初代領主ヘルムート・グランツの治世②
グランツ子爵領 タルマール山
5人の狩人がタルマール山の麓まで来ていた。
彼らは、最近できた村の狩人の集団でまだ名付けられてまもないタルマール山にやってきた。
タルマール山は、辺境の前人未到の地であるグランツ子爵領にある山で標高:2500m〜2700mあるとされている。
名前の由来のタルマールは、ルグ王の右腕であった亡きタルマール公爵の名から来ており、変わり者の貴族は、タルマール家の一族である。
狩猟用のトラップを設置していると5人のうちの1人が何かを発見したのか叫んでいる。
「おい、こっちに来てくれ!」
「なんだなんだ?」と仲間が集まる。
そこには、赤茶色の岩が露出していた。
縞状鉄鉱床である。
この発見によりグランツは鉄鉱床を手に入れる。
狩人から村長に話が行き、辺境での鉱床発見はすぐ様王都に伝わった。子爵は王都の学者を呼び寄せ調査させた。確実に鉄鉱床だと判明したと聞いたヘルムートは、喜んだ勢いで椅子から転げ落ちたという。
「子爵様!大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫。大丈夫。」
起き上がるヘルムート。
「素晴らしい、こんなに嬉しいことはないね。でも、困ったね。人が足らない。急いで集めなくてはいけないね。」
「はい、すぐに募集をかけましょう!」
「それと商人達にもすぐ連絡を入れてくれ、すぐ飛びつくはずだよ」
わかりましたと頷くとヘレナ。
王都や近隣の都市に早馬を送ると商人達は、数日後には、商談のために集まってきた。
普段は、閑散としている子爵邸前には商人達がテントを張り賑わっている。
このタルマール山の更に北の山を超えた先では、まだ新たな紛争が起きており、北への物流路は王都より更に北に進み、大回りをしなくてはいけない。だが鉱山から生まれる利益や経済効果で街道がせいびされたら、王都や北の都市を経由せずに物資を送れることになる。辺境の鉱山は、十分に魅力的な話であった。
「商人達も節操がないな、すぐ来てくれるのは嬉しいが。」
この鉱山開発に参入した者が、一気に有利となる。新興貴族は御し易いとも考えているだろうと考えるヘルムート。
メイドが、商人達に対応している。
準備が整ったのかコンコン鳴るとドアが開き、細身で綺麗な女商人が入室してきた。
「ヘルムート・グランツ子爵閣下、私はロズマイヤー商会のロルカ・ロズマイヤーと申します。この度は、鉄鉱床の発見おめでとうございます。」
深々とお辞儀をする女性。
「ありがとう、どうぞお座りになって」
お互い椅子に座って、向き合う。
「それで用件は何かな?」
「はい、早い話になりますがヘルムート・グランツ子爵領の流通をロズマイヤー商会に任せて頂けませんか?」
ずばりと本題に入ってきたなと思うヘルムート。
「簡単に、"はい"とは返答できない。そもそも貴女の事を私は知らない。」
「そうですわね、確かに仰る通りです。ヘレナ、こっちにきてくれない?」
彼女は後ろのドアに向かってヘレナを呼ぶ。
「失礼します、ロルカ久しぶりね。」
ニコニコと顔を見合わせる2人。
「君たち、知り合いなのかい?」
頷くヘレナ。
「はい。彼女とは幼馴染です。信頼できる方です。」
「なるほど、それだけで彼女を信頼しろと?」
「まだあります、今までのグランツ子爵領への物資販売、運搬はロズマイヤー商会がやってくれていました。」
「そうなのか、初耳だ。」
「子爵様、グランツ子爵領への物資運搬は利益にならないのです。理由は、辺境であるが故の立地悪さです。」
確かにそうだと思ったヘルムート。
「今まで赤字でもロルカはグランツ子爵領に物資を運んできてくれたんです。それに比べて他の商人達は、子爵様から権益を掠め取ろうと必死です。」
少し考え込みながら、
「うん、わかった。ロルカさんよろしく頼みますね」
「ありがとうございます!」
深々と頭を下げるヘレナとロルカ。
この日より、ロルカ商会によるグランツ子爵領への大規模な投資が行われた。
仕事の関係で、投稿が遅れています。
少しずつ更新して行きますのでよろしくお願いします。