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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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3

「今日のホームルームは文化祭について。実行委員よろしく」

いきなり宮野先生に指名されて私は焦る。今日のホームルームの時間で話し合いをする為に毎日少しずつ具体的な質問に変えながらアンケートを聞いてきた。その結果をまとめたものをプリントにして全員に配る。

「資料に書いてあるように、飲食ならお好み焼きか喫茶店。迷路とお化け屋敷に意見が分かれた」

今井君が皆に説明してくれている。昨日の放課後に今日の話し合いの打ち合わせを少しだけ今井君と綾瀬君としたのだ。クラス企画の方向として飲食店とお化け屋敷と迷路を合わせた二通りの企画書を用意しようということになった。

私の隣で今井君が企画を二種類作る事について説明している。一年生で飲食店の企画が通るのは難しいから、飲食店の企画が通らなかった時の企画も用意した方がいいという。クラス企画は絶対参加だから、再提出の企画は早い者勝ちになってしまうのだ。最初のうちから考えておいた方が楽だという。

「まずは飲食店なんだけど、メイン販売をちゃんと決めようと思うんだけど、お好み焼きをメインでいいか?」

「他のものはダメなの?」

「お好み焼きをやるから、ホットプレートがあるからホットケーキは材料が同じものが多いから作る事はできるけど、クラス予算の範囲で食材も買うし、クラスの装飾もあるから多くても二品だと思うんだけど。宮野先生、過去はどんな店が多かったですか?」

「一年生で模擬店は一度もないが、今まであったのは、やきそば・カレー・タコ焼き……まあ、そんなところだ」

「ところで喫茶店になるとメインは一品ってことにはならないよな。メインが多くなると前日と当日の準備の負担がかかる事も考えた方がいいと思う」

暫くしてから多数決で決める事にしていたので多数決を取る事にした。

「うーん、お好み焼きにクラスの大半が賛同したという事で、今回はお好み焼きで企画を進めよう」

「ホットケーキはやらないの?」

「メインはお好み焼きで、ホットケーキもありますって形にした方がいいと思う。ラーメン屋さんにカレーがあるみたいな感じなんだけど」

喫茶店をやりたいと言っていた子達は、お好み焼きと一緒にホットケーキを焼くという事で納得したように思えた。それでも揉めるってこともなくあっさりとクラス企画が決まってしまった。

企画が決まれば次は企画を行う場所を決めたい。三組の傍には水道があるので、自分達の教室を企画として使用することにした。

「クラスの配置図は後にして、お好み焼きに必要なものって何だろう?」

私はクラスの皆に必要なものは何かと問いかける。

「食材」

「ホットプレート」

「皿、割り箸、フォークとナイフ」

「ゴミ袋」

「ジュース」

具体的な所から見落としがちなものまで意見が出る。学校にありそうなものは借りられるそうなので家庭科室に何があるのか聞いた方がいいと思う。皆の意見をメモしてから次に決めないと行けない事は何か問いかける。

「じゃあ、お好み焼きの中に入れる具材は何にする?6月に文化祭って事を頭の片隅にあると嬉しいんだけど」

クラスは一瞬で静かになる。私と今井君と綾瀬君はある程度進行の打ち合わせをした時に考えていたんだけども、皆の方はそこまで考えていなかったようだ。

「今はアイデアが多いと思うのね。その結果が企画の採用に繋がると思うんだ」

「今日、そこまで決めないといけないの?」

「いけないっていうのとは違うよ。クラス皆で行うんだから皆で決めるべきだと思うけど」

綾瀬君は質問に対して答えてくれる。確かに進行速度は早いと思う。でもそれだけの事を毎日アンケートで聞いていたのだ。

「ここまで一気に進んだのは、実行委員が毎日アンケートを取ってくれたからだ。それも少しずつ具体的に聞いてくれたから、今日のこの段階でここまで決まったんだよ。ホームルームの時間はまだあるから、もう少し具体的に考えてみようよ」

「一番重要なのは、食材にどれだけお金をかけられるか。問題なのは秋よりも衛生面の配慮は必要になってくると思うんだ」

「そっか……食中毒とか怖いもんな」

「そういう部分も含めて、ちゃんと考えた上で模擬店がいいのか、違うものがいいのか考えて欲しいの。今の時点でも納得していない人がいるのも分かるけれども、皆で決めて皆で成功させたいと思っているのが私の本音なんだよね」

残りの時間は、必要になるものを私が配った紙に書いて提出するということにした。その後、私達も自分の席に戻って考える事にした。


「ちいは相変わらずね。そういう所」

私の隣には博子ちゃんが来ていた。どうやら残り時間を一緒に考えたいと言う事だろうか。

「そうかな?そうだといいんだけど。六月だからお肉よりはシーフードだよね」

「それもそうだけど、保健所通すんでしょ?」

「それは企画が決まってから決める事だから今は気にしなくてもいいよ」

「それもそうだよね」

博子ちゃんの言う事は分かるけど、そういった役割はきっとクラス委員とか実行委員が体を張ればいいだけだと思っていることは言わないでおこう。博子ちゃんの真意を今のやり取りだけで掬い取るまで仲良くはないから。

「ねえ、隣の四組はもう始めているんだって?凄いよね」

「他のクラスは他のクラス。気にする事はないよ」

「でも……気になるでしょ?本当は」

「気にならない訳じゃないよ。でもね、同じ事を真似したって意味がないよ」

「そうね。まあ、企画が同じなのはよくあるけれども、そこで違いを見せればいいのかな」

「そういう事だと思う。過去の企画書が見られるようになったら参考にしようとは思っているけどね」

「何かあったら、私に言って。それにしても理絵と同じ授業がなくて良かったね」

博子ちゃんはいきなり話題を変えて理絵の事を出してきた。博子ちゃんの言う通り、彼女と同じ授業を受けないと言うのは本当にラッキーだと思う。

「そうね、ありえるとしたら……部活と委員会位かしら?」

「理絵の事だからさ……放送委員会じゃない?」

「きっとね。文化祭の時は顔を合わせる位かな」

「またややこしいことにならないといいんだけど」

「仕方ないでしょ。その位はお互いにちゃんとやるべきことをすべきだと思うけど」

「きっと無理だよね。ちい……あれだけの事があったのにどうしてそんなにあっさりなの?」

博子ちゃんは私の態度が不思議みたいだ。

「ねえ、好きの反対は何?」

「嫌いでしょう」

私の問いに博子ちゃんが答える。でも、私はそれは答えじゃないと思っている。

「私は違うと思うな。私はどうでもいいかな。嫌いって事は、彼女を意識しているってことでしょう?理絵が何かを私に仕掛けてこない限りは」

「無関心って事?確かにそうかもしれない」

「そうでしょう。理絵の話は止めて本来の作業に戻ろうか」

私は博子ちゃんの雑談を本来のお好み焼きの話に戻した。最終的に皆に書いて貰った紙を回収して今日のホームルームは終わったのだった。


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