きな娘のひみつ③
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前回のつづきだよ!
河川敷で出会った石ころのお兄さん。
ちょっと怖かったけど、凄い人だったの!
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遠くに投げた石ころが、河川敷の草むらに"着弾"した。
『ボンッ!』という爆発音と共に、モクモクと白煙のようなものが立ち上がり始めたのだ。
「うわっ! ごめんなさい! 大丈夫ですかー?」
きな娘は慌てて石ころが落下した場所へ駆け寄った。
まさか爆発するなんて思ってもみなかったので、さすがにあの男の人が心配なのだ。
そして、その煙が消える頃。
石ころの中にいた男の人が現れた。
普通の人間サイズで。
「うわっ! おっきくなっちゃった!」
きな娘は、目をまんまるにしながら、耳が大きくなっちゃうマジシャンのように驚いた。
「ゲホッ……! 小娘……。 余を投げるなどいい度胸ではないか。 だが、お陰で外に出られた。 礼を言う」
男はミニマムサイズで石の中にいた格好と変わらず、藍色の甚平を着ている。
間違いない。
さっき石ころの中に居た男だ。
「えっと……。 "外に出られた"って……ハマってたの? あの石の中に? でもなんで!? 小さかったのに!」
きな娘は目の前で起きていることを必死に理解しようとしていた。
自分の常識ではあり得ない現象が目の前で起こったのだ。
親友の"天才下田"でもきっと理解出来ないだろう。
だが、男は平然と答える。
「申し遅れたが、余の名は"石ころ太郎"。 石に宿る妖精だ。 余が石ころに宿る時、身体は小さくなるだが、時々宿る石ころにジャストフィットしてしまう事があってだな、さっきみたいに出られなくなってしまうのだ」
「……えっと、警察って何番だっけ?」
きな娘はスマホを取り出して電話をかけようとする。
「おい待て小娘! 今何をしようとしている!?」
それを見た石ころ太郎はやや早口で電話を阻止した。
「だって! お母さん言ってたもん! 『自分のこと"妖精"とか言う人には気をつけなさい』って」
「いや……、余は紛れもなく妖精なのに……。 まぁ、母君は間違ってはいないと思うが……」
その時だった。
「待て小娘! 隠れろ!」
突然、石ころ太郎に頭を押さえられたきな娘は、背の高い草の陰へ身を隠すようにしゃがみ込んだ。
「ななななんですか突然! 私に乱暴しようとしてるんですか!? やっぱ警察――」
「シッ! あれを見ろ小娘」
真剣な顔で石ころ太郎が指をさす方を見ると、1台の軽トラックが河川敷に侵入してきた。
ガタンガタンと上下に揺られながら大きな石の上を通り、きな娘達の近くへやってきたのだ。
「こんな所に車?」
「懲りもせずまた来たのか」
「どういうこと?」
2人はヒソヒソと話をしながら、身を隠した草の陰から軽トラックを見つめている。
「周りを見てみろ小娘」
言われるがまま、周囲を見渡したきな娘はあることに気がついた。
「うわぁ……。 汚いね。 ゴミ……なのかな?」
軽トラックが停車した周りには、様々な粗大ゴミやビニール袋などが転がっていたのだ。
きな娘の言葉を聞いて、石ころ太郎はひとつ頷いて語る。
「ここいら一体に散らかっているのは、いわゆる"不法投棄"というやつだ。 ヤツは定期的に、ここにゴミを捨てにくる」
「酷い……。 ゴミ捨て場じゃないのに」
きな娘は目の前に広がる惨状に心が痛んだ。
当たり前のように、堂々と自然を穢してるその光景に。
「そうだ。 だが余はずっと見ていた。 あまりに堂々とやるものでな。 だからこの前、石ころの中から声をかけてやったのだ」
「びびってた?」
「それはもう……。 『ちっ』とか言って帰っていったぞ」
「それ、びびってないよね」
「小娘……。 少しキズついたぞ」
「あはは……。 ごめんごめん」
少しだけ冗談を交えながら、2人は軽トラックの様子を監視している。
「もうよい。 だが……。 どうにかしたいものだな」
そして、本当に困ったように、石ころ太郎は呟いた。
すると、軽トラックから小太りの中年男性が降りてきた。
2人の存在には気がついていないようだ。
「あ……」
その時、きな娘は見てしまった。
小太りの男性が、軽トラックの荷台から降ろした粗大ゴミの一部を、河の中へ蹴り入れた様子を。
そして、白い冷蔵庫のような塊が河の流れに乗り、どんぶらこ、どんぶらこと下流に向かっていく。
「……ひどい! なんて自分勝手なの!?」
きな娘にはフツフツとした感情が湧いていた。
それと同時に不思議なことが起こる。
「ん……? 小娘!そのポケット!」
「ん?へ?」
アホの子ような返事をしながら、きな娘は言われるがまま視線をブレザーに向けると……。
きゅぴーん!キラキラ!
ブレザーの左側がピンク色の光で輝いているのだ。
そして……。
キュポン!
ピンク色に光る何かかが、ポケットから飛び出してきた。
そして、きな娘の前で浮いたまま静止する。
「うわ! マカロン型のコンパクトが出てききた! なんで!?」
手を伸ばしてコンパクトを掴んだきな娘は、まじまじとそれを観察している。
一方、石ころ太郎は驚愕の表情を隠せずにいた。
「それは! 『甘味型化粧品容器』だと!」
「甘味が……え? 何?」
国語の成績が悪いきな娘には、3文字以上漢字が並ぶと混乱してしまう。
「スイーツコンパクトだ!」
「最初からそう言ってよ! それで、これは何なの?」
彼は和風に言うことしかできないのかと思っていたが、どうやら横文字もいけるようだ。
思わずきな娘もつっこまずにはいられなかった。
だが、石ころ太郎はきな娘の言葉など聞いてはいないようだ。
「そうか……。 まさか小娘がそうであったとはな」
「いやいや! 1人で納得してないで教えてよ!」
きな娘はそろそろ、自分の思考能力の限界を迎えていた。
「小娘。 今、甘味を持っているか?」
「甘味? 飴玉ならあるよ!ていうか会話になってない!?」
そして、きな娘は考えるのをやめた。
「よし。 それを今から食べろ」
「ええ!? なんで今?」
「いいから早く食べるんだ!」
もう訳がわからない。
「よくわからないけど……。 わかった!言う通りにしてみる」
パクッ!
言われるがまま、きな娘は飴玉を口に入れた。
ほんのりと甘い、いちご味が口の中にジワァと広がった――その時。
キラキラキラキラ☆
きゅぴーん! ポン!
きゅぴーん! ポン!
「戦うスイーツメイド――きな娘! あなたの心の闇を耕します!」
(ええええええ!なにこれー)
謎の光と、可愛らしい効果音に包まれて、いつの間にかメイド服を着ている。
それは、日曜日の朝8:30によく似合うような、愛と希望のファンタジー・コスチュームに似ていた。
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ほんと、展開が怒涛すぎて理解できなかったよね!
この後、私は不法投棄をしたおじさんと対峙することになります。
でも、私にできるのかな?
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