なおしてJoyせんせー
森の中の小さな診療所で、若い女医さんが働いています
本田先生は、女性のお医者さんです。
森にかこまれた、小さな診療所で働いています。
診療所の中は、朝からしずかでした。
「今日は患者さんがこないわね」
先生は机に向かって、診療所で使う資料をつくっていました。
カランコロン。
入り口のドアベルが鳴りました。
「はい。どうぞーー」
先生が入り口を見ると、小さい女の子をいました。
近所に住んでいるつむぎちゃんです。
「あら、つむぎちゃん。ひとりできたの? どこかいたいの?」
「ううん。ちがうの……」
つむぎちゃんは、首を横にふり、大事そうにかかえいたものを差し出しました。
「せんせー。このこがケガしたの。なおしてあげて」
先生は人形を受け取りました。
布の左手が、すこしやぶれています。
「あらあら、ケガしちゃったのね。これ、どうしたの」
「お庭であそんでたの。木のえだにひっかかったの」
つむぎちゃんは泣きそうになっています。
「だいじょうぶ。ちょっとまってね」
先生は、机の引き出しから小くて赤いケースを取り出しました。
そして、貝のようにパカッと開けました。
小さなハサミと糸、それにハリがはいっていました。
「せんせー。これって、おさいほうの道具?」
「そうよ。小さいけど、とても便利なの」
先生は、人形をヒザに乗せて、ハリと糸をとりだしました。
「それじゃあ、治療を始めます」
「はーい」
チクチク、スー……
チクチク、スー……
なんということでしょう。
やぶれていたところが、あっというまにつながりました。
「なおりましたー。退院おめでとう」
先生が人形をつむぎちゃんに返しました。
「わぁ、先生、ありがとー」
「どういたしまして。でも、こんどは木の枝にも気をつけようね」
「はーい! せんせー、またねー」
つむぎちゃんは、笑顔で手をぶんぶんとふって帰っていきました。
診療所はまた静けさをとりもどしました。
「さて、仕事仕事……」
カラン、コロン。
ドアベルがまた鳴りました。
今度は男の子が立っています。
「さくじろうくん、どうしたの?」
男の子はこまった顔で、だいているクマのぬいぐるみを持ち上げました。
耳が少し取れかかっています。
先生はにこっと笑い、「こちらへどうぞ」と言いました。
数年前の公式企画用に作りかけていたお話を再構成しました。




