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日常ワンシーン❶夕暮れの市場


夕暮れの市場は人々で賑わい、香草の匂いと

焼きたてのパンの香りが食欲を掻き立てる。

そんな人々が慌ただしく夕食の準備に追われる中、リィナはそっと後ろを振り返る。


リィナ「あの…、ノクシスさん…。夕食の買い出しまでも護衛して頂かなくても……。」


すぐ後ろを歩く聖堂騎士は、相変わらず

背筋を伸ばし、恐縮に縮こまる主をしっかりと

見据えた。


ノクシス「そうは参りません。危険とは

いつどこで起こりうるか分からないもの。

ーあなた様をお護りするは俺の天命です。」


リィナ「〜〜〜。」


その声色も視線も余りに真っ直ぐで、リィナの頬は夕暮れに紛れながら赤くなる。


(ノクシスさんて……。そういうこと素で言ってて

恥ずかしくならないのかな……。

わたしの方が照れちゃうよ…。)


肩をすくめると、純白のローブにリィナの顔が

少し隠れ、ふんわりと長い髪が風に優しく揺れる。そんな気恥しそうなリィナの仕草を何一つ

見落とすまいと、ノクシスは横顔を見つめた。


(ー相変わらず。)


謙虚な方だ。

王命として護衛を任されてなお、

リィナは一度たりともそれを“命令”として

振る舞わない。


だがそれは、ノクシスが頼りないからだとか

そういう理由でないことは、常々リィナを

見ていれば分かる。

ノクシスは深く心に思う。


(リィナ様をお護りするのは俺の役目だ。)


そう。幼き頃より夢で焦がれた

戦乙女(ワルキューレ)〟。

今は俺が、俺だけが彼女を護り、傍らに立つことを許されている。ーなんと光栄だろう。


リィナ「ーわぁ、今日のお野菜は瑞々しいですねぇ。ノクシスさん、何か食べたいものはありますか?」


市場に並ぶ色とりどりの野菜に心が踊ったような

リィナがノクシスに、にっこりと微笑みかけた。

いつの間にかリィナの中では〝今日の夕飯は

ノクシスと一緒に〟となっていたようだったが、

そこには敢えて突っ込まなかった。

ただただ優しく、可憐な笑顔で傍らの自分を

求めてくれている。ーーなんて特権なのだろう。


ノクシスは僅か口元を緩ませながら一歩、

リィナへの距離を縮めたー その時だった。



「……なんだよ、こんなとこにもくっ付いて来てんのかよ。」


低い声が人混みを割った。

ノクシスの足が止まる。


リィナ「ゼル!」


黒い外套を肩に掛け、

夕暮れの光を切るような鋭い視線で

こちらに歩いてくる。

少し驚いたように瞳を丸めていたリィナだったが、声の主を認めると、嬉しそうに小走りで近付いた。


リィナ「珍しいね、市場に来るなんて。ゼルも夕食の準備?」


籠を両手で持ちながら、

にこにことゼルディウスを見上げる。

その無垢さは他意が無さ過ぎて

ゼルディウスはため息を吐きそうになる。

だが、リィナの笑顔には少し耳を赤らめながら、

ゼルディウスはいつものように皮肉る。


ゼルディウス「誰が自炊なんかするかよ。俺はな、今ぐらいの時間に来りゃ、タダ飯にありつけると

思ってだなー。」


リィナ「わたしと夕食しようと思って来てくれたの?」


ゼルディウス「ー! ……。」


リィナ「嬉しい。ありがとう。」


穴を突いた事に気付かぬまま、

リィナは赤く固まるゼルディウスに

益々顔を綻ばせた。

その様子に慎重に一歩を取ろうとしていたノクシスが、慌てて入った。


ノクシス「お待ち下さい、リィナ様。

こんな浮浪者と食事など!」


ゼルディウス「誰が浮浪者だ、このストーカー騎士紛いが。」


ノクシス「ストーカーではない。俺はリィナ様の

護衛だ。」


ゼルディウス「護衛なら場所と距離弁えろっつってんだよ、近ぇんだよ。つーか邪魔すんな、帰れ。」


ノクシス「帰るのは貴様だ、ゼルディウス。

リィナ様の傍は俺の場所。ー食事も、俺が先に

お誘い頂いた。」


ゼルディウス「はァァ!!? それこそ距離感バグってんだろ!!」


リィナを挟んだ言い合いが

火花を散らし、市場の喧騒に紛れながらも

ヒートアップしていく。リィナは頭上の2人を

交互に見上げながら胸元で手を振った。


リィナ「あ、あぁあの、お二人共、喧嘩はっ…。…余計にお腹空いちゃいますよ?」


二人は睨みを効かせながらも、リィナの声には反応し、言葉を噤んだ。


落ち着きを取り戻してくれた二人に

肩を撫で下ろすと、籠を持直しリィナは気合いを

入れた。


リィナ「ーよし! お二人をおもてなし出来るよう、今日は腕によりをかけなければいけませんね!」


ゼルディウス「!? ちょっと待てリィナ! 誰もコイツと飯食うなんて言ってねぇ!!」


ノクシス「リィナ様! もっとお立場を重んじ下さい!!」


ゼルディウス「なんだと、てめぇはさっきからーー。」


リィナ「…………。」


何故か呆気なく…、言い争いは

元に戻ってしまった。

リィナは少しため息混じりに夕日を仰いだが、

口元には笑みが浮かんでいた。


ーーケンカは困るけど。

でも、こうして二人が傍にいてくれる日常が

わたしは好きだな…。


市場の喧騒はまだもう少し続く。

屋台に灯された明かりが、一つ、また一つと

増えていく。

賑やかに一日が過ぎていく幸せを、

リィナはゆっくり噛み締めた。


……なんか大体の雰囲気掴めたら上々。。

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