心に残った棘
掲載日:2026/04/16
キラキラと輝く夜の街。
顔につけた色とは真逆の表情を浮かべ、派手な衣装を着た人々の明るい声で作られた喧騒 。
甘ったるい香水の匂い。
その全てを通り過ぎて、見慣れた道を歩く。
ふと、鞄に入れていた飴玉の存在を思い出す。
鞄から飴玉を取り出して、口に含む。
口の中でコロコロと音を立て、甘さが私の中に行き渡る。その飴玉の甘さを堪能しながらも歩く速度を緩めることはない。
そして、しばらく歩いて、ようやく目的の場所にたどり着く。足を止めて、そっとその場所へ腰を下ろす。そして、四本の花を添える。この暗さと同化した刺々しい強さを持った花を。ため息が零れた。こんなことをしたって意味が無い。それくらい分かっている。それでも、ここに来てしまう。
ここにくれば、何か分かるんじゃないかと期待してしまう。今日なら会えるんじゃないかとおとぎ話に縋ってしまう。わかっていても願ってしまう。
それでも、現実は、現実でしかない。おとぎ話にはなれない。
「わかってる。それでも私は、やっぱり……」
私の言葉をかき消すように、 ザァッと音が鳴った。
貴方を拐ったあの音が、私の言葉も貴方に届けてくれたらいいのに。




