南宋末期の英雄:孟珙④
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1220年(興定4年)、孟珙は忠順軍の本陣で地図を広げていた。北方では、隣国である金朝の将・武仙が恒山公に封じられ、十の州県を治める重職に就いたという報が届いていた。
「武仙……かつては剛勇の将と聞いたが、今はどう動くか」
孟珙は地図の中山を指さしながら、部下の王堅に語りかけた。
「将軍、武仙は民を思う心を持つと聞きます。もし彼が道を誤れば、民が苦しむことになります」
王堅の言葉に、孟珙は静かに頷いた。
「そうだ。武仙が剣を振るう先に、民の命がある。我らはその命を守るために戦っている」
その頃、真定では武仙が苦悩の末に決断を下していた。モンゴル軍の圧力が強まり、民の避難もままならない状況だった。
「このまま戦えば、民は巻き込まれる……」
武仙は甲冑を脱ぎ、剣を両手で捧げた。その姿は、まるで命を差し出す覚悟のようだった。
「史天倪殿、我が命をもって誠意を示す。民を守るため、降伏いたす」
史天倪はその姿に目を見張った。
「武仙よ……その覚悟、偽りなき忠義と見た。副官として迎えよう」
その報が南宋にも届いたとき、孟珙は沈黙の中でその知らせを聞いた。
「武仙が……降ったか」
王堅が言った。
「将軍、武仙は民を守るために剣を置いたのです。これは裏切りではなく、忠義の形では?」
孟珙はしばらく考えた後、静かに語った。
「忠義とは、剣を振るうことだけではない。民の命を守るために剣を置くこともまた、武人の道だ」
その夜、孟珙は父・孟宗政と語り合った。
「父上、武仙の決断をどう思われますか?」
孟宗政は杯を傾けながら答えた。
「武仙は苦しんだであろうな。だが、民を守るために剣を捧げた。それは岳飛殿の志にも通じる」
「……ならば、我らもその志を胸に進むべきですね」
「そうだ、珙。汝は岳飛の魂を継ぐ者。剣を振るうときも、置くときも、民を忘れるな」
孟珙は深く頭を下げた。
「父上、私はこの命を、民のために使います。剣はただの武器ではない。志を示すものです」
その言葉に、孟宗政は目を細めた。
「よくぞ言った。汝こそ、将門の虎子だ」
──こうして孟珙は、武仙の決断を胸に刻み、戦場に立ち続けた。剣を振るう者として、そして民を守る者として。忠義とは何かを問い続けながら、彼の歩みは南宋の希望となっていくのであった。
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1225年(正大2年)、孟珙は忠順軍の本陣で、地図を見つめていた。北方の衛州にて、かつてモンゴルに降った金朝の将・武仙が、突如として反旗を翻したという報が届いたのだ。
「武仙が……史天倪を討ったか」
孟珙の声は低く、しかしその瞳は鋭く光っていた。傍らにいた王堅が口を開いた。
「将軍、武仙はかつて民を守るために降伏した男です。だが今、その民が苦しむ姿を見て、再び剣を取った。これは裏切りでしょうか?忠義でしょうか?」
孟珙はしばらく黙っていたが、やがて静かに語った。
「……忠義とは、時に剣を置き、時に剣を振るうもの。我らにその判断はできぬ。
武仙の決断は、命を賭した誓いだ。だが、史天倪を討ったその夜、彼の胸にはどれほどの苦悩があっただろうか」
その夜、孟珙は父・孟宗政と語り合った。焚き火の前で、二人は静かに盃を交わしていた。
「父上、武仙の行動をどう思われますか?」
孟宗政は盃を見つめながら答えた。
「武仙は、かつて我らの敵であった。だが、民を守るために剣を捧げ、そして再び民のために剣を振るった。それは、岳飛殿の志にも通じる」
「……ならば、我らもその志を胸に進むべきですね」
「そうだ、珙。汝は岳飛の魂を継ぐ者。剣を振るうときも、置くときも、民を忘れるな」
孟珙は深く頭を下げた。
「父上、私はこの命を、民のために使います。剣はただの武器ではない。志を示すものです」
その頃、衛州では武仙が密夜に史天倪を討ち、金朝への帰順を宣言していた。彼の軍は再び抗戦の旗を掲げ、民衆は歓声を上げた。
「我が剣は、民のために振るう!」
武仙の叫びは、夜空に響いた。
その報が南宋にも届いたとき、孟珙は兵たちに語りかけた。
「武仙は、かつて敵であった。だが今、彼は民のために剣を振るっている。我らもまた、民を守るために剣を取る者。敵味方を越えて、志を持つ者こそ、真の武人だ」
兵たちは拳を握りしめ、声を揃えた。
「忠義のために、命を懸ける!」
──こうして孟珙は、武仙の決起を胸に刻み、戦場に立ち続けた。剣を振るう者として、そして民を守る者として。忠義とは何かを問い続けながら、彼の歩みは南宋の希望となっていくのであった。
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1231年(正大8年)12月。冷たい雪が降りしきる中、孟珙は忠順軍の本陣で報告書を見つめていた。金朝の将・武仙が鄧州で金軍と合流し、モンゴル軍の首都攻撃を阻止しようとしているという知らせだった。
「武仙が……再び立ち上がったか」
孟珙は静かに呟いた。かつて敵として剣を交えた男が、今また民のために剣を振るっている。その姿に、かつての岳飛の影を重ねずにはいられなかった。
そこへ、部下の王堅が駆け込んできた。
「将軍、武仙が雪の中で夜襲を敢行し、モンゴル軍の進軍を一時止めたとのことです。民衆は彼を『再起の将』と讃えているとか」
孟珙は目を細め、雪の舞う空を見上げた。
「武仙……あの男に、まだ忠義の炎が残っていたか」
王堅は少し戸惑いながらも、言葉を続けた。
「敵であった者を讃えるのは、奇妙に思われるかもしれませんが……私は、武仙の行動に心を打たれました。民のために剣を振るう者に、敵も味方もないのでは?」
孟珙はしばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「王堅、お前の言葉は正しい。忠義とは、国に仕えるだけではない。民を守るために命を懸けることこそ、真の忠義だ」
その夜、孟珙は父・孟宗政と焚き火を囲みながら語り合った。
「父上、武仙の決起をどう思われますか?」
孟宗政は火の揺らめきを見つめながら答えた。
「武仙は、かつて降伏した男だ。だが、民の苦しみを見て再び剣を取った。その心は、岳飛殿にも通じる。忠義とは、過去を悔い、未来を守ることだ」
「……ならば、我らもその志を胸に進むべきですね」
「そうだ、珙。汝は岳飛の魂を継ぐ者。剣を振るうときも、置くときも、民を忘れるな」
孟珙は深く頭を下げた。
「父上、私はこの命を、民のために使います。剣はただの武器ではない。志を示すものです」
その頃、鄧州では武仙が雪の中、兵を鼓舞していた。
「我らが守るは、金の名ではない!民の命だ!」
兵士たちは雪に濡れながらも、武仙の言葉に胸を打たれ、剣を掲げた。
「民のために戦うぞ!」
夜襲は成功し、モンゴル軍の進軍は一時止まった。民衆は武仙の名を讃え、「再起の将」と呼んだ。
その報が南宋にも届いたとき、孟珙は兵たちに語りかけた。
「武仙は、かつて敵であった。だが今、彼は民のために剣を振るっている。我らもまた、民を守るために剣を取る者。敵味方を越えて、志を持つ者こそ、真の武人だ」
兵たちは拳を握りしめ、声を揃えた。
「忠義のために、命を懸ける!」
──こうして孟珙は、武仙の決起を胸に刻み、戦場に立ち続けた。剣を振るう者として、そして民を守る者として。忠義とは何かを問い続けながら、彼の歩みは南宋の希望となっていくのであった。




