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「一通り、皆の意見はチェックしたのかな」
「そうだね。俺達は役に立ったのかな」
「十分すぎる位に役に立ったよ。ありがとう」
今日やれることは全部終わって、私達はのんびりと過ごしている。一人だったらもっと時間がかかっていたと思っている。
「ってことで、私の隠し財産の登場ですよ」
佐藤さんが鞄の中から板チョコレートを取り出した。
「お前、家が近いのになんで持って来ているんだよ」
「それはそれですよ。時沢も立石も私はよく知っているけど、綾瀬君も佐倉さんもよくは知らないもの。折角のクラス委員だから仲良くなりたいじゃない?」
パキッと音を立てながらチョコレートを割ってからパッケージを開いていった。
「さあ、どうぞ。やっぱり中等部ってとっつきにくい?」
佐藤さんは佐藤さんなりに気にしているみたいだ。私はそんな事を考えたことないんだけどなあ。
「私はないけど、博子ちゃんは意識しているね。彼女は意外にプライド高いから」
「そうなの。じゃあ、英語と数学なんて大変?」
「博子ちゃんがどう思っているかは考えたことない。ぼんやりしている暇がある様に思えないよ。この学校」
「まあね、毎月業者の模擬か定期テストもあるからね。慣れたら大したことないよ」
私の発言に対して時沢君が答える。
「そうなのか。でも慣れる頃は、三年生だろうな」
「そうとも言うな。間違っていない」
綾瀬君の言葉に立石君が答える。やっぱりテストに追われる学校なのか、最初からそれは知っていたけど……中等部からの生徒に言われてしまうとずっしりと肩が重くなる。
「大丈夫だよ。定期テストの結果が一番重要だから。綾瀬君だって、英語は私達と同じじゃない」
佐藤さんに励まされる。確かに綾瀬君、英語は同じだけど数学はクラスCだったはずだ。
「そうだなあ。数学は落ちたら本当に悲惨だから落さないで上がる方がいいよ」
「それってどういう意味」
「そのうちに分かるわよ。今答えなくても。佐倉さん……賢そうだから」
本当は知っている。上のクラスほど先生の質がいいということ。前半クラスでも一組と四組では絶対に違う。三組は比較的に先生の質はいいと思う。
「とりあえず、今年の目標は妥当四組でいいんじゃない?あいつらのホッとした顔が許せなかったの」
佐藤さんの本音に私はドキリとする。
「確かにそうだな。あのクラスに俺よりアホなあいつがなんで?ってなったさ」
「そうそう。あのクラスにいる訳が知りたかったさ」
三人は思っていた事を言いたい放題に言っている。
「妥当四組か。いいんじゃないか?まずは文化祭の企画……模擬店を通したいよな」
「うん、自主作映画もいいけどね。それは前年度から一部のメンバーが動いていた証拠でしょ。それはちょっと反則かなって思う。四組に入れなくても水面下で映画企画にのっていた人がいたはずよね。クラスが違うからって切り捨てられた人が三組にいるのならば、見返してみたくないって言いたいのも本音かな」
「あれ?佐倉さん、もしかして負けず嫌い?」
「うん、自他とも認める負けず嫌いだと思うよ。豚肉を入れるとしたら、前日に買った豚肉は何処で保存するかよね」
「それは俺達の家の冷蔵庫でいいと思う。他にも徒歩通学組はいるから協力すればいい」
「そうそう。シーフードミックスもそれでいいと思う。徒歩通学組には当日自転車持って来て貰おうか」
「当日の買い出しもあるからな。そこは今井にやらせようぜ。あいつも実行委員だから」
「分かった。私が言っておく」
「そうそう、佐藤は今井の彼女だから」
「だから、家が隣なだけ。彼氏じゃないし」
佐藤さんが必死に否定している。私とよっちゃんみたいなものなのかな。




