一年をは知らせるけどいいか?」

直君がストップウォッチを渡してくれたけど、画面がとても見えにくい。私は渡してくれたそれを直君に戻した。

「これいらない。自分のストップウォッチがサブバッグに入っている」

私はサブバッグから自分の物を取り出した。自分のとチェックすると。やっぱり自分の物の方が使いやすい。

「こっちでやる。学校の電池交換をしたらいいと思うよ」

「そうか、頼むな。マネージャーは横でタイムを聞きとって」

「はい」

「よろしくお願いします」

私はマネージャーさんに一言かけるけれども、反応はなかった。そりゃそうだと思うけど、こっちも頼まれたからにはしっかりとやらないといけないよね。

「帰宅部女子高生の鞄には不思議だらけだ」

「先生。どんな女の子でも鞄の中は不思議です。私の場合はタイマー代わりに使うのでたまたま入っているだけです。いつでもいいですよ」

私はスタートラインに向かって叫ぶ。すると周囲の空気が一気に変わりだす。私は、大きく伸びをしてから深呼吸をした。ストップウォッチを持ち直してスタートラインのジッと見つめる。

張り詰めたその空気を身に纏う事は好きだ。どんな競技でもこの瞬間を感じるのは好きだ。泳いでいた時は、ここまで楽しむなんて余裕はなかった。自分自身もゆっくりと変化している。自分の周囲もこんな風にプラスにかわったらいいのになあ。


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