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セラの巡礼祭

※恋愛色強めです。

苦手な方はUターン!

リィナ「四季巡礼祭…ですか?」


陽もようやく柔らかさを帯び始める初秋の朝。

この日のノクシスは随分早くから顔を出した。

大聖堂の三階、生活区の食堂でリィナとルクシウスは

丁度朝食を終え、湯気の立つ香茶で

手のひらを温めているところだった。


ノクシス「はいっ! 本日は王都北区セラにて、

新秋を祝う“巡礼の宴”が催される日でして!」


ルクシウス「あぁ…、もうそんな季節ですね。」


リィナの向かいで香茶を傾ける盲目の神官─

ルクシウスは

閉じた瞳に窓辺の朝光を受け、静かにうなずいた。


リィナ「巡礼ーって何をするのですか?」


ルクシウス「秋の実りと、その神々への感謝を祈るのですよ。

《セラ》は王城が建つ、王都で最も秩序と信仰が

深い地区です。

その城下街で催す巡礼祭は、新秋を七神と

迎えるのが習わしなのですよ。」


ノクシス「この日は神殿関係者や貴族、…騎士の家系などは休みになるのです。

そ、それでっ……その、もしよろしければ…、リィナ様と………。」


ルクシウス「ーあぁ。」


なるほど、と言いかけて

ルクシウスは言葉を呑んだ。

よくよく見やればノクシスは、小さく襟を立てた

シャツに、短めのベスト、その上から

白銀のマントではなく、ショールに袖を通している。

帯剣とロングブーツに騎士っぽさが残るが、

全体的に色味が優しく、淡いベージュや灰金で

整えられた装いは

いつもの騎士正装より、随分と軽装だ。


普段必要以上に感情を表に出さない男が、朝も早くから

頬を紅潮させ、興奮気味に何事かと思えばー。


…神も粋なお導きをなさる…

ルクシウスは香茶で口元を隠した。


リィナ「わぁ… 王都の収穫祭ですかー…!」


リィナが興味深そうに目を輝かすので、ノクシスの

緊張で固まっていた拳も僅かに緩んだ。


ノクシス「は、はいっ…! リィナ様はまだ王都に

参られて日も浅いですし…、その……

良い王都案内になればと…!」


リィナ「あ…… えっと、でも…。」


リィナは口を噤んだ。


ー自分はまだ修行の身。

大聖堂での務めは簡単に“自分の一存”で決められない……。


盲目の神官は瞼の奥で

リィナの好奇心も迷いも、

戦乙女(ワルキューレ)」としての自覚も静かに察する。


ルクシウス「構いませんよ、リィナ。自分が救おうと

している世界を視ることは、良い糧となるでしょう。

祭典の場において、これ以上頼りになるお誘いも

ありません。ー安心して行ってきなさい。」


教えを説く、いつもの優しくもよく通る声色。


リィナ「あ、ありがとうございます、

ハルヴェイン様!」


リィナの一層弾む声の横で、

ノクシスは律儀に頭を下げている。

ーそんな様子を肌で感じながら、ルクシウスは密かに思う。


よくここ(大聖堂食堂)に顔を出す、ゼルディウス。

彼のような図太さがほんの少しでも二人にあればーと。


ーこれもまた神の采配か。〝天は二物を与えず〟…

そんな言葉につい心を寄せてしまった。



王都北区セラは、高い外壁に守られた厳かな街区。

その唯一の門は、六つの柱を携えたアーチが、

“聖域アーチ参道”と呼ばれる長い回廊となって

奥へと続いている。


柱はそれぞれ王都を守護する六神を象徴しており、

後ろを歩くノクシスは、一つ一つを丁寧に説明した。


リィナ「〝七柱〟なのに六つしかないのですね?」


ノクシス「北区を守護する〝セラ〟神の柱は

王城セラファイトの礎となってまして…。

回廊を抜ければ、城下街の正面に堂々と聳え立つ

姿をご覧いただけますよ。」


リィナ「わぁ…、それは楽しみです…!」


ノクシス「ーーっ……。」


正式に“お休み”をもらったリィナは、久しぶりに

肩の力が抜けたのか、わざわざ自室へ戻って着替えてきた。


水平線のように柔らかいホリゾンブルーの

ワンピースは肩が大きく露出し、ところどころの

フリルが華奢な身体を優しく彩る。

回廊のアーチに絡む、淡いオレンジの蔦から小花が

風に散ると、背中の長い長いリボンもひらひらと

踊り、リィナと共に参道を無邪気に

楽しんでいるようだった。


ノクシスは、自身の話を熱心に聞いてもらえる嬉しさや、

ローブの脱いだリィナが新鮮でー 眩し過ぎて、

どこを向いていればいいのか

感情も視線も回廊のように回るようだった。


六つめの柱に差しかかる頃、

香の薫りとリュートの音色が風と混じり、参道は

静かに華やいだ。

舞う小花と精霊〝ヴェント〟の中、城下街の門が

姿を見せる。


門兵の前に来たところで、

リィナは思い出したようにノクシスへ振り返った。


リィナ「ーそうだ、ノクシスさん。ノクシスさんも

今日は〝お休み〟なのですよね?」


ノクシス「え、あ、はい。」


丸い亜麻色の瞳が見上げてくるので、

慌てて目線を戻す。

大きく跳ねた心臓に、ノクシスは自問自答する。

何を動揺する。

いつもの距離。いつもの位置ではないか。


秋風が攫う桜色の髪を抑えながら、

にこっと笑ったリィナは

ちょいちょいっと小さく手招いた。


リィナ「でしたらその場所はおかしいです。

こっちに来てください。」


ノクシス「えっ!!?」


そうして、自らの隣に

ノクシスを招いたのである。


ノクシス「ーーーっっ。」


今度こそ心拍の不調を自覚した。

普段の「聖堂騎士」としてのいつでも踏み込める

「最適」な距離。そこから数歩、たったの数歩で

視界が変わる。


建物が高い。風が通る。天が近い。

ーいや、それよりも何よりも。


(リィナ様に……。)


ノクシスは横目をそっと落とした。


触れてしまいそうな肩…、手。

控えめながらにも優しい匂い。

いつも思う、ー可憐な笑顔。


その何もかもに〝届いて〟しまう。


(何を…っ、何を考えている、俺はっ…! リィナ様は〝休日〟の俺を気遣って下さったのだ……!

不純な考えは捨てろっ、不届き者がっ!!)


折角仲良く肩を並べて潜った門だったが、

ノクシスは自責に忙しかった。


「神の御加護がありますように。」


聖門を越えると花渡(はなわたし)が祈りと共に

歓迎の花を手渡す。

手のひらに収まるほどの小さく、白い花をリィナは

丁寧に礼を述べ受け取ると、視界が一気に開けた。


円形の大広場、中央にはオーディンを中心に

六神が光臨を放つ巨大な噴水。

背後に聳える白城の《王城セラファイト》は、

ノクシスの話通り堂々と、そして

〝静謐〟や〝王権の安定〟を司る《セラ神》に相応しく、

さながら〝天空の城〟のように佇んでいた。

リィナはその荘厳さに圧倒された。


リィナ「…すごい…。ーすごいですね!

ノクシスさんっ…!」


再び目が合ったリィナの瞳に映る感動の光に、

ノクシスは緊張がゆっくりと安堵に変わるのを感じた。


ノクシス「ーはい。

どうぞこちらへ…、ご案内致します。

…本日はどうぞ、セラのお祭りを存分に楽しんで下さい。」


参道から聴こえていたリュートにフルートも重なり、調べは一層透明感を増す。

清らかな香りに、七元素の精霊たちが虹のように漂う

幻想的な空間を、歩幅を合わせて歩く。


騎士団による演武。

奉納茶席、庭園を彩る初秋の花々。聖杯参拝ー。


同じ王都にいながら、日々の生活では触れられない

異文化の数々にリィナの頬は緩みっぱなしだった。


ノクシスはー不思議な感覚だった。


城下街も参道もセラファイト城ですら、

通い慣れた景色だ。

もう何年も一人で歩いてきた道を、今日は傍らに

リィナが居る。


夢で焦がれ続けた〝戦乙女(ワルキューレ)〟となる女性。


神聖で、この世で最も尊い存在。

普段は護るべき存在が、今、

自分の隣で、演武に驚き、聖水を祈り、職人市場で

目移りしている。その姿はまるで、まるでー。


(普通の、少女だ……。)


動悸はずっと煩いのに

今この時間がたまらなく惜しい。


…これ以上望むのは我儘だろうか。

ーいや、贅沢過ぎる。

〝今日〟が終わる頃にはいつもの位置に戻らねば。

いつもの場所ですら、俺には過ぎるほどなのにー。


考えを払拭させながら、ノクシスは銀細工の露店で

足を止めたリィナに声を掛けた。

お祭りの為に着替え直したり、

こうしてアクセサリーに目移りしてしまう姿は、

やはり女性だな、と感じる。


ノクシス「ー何か気になるものでも?」


リィナ「あ、すみません…、

お待たせさせてしまって……。

…これ素敵だな、と思って…。」


ノクシス「これは…… 御守り?」


リィナが見ていたのは銀細工の装飾が光る、

チャーム付きの御守りだった。

ーてっきり、装飾品の類だと思っていたら……。


リィナ「はい、小ぶりでいいなぁと思いまして…、

でも……。」


リィナは店先に並ぶ御守りに

腰を曲げ、凝視する。


リィナ「ーどのご加護が良いかと思って……。

無病息災? 開運…? 厄除け… いっそ金運……!?

……良縁成就…はまだ早い…かな……。」


その余りにも真剣な眼差しに

ノクシスは目を見開いた。

そしてふとー胸の奥が緩んだ。


ノクシス「ー……ふっ…。」


リィナ「え!? なんですか!?

……ノクシスさん… 笑って…。」


ノクシス「も、申し訳ありません……。リィナ様も…

いえ、リィナ様でも欲張られることがあるのかと

思いまして……。」


リィナ「え、えぇ〜〜〜?」


混乱で赤くなるリィナを見て、

ノクシスはさらに肩を震わせた。


(ー俺が。)


緩む口元を抑えながら、

ぱたぱたと手を上下させるリィナを見て、思う。


俺が今、あなたの傍から離れ難いと、

欲張ってしまうように…

この方にもたくさんの願いがあるのだ…。


〝人〟として自由であり、自然なことだ。

ーなんて愛おしい…。


リィナ「…ノクシスさん?」


ノクシス「失礼しました。ーそうですね…。

リィナ様にならー。」


淡い灯篭の光に銀細工が揺れる。

ノクシスは並ぶ御守りを見比べ、その一つをそっと

取った。


ノクシス「これなんかいかがでしょう…。」


リィナ「ーわ… 可愛い……。」


「 花と月」が刻まれた銀の御守りが、リィナの掌で

やわらかく輝く。


ノクシス「御加護は〝大成祈願〟のようですが…

花には魔除けにも、愛を捧げる際にも用いられます。

月は増長と回復の力を持つ……。

きっとリィナ様を、優しく癒して下さいます。」


リィナ「素敵です…。わたし、これにします。」


選んでもらった御守りを

大切そうに両手で包み込んで微笑むその姿に、

ノクシスの胸はまた静かに熱を帯びる。


ノクシス「はい…。お役に立てて良かったです…。」


陽が沈みはじめ、職人市にぽつぽつと灯篭の火が灯る。

昼間は虹色に漂っていた精霊たちが、夕映えと灯篭の

光をまとって宝石のように煌めき、

二人の周りを静かに揺れる。


リィナ「では、ノクシスさんはこれでしょうか。」


ノクシス「え?」


ぼんやり横顔を眺めていたノクシスは、リィナから

差し出された御守りを慌てて掌に広げた。


リィナが悩んでいた、同じデザインのチャームの

御守り。

細工模様に「楯と翼」が施されている。


リィナ「御加護は〝帰還成就〟だそうです。

…えっと、わたし象徴などには詳しくないのですが……。

お仕事でどんなに遠くへ参られても、飛んで帰って

これるよう…! 願いを込めてます…! …わたしが。」


あれ? それでは御加護にならない?

段々自分の言ってることが分からなくなりながら、

リィナは小首を傾げながら小さく笑う。


ノクシス「ーーっっ……!!」


言葉が詰まる。

胸の奥が、熱で満たされていく。

次の息をどう吸えばいいのかも分からない。


ノクシス「リィナ様っ…!」


御守りを胸元で握りしめ、視線を上げた。

絞り出す言葉の先には、いつもの笑顔がある。


だがそれはいつもとは少しだけ違う。

ノクシスに〝だけ〟向けられた笑顔。

ノクシスの為だけの、笑顔。


分不相応なのは分かってる。

ーそんな想いすら抱いてはいけないことも。

だけど今確かに宿った心の炎は、どの神の祈術を

以ても消せない気がする。


ノクシス「〜…家宝に致します……!」


リィナ「だ、だめです! ちゃんと持ち歩いてください!?」


巡礼祭は夜祭へと顔を変えていく。

大広場の方で小太鼓の音が加わり、

輪舞の始まりを告げた。

二つの長い影は、また揃って歩き出す。


その手の中にお揃いの御守りが

いつまでもいつまでも輝いていたー。



戦乙女(ヴァルキリー)」は主人公の選択の数だけ

エンディングを作れるので…。ノクシスデート回みたいなものを。(難しかった(^^;

折角六芒星を象ってる世界ですから、各街を訪れてみたくなるように、、頑張りました…。


「ノクシス」の名付けには、彼を表す〝ナイト〟を

入れたのがミソですwww


ーあ!今更ですが、、私、メモ帳みたいなとこに

だーーーっと書いてコピーand貼っ付けしているので…… 色々と読みにくい段落は堪忍ぇ;;

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