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第17話【入学式】

 ホールを飛び立ってから約20秒後、爆音と共に着地してアイランド学園に到着。

 プスプスと小さな黒煙を上げ、焦げたギースは先程より瀕死に見えた。


「ナンナンデスカコレハ……」


 ライゼはそんなギースを引き連れ、事前に連絡しておいた待ち合わせ場所で顔を左右に振ってサリーを探している。


「おっいたいた!サリー!」


「ヒーローが入場するよ!早く中に入ろうよ!」


 サリーがライゼを急かして手を掴もうとした瞬間、後ろの黒い人影に気付いた。


「えっ!?ソノ黒いのは……ギース君!?」


「あっち行ったらやられててな、式は?」


 ライゼは決して自分のせいだとは言わなかった。


「先にクラス分けだったし、ガービィさんの保護者への注意と挨拶が異常に長くて、新入生は今から会場入りよ」


「あいつ……」


 二人はわざと式を長引かせてくれたガービィに感謝している。

 ギースは先ほどのライゼの発言を訂正したくてたまらない。


「サリーさん、コレはライゼさんにやられ──」


「早く行こう!まだ間に合う!」


 ギースは見事に無視された。




 3人は何とか式に間に合い、音楽と共に入場する新入生たちを待っていた。


「まだかな」


「シッ!」


『おお!』


 会場全体がヒーローの入場にざわつく。


 ギースから貰ったリュックを背負い、しっかりと手を振り、歩くヒーロー。


 その一挙手一投足が美しく、皆の目を奪った。オーラがある、とはこの事なんだろうと思わすほどに、ヒーローの姿は完璧だった。


 ライゼ、サリー、ガービィ、ギースも目を奪われる。

 四人はヒーローと過ごした日々を思い出して誇らしくなり、ライゼは涙をこらえていた。


 そして学園長の挨拶が始まる。


 新入生や見守る保護者に窓から光が差し、その光景は絵画の様に神々しさがあった。やがて学園長にも光が差し──


「えー、普通の学園とは違い、あー、HERO(ヒーロー)になるべく…HERO(ヒーロー)に………まっ、眩しっ!!」


 あまりの眩しさに目を伏せた。


 光源はサリーの隣から発生している。


「パパ!パパ!」


 光の主はライゼだった。サリーが慌てて注意したものの、やがて子どもがライゼに気づいて騒ぎになり始めた。


『カレーのお兄ちゃんだ!!』


 CMの影響からかライゼは子どもたちに大人気。すっかりカレーのイメージが定着している。


「俺って今子供たちにそんな認識なの!?」


 体内のナノマシンのおかげで寿命間際までは若い体でいられる時代だ。

 お兄ちゃんと言われてライゼはちょっと浮かれている。

 当然この騒ぎにヒーローも気づいて、パパがいる事に嬉しくなり手を全力で振った。


「パパ!」


「ヒーロー!カッコいいぞ!!」


 目立つヒーローとライゼを交互に見て、当然保護者もざわつく。

 先生たちの所にいるガービィもそれを見て目立つ二人に呆れている。


『ライゼだ!HERO(ヒーロー)のライゼがいるぞ!』


 騒ぎが拡大するのを防ぐ為、ギースがライゼをここから連れ出そうと腕を掴んだ。


「ライゼさん!一旦出ましょう!!」




 騒ぎを避けて外にでた三人だったが、落ち着く間もなく校舎脇でサリーがライゼに注意をする。


「あそこで光っちゃ駄目だよパパ……」


「す、すまん、嬉しくてつい漏れちゃった」


「フッハハハッ、光るのは相変わらずですねライゼさん」


「あら、ギース君の笑い方。ガービィさんに似てきてる!」


「ハハハッ、そういえばなっ!」


 やはり師弟は似てくるのかと笑うライゼとサリー。二人はそう言うものの、ギースには自覚がない。


「そうですか? ……先生も元気そうでしたね」


「会って行かないのか?」


「──今会えば、帰りたくなってしまうので……。ヒーローはなんだか凄くいい顔になりましたね!凛々しくて、あの髪ですぐにわかりましたよ!」


「そうだろう!眉毛も黒くてママ似だしな」


「愛する綺麗なママに似てる!?パパ……」


 サリーには何が聞こえているのだろうか。

 相変わらず盛大な勘違いをし、うっとりとした表情でライゼを見つめ出した。

 意外にもギースはサリーのこの反応を見て懐かしさを覚える。


「サリーさんも相変わらずで何よりです。ヒーローはちゃんとどちらにも似てきてますね。リュックも似合ってて良かったですよ!」


 ヒーローは前日からリュックを眺めてはしゃいでいた。サリーはギースへ深々と頭を下げた。


「ありがとう、ギース君。ヒーロー、前の日からリュック背負って。本当にお気に入りみたい」


「そんな!頭を上げて下さい!大した事は──」


「30万もするらしいぞ」


「ライゼさん!」


「な、何があったの……。ギース君……」


「はぁ、もうその反応も慣れましたけどね……。そろそろ学園長の話終わっちゃいますよ?」


「ギースは来ないのか?」


「一目見れて満足しました!」


「そうか……じゃあ送ってくよ」


「いい!いいです!ギルドに先程の事を報告したいですし!」


 あの運び方がよほど痛かったのか、ギースは全力で嫌がっている。

 そんなギースを見てライゼは意地悪そうに笑った。


「ハハハッ、よっぽど痛かったんだな。……またな、ギース」


「またね、ギース君」


「ええ!僕はもうガービィさんの公式計測値を超えましたよ!すぐにナンバーもガービィさんを追い抜いて帰ってきます!」


「おう!」


 何度も振り返りながら軽快に走り去って行くギースに手を振る。


 ライゼの優しさか、はたまた単なる意地悪なのか、ガービィの実力はあんなものではない、とはギースへ伝えなかった。


「……サリー」


「なぁに?」


「ガービィの本気見たら、ギース泣いちゃうんじゃないか」


「うん、泣いちゃうと思う」

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