1/79
第1話【十三歳】
「っ! 離して! 離せぇえ゛え゛!」
「お前まで死ぬ気かっ!」
ヒーローが必死に腕を伸ばし、空へと手を差し出したその瞬間、それまで空を裂いていた雷鳴が、嘘のように止んだ。
一転して、世界は静寂に包まれる。
指の隙間から、パパの身体が音もなく飛び散っていく。まるで砂が風にさらわれるように、輪郭もなく球体に溶けていく。
セドを力任せに振りほどき、ヒーローは駆け出す。
たった今まで、パパが空にいたその場所へ。
爆発のようにも見えた。だがそこに音はない──。
輪の中心から、ひとつだけ遅れて、何かが落ちてくる。
まるで意思を宿したかのように、ふわりと舞いながら。
パパの左腕だった。
ゆっくりと舞いながら、ヒーローを撫でるように落ちてくる。最後に一度だけ、息子に触れようとしたかのように。
そして──パパは、消えた。




