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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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無邪気になれない

「先生、実行委員会はまだ発足していませんけど、文化祭で皆が何をやりたいかアンケート形式で聞いてもいいですか?」

「いいじゃないか?帰りのホームルームを使うか?」

「ありがとうございます」

皆で天体観測をした次の日の昼休み。私は職員室にいる宮野先生にクラスアンケートを取りたいので、帰りのホームルームの時に時間を使えるようにお願いをしていた。

まだ実行委員会も発足していない。けれども、隣の四組ではクラス企画が決まった話をグループレッスンの時に聞いていたので、三組の動き始めた方がいいかなと私は思っていた。昨日も千世さん達に四月中には企画を決めないといけないから少しずつでもいいから時間を作って企画を進めるようにとアドバイスを貰ったばかりだ。

朝のホームルーム前に私と同じ実行委員の今井君にはその事を話し合っていて、毎日少しずつ話し合いの時間を持つようにしようという事になった。クラス全体で何をやるか決まるまでには相当時間がかかるだろうし、思いついたアイデアが欲しいので、無記名のアンケート形式にする予定だ。

今日のアンケートで確実に飲食系をやりたいという意見があがってくることはわかっているけれども、飲食系の企画が通るのは三クラスだけだと聞いている。一年生で飲食店の企画を通す事は相当難しい作業だろうけど、きっちりと企画を立てれば運が良ければ採用されるかもしれない。

ちなみに四組は八ミリ映画を作成して上映すると決まっていて、クラスの分担も既に決まっているそうだ。三組はクラスメイトの半分は中等部出身だけど、今のクラスの雰囲気は悪くはない。今井君も中等部出身だ。

先生との打ち合わせをした後に、印刷室に寄って大きめな紙をもらってクラスの人数分裁断機で切っていく。

切り揃った紙の束を持って私は教室に戻った。


「今井君……ちょっといいかな?」

教室に戻った私は友人と話していた今井君を呼ぶ。

「おっ、早速呼び出しか?」

気軽なジョークのつもりで言われたらしいけど少しだけ眉間に力が入るのが自分でも分かる。

「そんなことを言うなよ。先生はいいって?」

「うん。紙も用意してきたよ」

「今日はどうする予定だ?」

「今日は……やりたいと思う企画を大雑把に二つ書いて貰う予定だよ。他のクラスを期にしない様にしたいけど、どうしても気になっちゃって」

「なんだ。知っていたのか。でもあいつらは特別だから」

今井君は素っ気なく答える。その答え方が少しだけ引っかかる。どうしてだろう。

「同じ学年に特別なんてあってはいけないよ。私と今井君だって同じ高校一年生で一緒でしょう?だったら、今日から始めて行こうよ。いきなり話し合いをしましょうよりも毎日少しずつ聞いた方がいいと思うの」

私が説明すると今井君はきょとんとしている。

「佐倉さんってしっかり者?」

いきなり聞かれたけど……この人誰だろう?

「えっと……誰だっけ。ごめんなさい」

「まあ、いいよ。覚えてくれたら。俺は田辺」

「それじゃあ……俺は……誰だ?」

「うん。佐藤君」

「男で佐藤は俺だけだしな。佐倉さんってせっかちさん?」

「そうなのかな。ギリギリでやると質が下がるじゃない?それなら早めから計画を立てる方かも」

佐藤君は私の後ろの席だ。基本的に出席番降順に座っているんだけど、背が低くて黒板の下が見えない子とか

視力が悪くて見えずらい子は、先生達の許可を貰って席を少しだけ移動している。本当なら私の後ろの席は佐々木君なんだけども、佐々木君が私の後ろにいると見えないと佐藤君が訴えて席を入れ換えたばかりだ。クラスの男子で分かるのは、加瀬君と今井君と佐々木君と佐藤君と綾瀬君位かもしれない。

「それはいい心がけだと思うぞ。今井の相方にはぴったりじゃないか。月末には企画書提出は変わらないのだから。それよりも、佐倉さんは生徒会でバスケ部の広瀬先輩と知り合いなの?朝も日によっては夕方も一緒だよね」

今井君は中等部出身だから直君をしっているようだ。直君達と前もって決めていた答えを言う事にした。

「広瀬先輩は同じ中学だから知り合い。元々は私の家の隣のお兄ちゃんの友達だったみたい。私も昔から一緒になって遊んでいたから」

この話には嘘は一切添加されていない。泳いでいた時は私の方が先に選手コースにいたから私の方が先輩になってしまうのだけど、その独自の関係はこの高校ではその事を知っている人はいないはずだ。だから隠せる限りはこの話は隠す事にしている。逆にクラブの同期達は直君がS高にいる事は知っているが、その事を私が直君に話す必要はないと思っている。今の直君はクラブの人間との付き合いは途絶えているのだから。

「ふうん、幼馴染みたいなもの?」

「私、一人っ子だから、お兄ちゃんみたいな存在なの」

私は今井君に聞かれたので直君と決めた通りの答えを言う。そんな時に、廊下から私を呼ぶ声がする。私が廊下を見ると廊下には直君がいる。そんな直君を見て私は何?と尋ねる。一体、何しにきたのだろう?この人は。

クラス中が私と直君を見ている事が良く分かる。ニヤリと笑った直君はゆっくりと大股で私の所にやってきた。


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