22.遠藤姉妹
着いてすぐに、三階の留置所に入った。
「小茂田っての、います?」
立花が訊くと、年配で顔見知りの受付が、「九番だ。石倉さんに許可とってくれよ。あの人、でっかい身体のわりに細かいから」と返す。
立花は頷くも、そんなことは後回しの腹づもりだ。
鉄格子を挟んで小茂田と対峙した。スキンヘッドに大量のピアス、筋肉質の腕にはすき間なくタトゥーが刻まれている。
今では珍しいくらいの、いかにもなチンピラだ。
「よく眠れたか?」
立花が声をかけると小茂田は目を剥き、「俺のバックにはブラッドオーガがいるんだぞ!」と凄んできた。
アホすぎて話にならない……。
ため息を呑みこんで、立花は鉄格子の扉を開けて中に入る。
戸惑いの表情をちらつかせた小茂田の顔面に頭突きを入れて、払い腰で投げ飛ばした。
「てめえ、オーガに殺されてもいいんだな」仰向けで嗚咽を漏らしながらも、小茂田が目に怒りをこめた。
「それはブラッドオーガの総意だと受け取っていいのか?」
「おう。俺のコンソールを返せや。オーガのヤサカさんに連絡して、すぐにお前のタマを取る準備をしてもらう」
「わかった。コンソールは持ってこさせる。あと、俺はマ対の立花だ。殺す相手がわからないとヤサカさんとやらも困るだろ」
そう残して立花は留置所を後にした。
コンソールを小茂田に返すように受付にお願いしてから、少し遅めの朝食をとるために外に出る。再び留置所に戻ったのは三十分後だ。
「俺……殺されるかもしれません……」小茂田は真っ青になっていた。
「オーガのイイ顔に口を聞いてやるから、元気だせ。その代わり、今日はしっかり働くんだぞ」
「はい、死ぬ気でやります」小茂田は潤んだ目で何度も首肯した。
車で移動しながら、小茂田と話した。
案の定、小茂田は先ほどヤサカという男に連絡するまで、清宮が死んだことを知らなかった。
立花が現れた経緯もヤサカのさらにアニキ分から聞かされ、ブラッドオーガの名を出して好き勝手いったことも、かなり絞られたようだ。
続けて清宮を恨んでいる人物を聞いたが、出るわ出るわでとても全員をあたる時間はない。その中でも、「絶対復讐してやる」と、鼻息荒かった遠藤姉妹の元に向かった。
遠藤姉妹は清宮に同時期に妊娠させられたあげく、堕胎も強制されたということだ。
「姉妹で一緒に住んでるくせに、堕すまで二股に気づかないのもどうかと思いますけどね」小茂田がふてぶてしく鼻で笑った。
ついさっきまで顔面蒼白だったというのに……。なかなかうらやましい性格だと立花は思った。
遠藤姉妹が住むマンションに着いた。キャバクラと風俗をいったりきたりで金はあるのだろう。高級な部類に入るマンションだった。
小茂田の誘導でエントランスを越え、部屋の前でインターホンを押した。出てきたのは、ビキニ姿のよく焼けた二十歳そこそこの女だ。
「なに? 焼いてる最中なんだけど?」
「こっちは刑事さんだ。清宮さんのことで聞きたいことがあるんだ。なんでも答えろよ」小茂田は偉そうな口ぶりでいい、立花に向いた。「妹の瑠璃です」
よく焼けているのが姉の姫華だと聞いていたので、てっきり姉のほうだと思った。
「はじめまして、コウベ署の立花です。清宮さんのことで、少しお話しさせてください」
「ジャスティス死んだんでしょ。姫華から聞いた。ざまぁみろよ!」
ジャスティス? 立花が眉をよせると、「清宮さんの名前はセイギ、正義のヒーローの、『正義』なんです」と小茂田が耳元で囁いた。
「お姉さんは、今どこに?」
「サロンで焼いてる」瑠璃はだるそうにいってから、ハッと眼を開いた。「えっ!? 私たち捕まんの?」
「捕まるようなことをしたのかい?」
「なんもしてないよぉー」瑠璃はいきなりシナを作りだす。「それにジャスティスって酷いヤツなんだよー。聞いてよぉー、刑事さーん」
「詳しく聞かせてくれ」立花がいうと、瑠璃は大袈裟にはしゃぎ、胸を押しつけるようにして腕をからませ、中に招かれた。
女性の部屋とは思えない散らかりようのリビングだ。
ものを横によせて立花が座ると、清宮がいかに非道かを、瑠璃は早口でまくしたてた。




