表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編小説(ゆんちゃんのお話)

たまごを買いに

作者: 歌池 聡


※『第5回なろうラジオ大賞』参加作品です。


 今日のゆんちゃんは、ママと近所のスーパーでお買い物。珍しく、かずや兄ちゃんもいっしょです。


 ──最近なぜか、かずや兄ちゃんはママとのお買い物に行きたがらないんだけど、今日のママは気迫がちがいました。


「ダメよ! 特売で『玉子1パック158円、おひとり様1パック限り』なのよ。3人で行ったら3パックも買えるじゃない!」


 こういう時のママにはさからえません。なので、かずや兄ちゃんも文句を言いながらついてきたのです。






 スーパーについたら、まっ先にたまご売り場へ。


 ちょうどお店のひとが、たまごパックがいっぱいのったコンテナを重そうに押してきました。まわりの人たちがわっとあつまって、店員さんが手をはなすのを今か今かと待っています。


 その時ゆんちゃんは、その中によく知っている人を見つけました。あれはおとなりの──。


「あ、あんなちゃんママだ! こんにちは!」


 ゆんちゃんが元気にごあいさつすると、あんなちゃんママが何だかびっくりしたようにこっちを向きました。


「あ、ああ、ゆんちゃん、こんにちは」

「──奥さん、どうもー」


 ママもゆんちゃんの横でごあいさつします。すっごく笑顔なんだけど──何だかちょっとこわいのは気のせいかな?


「あら、今日はいい玉子が出てますわね」


 そう言ってママが手に取ったのは、なぜか特売のじゃなくて、となりに並べられた茶色のお高いたまごパック1個だけです。


 あれ、ママ、買うのはそっちじゃないよ。


 ゆんちゃんが教えてあげようとしたら、うしろからかずや兄ちゃんがゆんちゃんの服をひっぱってきました。小さく首を横にふって『何も言うな』という顔つきです。


「まあ、本当ね」


 あんなちゃんママも同じたまごを取ってかごに入れます。


『それじゃ、失礼しますね』


 ママたちはていねいにあいさつすると、くるりとせなかを向けて、早足で別々の売り場に行ってしまいました。






 ──ふたりのすがたが見えなくなったので、ゆんちゃんはかずや兄ちゃんに聞いてみました。


「ね、何でママは特売のたまごを取らなかったの?」


 かずや兄ちゃんが、ため息をつきました。


「あのなあ、ああいう時は気づかないふりをしないとダメなんだよ。

 誰だって、特売目当てでセコいことしてるなんて、知られたくないんだからさ。

 あれはたぶん、二人ともお互いに見られないように、あとでこっそり安いのと取り替えて買って帰るんじゃないかな」


「ふうん。──おとなって、何だかいろいろめんどくさいんだね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
卵、また値上がりしましたものね。しかも、お一家族様パックとかで、家族総出作戦もできなくなるという世知辛さ。ふう。 ママたち、あとで特売品に取り換えることが出来たでしょうか? お取替え終了後、レジでまた…
[良い点]  たまご、値上がりしましたからね……。お兄ちゃんを連れて行くゆんちゃんママの気持ちがよくわかります。  それにしてもお兄ちゃん! よくわかっていますね。  ママたちはあとから無事に、取り替…
[良い点] 卵、今、高くなっちゃいましたもんねえ(って違う) ついつい見栄を張ってしまいましたが、またレジで鉢合わせしたりして(^_^;) それにしてもさすがおにいちゃん、世の中をよく知っています。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ