異世界アニメスタジオ!
ここで出てくるアニメーション制作とかの情報はGoogleで即席で得た物です。合ってるの確証なんかありません。本職の方が読むのは少々お見苦しいかもしれませんがよろしければどうぞ。
私はアニメが好きだ。勿論観たりするのも好きだが、それよりも作る方が好きだった。
アニメを作ることは仕事だったが、その仕事を私は遊びのようにこなした。
そう送れていた私の生活はおそらく幸せだっただろう。
恋人も居ないし、ずーっとスタジオで絵を描いていた生活だったけど、
私は幸せだった。
私は原画を描いていた。アニメ制作は好きで全行程をある程度はできるのだが、この作業が一番自分に向いていた。今、スケジュールは凄く押していた。
私はいつも以上にスタジオで原画を描いた。
かいて、めくり、かいて、めくり、かいて、めくり……。
少しずつ、少しずつ、違う絵を描いていった。
「お腹すいたなぁ」
私はカップ麺でも食べようと席を立とうとした。
しかし、私の身体は既に限界を迎えており、自分の作業台の上で倒れた。
「ミリーネ様……ミリーネ様!」
目が覚めると可愛いメイドがいた。10歳くらいだろうか。
「可愛いー!!ちょっと描かせてよ!紙紙……」
あれ?無い……。絶対に持ち歩いているのに。
そして、私はようやく気づいた。自分の手の綺麗さに。
純白。ツルツル。スベスベ。そして、幼い。
炭によって汚れに汚れた私の手はどこに行ったのだろうか。
まず、ここはどこだ?やけに豪華な建物。まるで貴族の屋敷の一室だ。
待て、まさか……。
「ねぇ、貴方!鏡ある?」
「か……鏡ですか?今、手鏡は持ち合わせてないのですが。洗面所にあるかと、あ、いえ、私が持ってきますね……あっちょっと!」
私は部屋を飛び出した。洗面所は何処だ?と探そうにも、この建物のことなんて知らないし、やけに広い!廊下だけでスタジオより広いだろう。
困惑していると、奥から胸の大きいお姉さんメイドが来た。
「あの!洗面所って何処ですか」
メイドさんは驚いて少し困った顔をしていた。
「ミリーネ様。敬語はおやめ下さい。あくまでも貴族なのですから、洗面所ですか?ええと……」
メイドさんに洗面所までの道を教えてもらい、私は向かった。
そして、私は鏡を見た。
「や……やっぱり」
サラサラとした金髪ロングヘアー。みずみずしい青の瞳。小さな胸。あのロリメイドと同じ10歳くらいだろうか?可愛らしい少女が鏡の中にいた。
「な、何だこの美少女!なんとうつくしう……」
「何してるんですかミリーネ様」
先程のロリメイドがゴミを見るような目でこっちを見ていた。
どうやら、私はやはり、異世界転生してしまったようだ。
私の名前はミリーネ・エメラルド
一応貴族らしい。メイドや執事もおり、the異世界貴族と言えるだろう。
このあたりはベルストベルク王国。貴族も沢山住んでいる王政の国だ。
王政と言っても王様はとても国民のことを思っており、いつしか民主主義になりそうかほどである。国民にはよく思われているがやはり王族(王様を除く)はあまりよく思ってはいなく、王族のなかではいつしか王を引き摺り落とそうと計画されているが国民の反乱が怖く、あまり進捗していないらしい。
こちらの世界は魔物もいて、魔法、剣有のやはりファンタジー異世界だ。魔法の種類は炎、水、電、治、光、闇、他、等がある。それぞれ階級がある。
「てか、ミリーネ様そんなこと忘れてしまっていたのですか?ちょっとお医者様呼んできますね」
「待って貴方の名前教えてよ」
「ミミスです。しっかり覚えてくださいね」
しばらく経ち、ミミスは医者を呼んでいた。
「異常はないですねぇー」
「本当ですかぁ」
「てか、ミミス。私に何があったの?」
「馬車に乗ってたら頭から落ちたんですよ」
その拍子に私に乗り替わったのだろうか。その元ミリーネの意識はいったい何処へいったのだろうか。しかし、そんなことを気にしてもしょうがない。とりあえず今は
異世界を楽しもう。
異世界転生して三日が経った。
「そういえば私って魔法使えるの?」
ミミスに聞いてみた。一回魔法使ってみたかったのだよね。
「はい、ミリーネ様は魔法の才がエメラルド家の中でもトップクラスでしたよ。一番得意なのは水の魔法でした」
「なるほど出してみよう」
「あっお待ちください外に出ましょう」
どうやら魔力が大きすぎて室内でやると大変なことになるらしい。
「それではどうぞ」
「よーしやるぞー」
私は手を伸ばし魔法を使ってみた。
スカ
「何で出ない!」
「詠唱しないとダメですよ、水よ」
ミミスの手からチョロチョロと水が出た。
「なんかおしっこみたいに出てるね」
「何言ってんですか。やってみてください」
再挑戦だ。私は手を伸ばす。
「水よ!!」
スカッ
「何で!?」
どうやら世の中あんまり優しくない。どうやら魔法の才があるのはミリーネ本人の意識であり、私には使えないようだ。
俺つえー系のようにそう甘くはいかないのかと気づいた。
私はベットで寝ながらそう考えた。
「ミリーネ、君はどうやって使ってたんだ?」
数日後、私はミミスと街に出た。一応護衛もつけている。過保護だなぁ
「西洋風な街だな、風景画を描いてみたい」
「何の話をしているのですか」
しかし、よく見ていると、ルネサンス風の芸術がかなり見られる。絵、音楽、立体作品。
「しかし、何でこの国はこんなに文化が盛んなんだ?」
「国王は文化が好きなんですよ、だからこうゆう国になったのです。文化祭もありますし」
文化祭。正式名称、ベルストベルク祭。一年に一回、秋に行われるものである。
この日は貴族、民、関係なく皆で文化を楽しもうという祭りだ。絵の展示や料理、音楽のコンサートなど様々なもので賑わう。
「ところでどのような作品にするか決めましたか?」
「え?私も出すの?」
そんなことがあったとは困った。どうやら母上から文化祭の出し物を命じられているようだ。私の作業台には萌えキャラの絵が沢山ある。(暇つぶしに描いた)これを全部出そうかな?
そうだ。あれを少し描いてみるか。
私は似た絵をどんどん描く。
「ミリーネ様。お茶です。なにしておられるのですか?」
「ミミス見てごらん」
私は紙をペラペラめくる。
「わぁ、凄い……絵が動いています」
私が紙をめくると女の子が剣を振る動作をする絵が動いていた。
「これはどのような魔法を?」
「魔力は使ってないよ。これはアニメーションって言って、少しずつ違う絵を描いてペラペラめくると目の錯覚によって動いて見えるんだ」
アニメーションの起源は明治時代くらいだ。(Google調べ)中世風のこの世界ならまだ存在していないはずだから、ミミスにいいものを見せれた。
「これを文化祭の作品にしたらどうですか?」
「確かに」
後日、書庫に入って、映像文化があるか調べてみた。すると、なんと、あるみたいだ。しかし、実写作品ばかりでアニメーションはまだ作られていないようだ。映像と言ってもカメラは存在せず、『撮影魔法』という魔法で撮影、映像データを保存し、そのデータをフィルムのようなものにして、映写機で映すらしい。
「かなり発展してるんだなぁ」
映写魔法があればそれをカメラにしたら、撮影台を使ってのアニメが作れる。パソコンがない時代のためかなり原始的な作りかたになるとおもって、アニメ自体はできると思うのだが、作るの大変そうだなぁ。
「この世界にすごい技術者はいないの?」
ミミスに相談してみた。マルチプレーンカメラを制作するためだ。
「ドワーフ族に頼んでみてはどうでしょうか。エメラルド家とはいい関係を結んでいますので」
「頼んどいて、これ設計図」
「了解しました」
撮影台が来る前に色々済ましておこうと脚本を考え、絵コンテを描いてみることにした。
「てか、人手がないなぁ、ミミスって絵描けるの?」
「嗜むくらいには」
「この絵にこの絵を綺麗に描いてみてよ」
私は絵コンテに簡単に描いた絵を指差し、原画紙を渡した。
「了解しました」
するとサラサラと描いていった。
「なんて才能!前世に欲しかったスタッフ!」
「ミリーネ様って時々意味の分からないことをおっしゃいますよね」
「とにかくミミス!一緒にアニメ作ってよ!」
ミミスは驚いていた。
「アニメってあの動く絵のことですか?まぁ命令ならいいですけど」
「命令?ならそうする」のようなノリで引き受けてくれた。優秀な人材のゲットである。
しかし、アニメを作るためにはもっと人材が必要だ。
背景、音楽、声優、その他諸々。
ここで、出来るだけ負担を少なくするため、五分程度のアニメを作ることにした。
「五分だけですか」
「舐めんなよミミス。五分でもすごいアニメを作ると結構大変なもんだよ」
シナリオは大体考えれた。五分なら戦闘アニメーションかな。
私は絵コンテを描き始めた。
まず、平原で、二人の剣を持った少女が向かい合って、そこから(物理的に)急接近。剣を交える。そこから細かい戦闘シーンが幾度となく描かれて決着!しかし、血は流れずに、背景は訓練所。二人の剣も木刀にさしかわり、模擬戦でした。というオチ。
これならば、戦闘シーンのアニメーションがメインとなって、アニメという文化があるのだ!と民衆に知れ渡せるという役割にとても合った作品となるだろう。
つまりここで凝るべきものは戦闘シーンだ。ここだけはどうやっても失敗できない。絵コンテ。頑張って描かなければ。
「ミミス。背景、塗り、等諸々……できる人って知ってる」
「背景というと景色を描いている人ですか?それならミリーネ様に知り合いがいたじゃないですか?」
いたんだ。
「案内して。忘れた」
「最低ですねミリーネ様」
最近ミミスが暴言を吐いてくる。傷つくなぁー。しかし、これはミミスとの距離が近づいたということであるともいう。私は彼女と使用人という関係ではなく友人となりたい節がある。まず、私は貴族や姫という柄でもないし。
というわけで明日。背景の絵師。ダムスと会うことになった。どうやら男らしい。
試しに彼から貰ったという絵を見せてもらった。
「素晴らしい絵だ!」
「そういえばミリーネ様。ある物が届いてましたよ」
何だろう。するとミミスは何かデッカイものを持ってきた。
「こ……これは……」
撮影台が届いた。この世界のカメラは中に『撮影魔法』の仕組みが組まれていて、魔力を注ぐと撮影可能になる。実際、写真でしか見たことがなかったため、これを見ると凄く興奮する。
「それにこんなのも届いております」
届いていたのはセルと作画紙だった。
「それにしてもこの巨体。どうやってつかうのですか?」
「えーと例えば、こんなふうに背景を描いて、セルの絵をここにセット。そしてこの状態で、背景を動かすとセルの絵が動いて見えるってわけ」
私は実際に描いたセルと背景を使って実演した。
「なるほど」
「で一枚ずつ撮影して、動画を作る」
「気が遠くなりそうです」
翌日、背景を描いてくれそうなええと誰だっけ。
と困った顔をしていたらミミスが
「ダムス様です」
と教えてくれた。面目ない。
ダムスの家は屋敷から徒歩十分あたりのところにある昨日にも行けた気がするのだが、
「お邪魔ー」
「どうもミリーネ様」
なかなかのいい男だ。どうやら彼と私の出会いは、前の文化祭らしい。今度、ミミスに詳しく聞いてみよう。
「ミリーネでいいよ」
「ああ、そうなの?ところで今度の文化祭の出し物なにか決めた?僕まだなんだよね」
「そこで相談なんだよ」
「ほう」
私はアニメ制作のことを話した。
「なるほど、動く絵、『アニメーション』の背景か……ところでそのアニメーションを実際に見せてくれないか」
「いいよ、一応持ってきといてよかったよ」
私は鞄から紙の束を取り出した。そして、ミミスに見せたのと同じアニメを見せた。
「すごい……本当に女の子が剣を振って動いているように見える。魔法……じゃないんだよね。魔力を感じない」
「こんな風になっているのですよ」
私は一枚一枚の絵をダムスに見せた。
「なるほど、少しずつ違う絵を描いてそれを流して見せることによって、動いているように見えるのか」
「その通りです」
素晴らしい目をお持ちだ。芸術家としてすごい。
「ところで頼みとは?」
「背景を頼みたいのです」
「つまりこの絵の後ろにつける絵ですか」
「はい、そして、スタジオに来てくれませんか?そこの方が話しやすいので」
私はダムスをスタジオに連れて来た。このスタジオは父上に借りている。「作品を作るための専用部屋が欲しい」と言ったら「いいだろう」と快くくれた。
ここには、私の机、ミミスの机、セルを描くための机、背景を描くための机とそして、撮影台。試写のためのスクリーンや収納棚等色々ある。いい部屋だ。
「何だ!この複雑な機械は」
ダムスは初めて撮影台を見た私のように興奮していた。
「それが撮影台です。まず、描いた背景を下に置き、このセルという物を固定します。そして背景を動かすと」
「セルというものが動いているように見えるな」
ダムスは腕を組み、私が言う前に説明を言い当てた。
「そして、これで何枚も撮影して」
「なるほど、その絵を連続で流して、動く絵の映像を作るのだな」
とても話が早くて助かる。
「是非やらせてくれ!面白そうだ!背景だけなんて言わずにセルも、撮影もやる!」
「一人でその負担は大変だよ」
さて、背景が決まった。しかし、次に音楽と撮影だ。セルとかは、どんどん素早く絵コンテを描き進めている私がやったら良いのだろうか。もうすぐ終わるし。
「そういえば文化祭まであと何日?」
私は作業中に気になってミミスに聞いてみた。
「あと三ヶ月です」
結構余裕がない。ミミスは驚異的なスピードで原画を一日100枚ペースで描いているが。しかし、あのスピードは何なのだ。絵コンテが追いつけない。
とにかく撮影係を決めなくては
「ミミス、繊細な作業が得意なメイドか執事っている?」
「私ですか?」
「君は原画担当だろ」
実際ミミスは繊細な作業は得意では思うが。
「ではちょっと集めてきます」と彼女はスタジオから出た。てか、アイツ……メイドの仕事は大丈夫なのか?
ダムスがカリカリと何かを描いている姿が目に入った。背景かと思ったら違った。
「なに描いてるの?」
「このアニメのキャラクターデザインがなかなか好みで、描いて画集にしようとおもってたんだよ」
何してんだ。そんなことより仕事してくれ。
そういえばダムスとはいつからタメで話していただろうか。と思ったが頭を使うのが面倒なので考えるのをやめた。
数時間後
「完成だ!!」
「背景が?」
「画集が」
とダムスと話しているとノックがした。
「失礼します」
ミミスだ。別にノックなんかしなくてもいいのに。
「素晴らしいスタジオですね」
どうやら優秀な人材を連れて来たようだ。
「みなさんにはこの道具を使ってほしいんですよ」
ミミスが説明していく。
「興味深いですねー」
「面白そう」
「この透明なものは何ですか?」
どうやら連れて来たのは三人のようだ。
「あーそれはセルと言って……」
私は疑問を持って来た人に解説する。
「ところでミリーネ様。このスタジオの名前は?」
と一人のメイドが聞いてきた。
「名前?名前ー。『ミミススタジオ株式会社』かな?」
「私はいつの間に起業したのですか」
的確なツッコミだ。芸人として売れそうだ。
「普通にエメラルド家にあるので『エメラルドスタジオ』でいいんじゃないか?」
とダムスが言ってきた。
「いやぁにしてもいい画集が出来たなぁ」
「後で私のキャラクター画集を上げようか?部屋にあるし」
彼もすっかりオタクみたいになってしまった……。
ダムスの命名。『エメラルドスタジオ』は新スタッフ。メル(メイド)レイル(執事)ナビス(メイド)を取り入れた。
メルはセルを描いてくれて、他二人は撮影だ。
「アニメーションの人手はこれで十分かな?」
「早く画集をくれ!!」
「うるぅさい!!やらねぇぞ!ボケェ!」
私はダムスを脅して黙らせた。
さぁ、後は音である。声優はこのアニメならいらないと思い。必要音源は剣の音。土の音。足音。あと、音楽だろうか。
音楽以外は以外に容易で集まるだろう。
どうやら『録音魔法』とやらがあるらしいのだが。
「私って使えるのかな」
と私が呟くとミミスは
「以前のミリーネ様でしたら使えたでしょうが今のミリーネ様は絶望的にないので」
「なんて事言ってんだ」
試してみよう。
てれれーーー↑てれれれーーーーん↓
「何してるんです?ミリーネ様」
「録音魔法が使えるか試してたんだよ」
「結果は」
「失敗……」
ガン◯ムのタイトルBGMは再生されなかった。
私は凹んでいた。机で頭を抱えていた。
「ミリーネ様。絵コンテ早くしてくださいね」
はっ!そうだ!音以前にまだ絵コンテ作業が終わってなかった。
私は気になって、ミミスの作業台にある原画の作業効率を調べた。
「マジか。追いついてやがる」
「というわけでミリーネ様。私はやることがないので、ミリーネ様は絵コンテ作業に集中していてください。録音魔法を使える人材と音楽は私が探しておきます」
なんて有能なんだこの子。
視点は私。ミミスに変えさせていただきます。読者の皆様以後お見知りおきを。
ミリーネ様は絵コンテ作業をサボっていたので現在スタジオにて作業中でございます。
私の現在の役割は原画制作ではなく、人材派遣。もう慣れっこです。二回もやっているので、いや、ダムス様はミリーネ様がやったのでしょうか?(派遣)
とにかくダダスト様(ミリーネ様の父上)に聞いてみることにしましょう。
ダダスト様は芸術家仲間がかなり多くダムス様も過去にダダスト様から文化祭で知り合った方なのです。
「録音魔法魔法を使える者と白熱した音楽が奏でられる者が必要?」
「はい。ミリーネ様の芸術作品の為で」
「アイツ何作ってるんだ?」
ダダスト様はミリーネ様がアニメ制作をしていることは知りません。しかし、このように人を探してくれる良い人です。
「録音魔法使いならリスニンが良いかもな」
リスニンさんは録音魔法が使える人で家はこのベルストベルク王国王都から馬車で二日ほど、バヨ園にいるようです。
「行くのなら気をつけてな」
「承知しました」
今夜出発の馬車の券を買い。私は即座に出発しました。
絵コンテ作業に追われていた私、ミリーネは周りが気にならないほど集中し、かなり進んだ。
「結構できた!あれミミスは?」
「あれ?どこ行ったんだろうな」
ダムスも分からないのか。私はミミスの作業台を覗いた。
『私にプライバシー権はないのですか?』
と言うミミスの姿が思い浮かぶ。
『おいおい中世の世界にプライバシー権なんか用語あるわけないだろ』
私の分身?イマジナリーフレンド?がなんか言っていた。
私、ミミスは馬車に揺られていました。エメラルド家専属メイドたる者幾度となく時もメイド服は脱ぎません(でも休日は脱ぐ)
ミリーネ様は
「アニメ作るときくらい着替えたら?」
と言ってましたが、断りました。ミリーネ様は
「私服見たみたいのに……」
と呟いていましたが。
「それにしてもメイドさんが馬車に乗ってるとは」
護衛のパーティが私に話しかけてきました。
「少し、用がありまして、ちょっと待って下さい。敵がいる気がするのですが」
するとパーティの魔法使いが
「本当ですか?『敵探知』あら、本当に、東にウルフが数体こちらを狙っていますよ」
「まじで!」
パーティの剣士は驚いていていました。
「何でわかった?」
「だってめっちゃ砂埃払ってこっちきてるじゃないですか」
私が指差した先にはでっかい砂埃が立っていました。
「本当だ。視力0.1の俺でも見える」
「お前弓だろ。視力悪いの致命的じゃん」
とりあえず馬車を停めないといけないような気がしますが。
「あの、停めてください」
「あっすまん」
結局私が停めることになりました。この人達は本当に役に立つのでしょうか。
「よし、やるぞ」
彼らは武装して馬車から降りました。
「すみません、私も協力していいですか?」
「いや、君はお客だし、子どもだし、流石に……」
彼らには断られてしまいました。
でも、私は馬車から降りました。
「いいですか?私最近絵描いたばっかりで運動してないんですよ。嫌いではないのですが」
私は『収納魔法』でしまっていた剣を取り出した。
「おお、すごいな」
「では、行きましょうか、貴方魔法使いですよね?援護お願いします」
「あ……はい」
「それでは前衛の皆様。いきましょうか」
「お……おう!」
私達は一気にウルフに突っ込んだ。護衛の皆様、私は華麗な剣技でウルフを倒していきます。
ウルフがジャンプをして勢いをつけてきました。
私もジャンプをして耐空中に腹に剣を入れます。
ウルフは腹から血を出しています。ちょっとメイド服にかかってしまいました。
しかし、着地の時に隙ができます。ウルフはなかなか賢いようです。この隙狙ってきました。
「大丈夫か!」
護衛パーティのゴツめの人が大剣でウルフの攻撃を受け止め私を守りました。
「ありがとうございます。後で名前を教えてください」
私は刃先をウルフに向けました。
「待て待てそんな真っ直ぐ行ったら俺にも当たるんじゃねえのか!」
私はその言葉も気にせず、見事にウルフの首だけ斬りました。
「いやぁーすごかったな。メイドさん。強いんだな」
今私達は野営をしています。中央に火を焚き、周りには『結界魔法』を張っています。
「よかったら俺たちのパーティに入ってくれないか?」
と護衛パーティのリーダーに誘われましたが、
「いえ、メイドの仕事があるので」
と断りました。
彼らは「そうか……」と残念そうな顔をしています。
すると魔法使いのお姉さんが
「あら、メイド服が汚れてますね。どれ……」
ウルフの血によってできた汚れがみるみるうちに綺麗になっていきます。
「わぁ。ありがとうございます」
「スミレの『洗浄魔法』は一級品だからな!」
「そういえば、戦闘録画って何処に売ってましたっけ?」
「ああ、あのおじさんだよ」
リーダーが指差したおじさんは先程の戦闘の録画を撮り、販売している人です。
馬車で起きた戦闘は万が一の証拠記録として、『映写魔法』を使って記録しなくてはならないというルールがあります。そしてこのデータは売買することが許されているため、戦闘が起きると大体この即売が行われるのです。
「映像データをください」
「はいよ」
私は金を払い、その対価としてデータの入った箱を受け取りました。
そして、あっという間にバヨ園に到着しました。護衛パーティの彼ら、リーダーで剣士のラスク、魔法使いのスミレ、命の恩人で大剣使いのゴスト、弓使いのリーチャ
とてもいい人ばかりでした。
「じゃあな!ミミス!また会う日まで!」
私は彼らに別れを告げ、リスニン様の家を目指しました。
「あらいらっしゃいメイドさん?」
「どうもエメラルド家専属メイドもとい、エメラルドスタジオ原画スタッフのミミスと申します」
私はリスニン様の家に来ました。
「エメラルド家ってことはダダストさんの。いいわ上がって」
リスニン様の家に上げていただいたら早速派遣です。
「ところで何の用?」
「単刀直入に言うと、アニメ制作なるものを手伝って欲しいのです」
「アニメ?」
「はい、アニメというのは」
私はミリーネ様がお描きになった女の子が剣を振るアニメーションをリスニン様に見せました。よかったですこんなときのために持ち出して。
その頃、スタジオでは……
「ミリーネ、初めて見せてくれたあの女の子が剣を振るアニメを見せてくれ」
「これ何にするの」
「画集の素材」
「いいけど、背景もしっかりやってくれよ」
「えっもうほぼ終わってるよ。早くしてね絵コンテ」
「え」
私がダムスの進捗を確認すると……
「本当だ。ほぼ出来てる」
絵コンテが一番遅れるという異例の事態に……監督がみんなの足を引っ張っていた。
「分かった、あげるから、ちょっと待ってて」
と言って引き出しを開けた。すると中に入っていたのは
『少し、お借りします。 ミミス』
という置き手紙が入っていた。
リスニンの家……
「素晴らしい芸術ね!感動したわ!是非直接手伝わせて!」
リスニン様は私の手を強く握って言ってきました。
「さぁ!戻りましょう!」
「気が早くないですか!?」
私はバヨ園に到着してから一時間、また馬車に乗ることになりました。
ミミスがスタジオから出て四日。かなり絵コンテ作業も終わって、暇を持て余していた。
しかし、原画がまだ終わっていなく、私がミミスの代わりに原画を描く羽目にあっている。
「そういえば、あと何日だっけ、文化祭まで」
とダムスに質問すると
「あと二週間くらい?」
スケジュールが押していた。
アニメーションは出来つつある。セルも効率良く終わり、作業も追いついている。どうやら『集中力増加魔法』というものがあって、私もそれをメルにかけてもらい実感した。
「ただいま戻りました」
ミミスが帰ってきた。可愛いお姉さんを連れて。
「こちら、『録音魔法』が使えるリスニン様でございます」
「ここが、エメラルドスタジオ……素敵……」
彼女はこの部屋に魅了した。
「そういえばミリーネ様こんな映像が手に入りました」
ミミスはフィルムを持ってきた。
「何だこれ」
映写機で流してみると、そこにはミミス達が犬をなぶり殺しにしている映像が流れた。
「虐待映像?」
「違います。馬車での移動中での戦闘です。剣の動きの参考になればと、でもアニメーションほぼ出来てますし、いらなかったかもですね」
「いや、ありがとう。ちょっと足したり、してみるか」
その日はミミスがいてか、ペースはぐんぐん上がった。
翌朝。
私が朝起きて一仕事しよかと思い、スタジオに顔を出した。
「あっ、どうもおはようございます」
リスニンは朝の挨拶をしていたが
リスニンが寝ていた痕跡があった。
「客室ならお父様に言えば貸してあげられるのに」
「いえ、大丈夫です。私この部屋で寝泊まりしたいので」
彼女は魅了されすぎたらしい。
「あ、でも私寝るの結構早いので早く切り上げてくださいね」
「出てけ」
昼。
庭で音の収録をすることになった。足音。風音。などを収録する。
「ところで戦闘中の音はどうするの?」
と私が質問すると……
「実際に戦ってもらおうかな?」
そして……
「いいねーいい音録れてるよ!」
ミミスとダムスが剣で戦っていた。二人の表情から喧嘩にも見える。
「いいねえーついでに録画もしようかー」
リスニンは『録音魔法』だけではなく、『撮影魔法』も同時で使用して記録する。
「こんなのでちゃんと録れてるの?」
「大丈夫!『録音魔法』には音を聴き取る魔力物質を使っていてねーいる音いらない音を上手く分けて、いる音だけ保存してくれるの」
録音が終わり、実際に聴いてみることにした。
剣の金属音。それに発生する足音。関係ある全ての音が上手く録音されていた。
「この世界の録音技術。侮れん」
「何言ってるの?」
音楽に関してはリスニンが「いい人がいるから軽く録ってくるよ。大丈夫!私もこの作品に合う音楽くらいわかるって」と言って旅立ってしまった。一応絵コンテのコピーも渡したし大丈夫か。(コピーは魔法で写した。何でもありやな)
そして、我々、エメラルドスタジオ一同は間に合わせるため制作に打ち込んだ!
一週間後
魔法による圧倒的な集中力によって、アニメーションがようやく完成した。この世界の作業効率は本当に凄い。この魔法。前世でも欲しかった。
「ただいまーいい音録れてたわよー」
リスニンが戻ってきた。
「早速、合成編集するわね」
つ……つまり……完成だ!
ようやく今日は文化祭当日だ。街の中にある劇場にて我々のアニメは上映される。データもフィルム化して、あとは時を待つばかりだ。
「ところでミリーネ様。広告はどのようにしたのですか?」
とミミスが聞いてきたので見せてやった。
新文化!!
絵と映像を組み合わせた!画期的な映像作品!作品名『二人の女剣士の決闘!』
アニメーションという新しい物を見よ!
「…………ミリーネ様って語彙力ないですよね」
「ほっとけ」
時間が来た。
「客の入りはいいな」
「わかるか?ダムス。そうだろう」
「こんな素晴らしい芸術です。絶対分かってくれます」
「それでは上映しますよ」
レイルとナビスがそう言って、映写機から光が出た。
まずは私達、『エメラルドスタジオ』のロゴが映し出された。
そして、背景の平原が画面いっぱいに映り、風の表現がされる。
それから画面はズームアウト。すると映るのは一人の美少女。
さらにズームアウトし、また一人の美少女の背中が画面に映される。
二人とも剣を持っており、睨み合っている。この描写から観客は「この子たちが今から闘うのか?」と思う。
そして、片方が地面を蹴って、絵は大幅に動く。
この瞬間、劇場では「おおー」という声が上がった。
ここからカットし、剣の輝きが細かく描写される。そしてグングンズームアウトし、剣が交わり二人の睨む目が描かれる。
剣の金属音が劇場いっぱいに響き渡りその音の度に観客はビクッとした仕草を見せる。
激しい攻防を続けて、最後に突きを入れる。
そのラインが白く描かれ、それもじきに消える。観客が「斬られたほうは死んだのか?」と思ったが、先程まで白く描かれていた剣は茶色い木刀へと変わり、周りには観客が。
そうこれは模擬戦だったのだ。
そして、二人が握手をしこのアニメは終わった。
上映後、歓声が上がった。大成功だ!
私はこの異世界にアニメを伝えることができたのだ!
夜
メンバーはスタジオに集まった。
「アニメ制作成功おめでとう!」
「イェーイ!」
いわゆる打ち上げだ。いわせれば、あのアニメはさほど良いとも言えないアニメだ。長年作ってきてる身としては。
しかし、成功した。これは紛れもなく彼らのお陰だ。
「みんな本当にありがとう!」
「何最後みたいな雰囲気出してんの?」
「え?」
「まだ作るわよね。アニメ」
「え?」
メルは
「まだ作りたいです」
レイルは
「楽しかったしな」
ナビスは
「え?もう終わりなんですか」
ミミスは
「どっちでも」
「いやー文化祭であの画集を売ってたんだけどそん時に次回作も期待していますって言われてさー」
とダムスが笑いながら言った。
「次はどんな作品にするの?」
「ここは日常系とかが良いと思います」
もう次の脚本会議が始まっている。しょうがない。
「次は10分アニメにでもするか?」
「10分!?倍ですかミリーネ様」
そして、来月、私達はまた、アニメを作っていた。どうやらある商売企業から『広告アニメを作ってくれ』と頼まれたようだ。こうゆう商売もいいかもしれない。
そして、まだ異世界でのアニメ制作は続くことになる……
ご愛読ありがとうございました。評価☆5等お願いします。気が向いたら続編描きます。向かなかったらもちろん書きません。
僕も金髪美少女に生まれ変わりたい。