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第83話【再会?】

「とりあえずここに置いておこう」


 ヒーローはダダ様に言われた通り、家から少し離れた路上にドローンを停車させた。

 ダダ様はしきりにネックレスを渡そうとしたが、ヒーローは受け取らなかった。


 マザー探しは後だ。母さんにも説明しなきゃならないし、まだ預けておこう。


 ヒーローはそう考えたのだが、ダダ様は違う。

 常にヒーローが携帯しなければマザーは見つからないのではないかと考え、隙あらばネックレスをヒーローの首に掛けようとする。

 イレギュラーな事態が起こった時に渡せなかった、なんて事になったら最悪だ。


 しかしヒーローの素早さに勝てるわけもなく、しぶしぶネックレスを自分にしている、という状況だった。


「昔はこんな大きな車を自分で運転してたなんて、信じられないや」


 ヒーローは車内を端まで見た。


(これがオートじゃなかったら人為的な事故で大変なんだろうな)


「俺は……こんないい車なんて運転した事ないよ」


(意外だ。あれだけお金持ちなら車くらい買えただろうに)


「何で?」


「俺は工場勤めだったから。ヒーローはお坊ちゃんだからわからないだろうけど、とても当時の高級車なんて買えない。目覚めてからも弟に頼るのは兄としてプライドが許さなかった。マザーに従わず、一度はこの能力で好き放題しようとはしたよ」


「でも乗れなかった?」


「惜しいとこまではいったんだ。あとちょっとだったんだけどな……。政府のデータとか色々弄くってたらボッコボコにされたよ」


 ヒーローはダダ様関連の話で気になる点があった。記憶や話に何度か出てくるビンタや、ダダ様にお灸を据えた人物。


(父さん……?)


 何度か頭にはよぎったが、ダダ様がわざと伏せているようで聞けなかった。

 ドローンを出てからではどこに政府の目があるかわからない。

 ヒーローは意を決して聞いてみた。


「その、ダダ様を止めた人って……父さん?」


「……駄目だよ、ヒーロー。これから自分でそれを確かめに行かないと。とにかく、高級車なんて縁がなかったんだ、俺は。でもさぁ、運がいい事に俺の持ってたボロ車が最後の内燃機関だったらしくて今じゃ価値がつけられないくらい──」


 頭に入って来なかった。


「聞いてる?ヒーロー」


 やはりダダ様は答えてはくれなかった。

 沈黙の間にギースからの着信が割って入る。


 ダダ様は人差し指を自分の口に当て、ヒーローに黙るよう指示を出し、能力でガンを探知した後、ホッとしたように着信を受けた。


 どうやら何も仕掛けられていないようだ。


 通話にした瞬間、ギースの嬉しそうな声が車内に響き渡った。


 《何とか誤魔化せたよ。僕は俳優でもいけるんじゃないか!?》


「「顔だけなら……」」


 あれで満足のいく内容だったらしい。

 天然なのか、自己評価が高いのか、ダダ様とヒーローはこの話題には触れずに状況を説明をする。


 ギースは自分の演技が評価されていない事に不満そうだったが、状況を把握すると真面目な声色に変わっていった。


 《ちゃんとサリーさんに伝えないと。もう夜中だ、朝にした方がいい》


「うん。色々ありがとうギースさん」


 《礼など……。僕も朝までにはそっちに戻っておくよ》


 ヒーローはギースとの通話を終わると、ドローンから離れ、ダダ様と帰宅した。


 物音を立てないようにコソコソと忍ぶようにして部屋に向かったが、こんな時間まで帰らない我が子を心配しない親などいない。


 二人はすぐにサリーにバレてしまう。

 ギースと飛んで行ったはずのヒーローが、顔色の悪い男と帰って来たのだから、サリーは随分と警戒していた。


「ヒーロー、大丈夫?」


「えっと、この人は大会に出てたダダ様で……」


 どう説明していいものかと考えていると、ダダ様がヒーローを押し退けるようにサリーの前へ立っていた。


「サリー……」


 ダダ様はサリーの名前を呼んだ。ただそれだけだったが、サリーはなんとなくわかったような気がした。


(大会で見ただけの学生のはず、初対面のはず……。


 でも、私を知っているんだろう。


 私だけが知らない……。知りたい)


「──私を知ってるの?」


 ダダ様は小さく頷いた。


「コピーしても……?」


「記憶は駄目だよ。まだ駄目なんだ。時間が来たら……ヒーローがマザーを見つけたらわかるから焦らないで」


 今度はサリーが小さく頷いた。


「バスカルで何が起きたかは俺の能力で教えるよ」


 ダダ様は指をサリーに向けてナノマシンを操作し、先ほどバスカルで起こった事を追体験させた。




 時間にして一瞬だったが、追体験を終え、理解をしたサリーは悲しい表情になり、ダダ様を労った。


「ダダ様も辛かったのね……」


「俺はいいんだ。今全てを話してしまいたいが、言えない理由がある。それもわかってほしい」


「わかった。ヒーロー?」


「うん……」


「行きたい?パパを探しに……」


「当たり前だろ。母さんだって気になるくせに」


「フフッ、生意気。パパ、ママって呼んでた頃が懐かしい」


「いつまでも子どもじゃない。ダダ様、マザーって単語は言っても大丈夫?」


「ああ、俺がいれば大丈夫。ってか、ヒーローだって電波くらいはイジれるはずだよ。ライゼさんもできたから。ジャミングなり、違う電波妨害なり、自分でやったらいいのに」


「あ、そういえば控え室でやったら出来たな……。いけそうな気がしてきたよ。必ずマザーを見つけよう」


「任せたよ。ヒーロー」


「……ん?任せた?ダダ様も一緒に来ないの?」


「俺はアイランド学園に入るよ」


「え?」


「え?」

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