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初代領主ヘルムート・グランツの治世①

人々の生活、文化、彼らの世界をお伝えします。

資料は、豊富にあり読み解くには膨大な時間が掛かろうとしています。少しだけ覗いて見ましょう。

小さな領主から始まる物語、1人の行動が連鎖し、文化と文明、進化、停滞、衰退と繰り返し行きます。

まずは、最初の話をどうぞ。

まず、彼の日記と当時の資料を噛み砕いて紹介しよう。


辺境における紛争を平定した功績によりヘルムートはルグ王から子爵位とグランツの家名、辺境の広大な領地を賜った。広大な領地、王国の端にある地域でこれまで開拓はあまり進んでいない。険しい山々に囲まれており、隣接する国はないと言われている。


平民出でありながら男爵ではなく子爵となる。

この異例な叙勲には、前線視察中のルグ王を敵の襲撃から助けたためこの様な叙勲となった。たがこれだけが理由ではなくルグ王の気まぐれでなったともなっている。これはルグ暦58年のことである。


昼過ぎの晴れた青空を窓からヘルムート・グランツは眺めながら呟いた。

「とりあえず屋敷への荷運びも終わった、一息つけるだろう。」


元々、変わり者の貴族の避暑地だった屋敷で少し大きめの一軒家といったところだろうか、私と使用人の数人で住むには問題ない。

独り身の自分として満足な広さだ。


メイドのヘレナ嬢が書斎に入ってきた。

「子爵様、軽くご昼食を食堂にご用意致しました。お召し上がりください。」

「わかった、今行くよ」

食堂へと向かう。


シンプルな木製テーブルには、ナイフとフォーク、スープとパンが用意されている。

子爵といっても新興貴族で資金も余りない。質素な食事になるのは当然だ。

スープにパンを付けて食べる。パンが中々硬く味も絶妙だがスープは美味い。ヘレナ嬢を雇って正解だ。

ヘレナ嬢は、王都ルグラシアで雇ったメイドで高身長で180cmもある。元々男爵家の長女でメイドとして出されたようだ。貴族社会ではよくありことで、ある程度の礼儀作法と計算ができるメイドだ。


「ご馳走様でした。」と食事が終わり、窓際の古い椅子に腰掛ける。屋敷の窓から見える深い緑の森林から風が吹いている。清々しい昼休みだ。


森林をみて思うのは、不安でしたかない。この先どうしていくか、資金の少なさに不安がよぎる。広大な領地とはいえ、辺境であることは間違いなく果てしない森林が広がるばかりである。


領民は、300人弱いるかいないか。

辺境に到着するまでに募った領民はこれだけだ。

あまりにも少なく、主要産業となるのは林業である。林業も始めたばかり、領民の生活は非常に貧しいものである。


これからの方針を話し合う必要がある。領民の生活を守るのが領主の責任である。とりあえず明日、領民の代表者と話し合いを設けよう。

「おーい、ヘレナ!ちょっと来てくれないか」

「はい、子爵様。御用はなんでしょうか?」

ヘレナは隣の部屋にいた様ですぐに来てくれた。

「ヘレナ、明日領民の代表者を呼んでくれ。今後の領地について話し合いたいのでね」

「わかりました、お呼び致します。いつ頃にお呼び致しましょうか。」

「そうだね、昼過ぎに、今頃かな」

「わかりました、手配致します。」


これでいいかな領地運営なんて初めてだからな。計算できる人を雇ったり、兵を募集したり、やる事が沢山だ。


次の日、領民の代表者が訪ねてきた。

玄関ホールへ行くと初老の白髪の男性が膝付いて待っていた。

「ヘルムート・グランツ子爵閣下、お初にお目にかかります。領民代表のカール・ブルムです。以後お見知りおきを...」


「あー、えっと、私はまだ子爵になったばかりで...えー、あんまり堅っ苦しいの慣れないです。まぁ、ともかくよろしくお願いします...」


カール・ブルムは驚いた様子でいる、目の前にいる貴族が今まで会ってきた貴族とは全く異なる態度だ。若い貴族はもっと欲深く、偉そうでこんな態度は取らない、だからか貴族の威厳は感じらない。


「子爵閣下、早速でございますが領民よりお願いがあります。」

すぐの進言にヘルムートも驚き気味で応えた。

「なんだい?」


「街道についてでございます。ヘルムート子爵領は、開拓を始めたばかりで子爵閣下もご存知の通り、道も道と呼べるか怪しく我々もやっとの思いでこちらまで来れました。物資も限られております、今後の発展を考え街道の整備をお願い致します。」


「確かにそうだね、なんとか今の物資でやりくりしてはいるがいつかは商人が来ないと不便だし、私も王都に向かうのに畦道を通るのは勘弁だ。まず、街道の整備から始めましょうか」


「ありがとうございます。」


「給金を出すから領民を集めてください。ちなみに建築や土木の専門家はいるのかな?」


「おります、先の紛争で廃村になった村の者で王城の建築に携わった者で歳は私と近いですが腕はまだ確かです。」

それは好都合。

「では、その方を連れて来てください。詳細はまた後日に」


カール・ブルムは深々と頭を下げると退室した。


後日、カール・ブルムと堀の深い老人が訪ねてきた。

「子爵閣下、おはようございます。となりにおります者が建築技士のベリック・カルペンです。」

カール・ブルムによる紹介が終わると白髪に古い王国軍の服を着た老人は、深々と頭を下げた。


「お初にお目にかかります。ベリック・カルペンにございます。王国に繁栄を。」


王国に繁栄を。この言葉は王国兵士が宣誓する際や式典、公式の場などにおける兵士階級の挨拶である。王国に永く仕えたのだろう、はっきりとした言葉で力強く発している。年配だから不安であったが大丈夫そうだ。


「よろしく、早速だが頼みたいことがある。事前に聞いていると思うが、領地の街道整備を頼みたい。この領地は、開拓が始まったばかりで手付かずだ。

街道は、領地の発展に大いに役立つはずだ。」


「わかりました。子爵様、急いで取り掛かります。」

うむ、と返事をし、2人を退出させた。


これで街道が整備できる。

資材班と建築班に分かれて、けもの道を開拓する。

ベリックは、領民30人を率いて作業に向かった。


ヘレナには、工事見積もりや事務処理を任せた。


草を刈り、叩き慣らす。

王国のような石畳の舗装路は小さな領地では、建設不可能だ。建設できたとしても莫大な資金が必要となる。街道は、王国の直轄地か王家の都市以外はほぼ全てがその領地の領主の判断により整備される。

もう少し良い土地はなかったのかと思うヘルムートであった。

9ヶ月後、工事は進み領主の館と隣町に続く街道に繋がる様に整備が終わった。

領民の食事は、畑や狩猟と小規模の漁業、たまに来る商人からの購入など不安定且つ、小規模なもので時折、切迫することもあった。

しかし、街道が整備されたため、今まで木に遮れていた道は馬車が通り、円滑に領地へと来れる様になった。じきに食料事情も解決へと向かうだろう。

だが領地の経済活動が活発になると資金の流出が進み、大げさに言っても赤字で領民も私も路頭に迷うのは間違いない。

独自の産業、資源がなければ領地は潰れてしまう。

不安が脳裏によぎり、如何にして維持するかに悩むヘルムート。


「子爵様、子爵様!」

顔を覗き込むヘレナ。 

はっとした様子で、

「ああ、すみまない。考えごとをしていたんだ。」


「そうでしたか、お邪魔してしまいましたね」

「大丈夫、大丈夫。どうしたのかな?」

「子爵様の資金なのですが...なんといいますか...」

「まさか、そのまさか?」

「あとこのままだと1年以内に底をついてしまいます。」

「良かった、まだ1年はなんとかなるのか」

「はい。ですがどうにか黒字にしなくてはなりません。領民も路銀は少なく、ある程度子爵様から許されていたので領民に貸しておりましたが借入も増え、返済は滞りつつあります。申し訳ありません。」

謝るヘレナ。

「いや、いいんだ。全部任せていた私が悪い。君に落ち度はないよ。街道もどうにかなったし、そろそろどうするか考えていたんだ。」

何も決まっていないけどね、と心の中で思うヘルムート。


皆様、初めまして!

レキエスタと申します。

数多の人それぞれ人生を見せていきたいと思います。

この世界を紹介、物語、年表や設定が濃いです。

よろしくお願いします。

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