第47話 巨獣討伐戦
889:冒険者@霊体の精霊の加護(オーメル)
狂葬さん、LIVE切れたけど?
890:狂葬@色彩の精霊の加護(ドレアス)
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クアドラシフィアの攻撃を掻い潜りながら、少しずつダメージを与えて行く。
すぐに再生してしまうが、再生速度を出来るだけ正確に測る為だ。
「やっぱり五から六秒ぐらいか」
傷口が光に覆われ、光が収まると傷が消えている。
大き目に傷を付けようが、小さく傷を付けようがあまり差は無いらしい。
回復魔法のようなものなのかな?
それならMPが切れるまで斬り刻む所だけど、果たして何時になる事やら。
もしくは、自動回復系の特殊能力かバフってところか。
「バフならこれでいけるけど―――リバーススケッチ」
110レベルで覚える色彩の魔法。
相手のバフ効果を反転させる魔法だ。
もし、自動回復などのバフが掛かっているのなら、自動的に身体を蝕む毒のような効果になるはず。
距離を取っていた俺へ、蛇の口から毒液が放たれた。
まぁ、首が四つもあるんだ、それぞれ別属性のブレスを放つぐらいは想像していた。
予想の範囲内なので、特に驚きも無いまま避ける。
「―――…効いてないな」
何かバフが掛かっているわけではないようだ。
再び接近し斬り付けてみても、再生能力に影響は無い。
元々持っている特殊能力のようなものなんだろう。
再度振り下ろされる前足や尻尾を潜り抜け、もう一度距離を取る。
倒し切れるか解らないが、こちらにも意地がある。
75レベルと互角と言うのは少々情けない。
相手が再び毒液を吐こうと足を止める。
口から毒が見えた瞬間、アクセルスラッシュを使用し相手の左前足を斬り付けた。
骨まで砕いた確かな手応えを感じながら、しかしもう一度距離を取る。
攻撃した場所を見れば、左前足は深く裂かれ、足の六割ぐらいがバッサリと抉れている。
アクセルスラッシュでもあのぐらいまでダメージは入るわけだ。
クアドラシフィアも悲鳴を上げるが、やはり五秒もすれば元の足へと戻っている。
つまりダメージの大小は関係無い。
となれば――――。
「再生する前に仕留めるしかないね。―――ルビーレイジエンハンサー」
対象の攻撃力を1.2倍にする魔法を自分に掛ける。
続けて『クリムゾンレジェンド』、『バーサーク』、再び使用出来るようになったクロックアップと、自分を強化していく。
「フラウ、スキルを借りるよ。『共鳴』」
『共鳴』は俺が110レベルで覚えたジュエルスキル。
覚醒スキルと言って差し支えないそれは、自分のパートナーが持つスキルを一度だけ使用可能にすると言うものだ。
これの効果はEXスキルや固有魔法でさえも使えてしまう。
つまり『ウルトラヴァイオレット』も使えると言う事。
まぁ色々制約はあるけれど。
今回、フラウから借りるのは『ウルトラヴァイオレット』ではなく、別の固有魔法。
「『カオスキャンバス・パラドックス』」
俺がその魔法を唱えた瞬間、俺を中心にして球状の黒いドームが生成される。
地面もなく、空も見えないこの空間内には俺とクアドラシフィアしか存在しない。
当のクアドラシフィアは大きく崩れ、豪快な音と共にその場に倒れ込んだ。
目は見開いたままギョロギョロと辺りを見回し、手足は大地を探すように忙しなく動く。
俺はMP回復ポーションを飲みながら、バックアタック、ハイドアタックを発動させる。
MP消費が大きく、エメラルドガーデンでの回復を待ってはいられない。
MPが回復したのを確認し、俺はクアドラシフィアの後ろ側へ回り込んだ。
今の内に『クロノスグレー』の詠唱を始めておく。
クアドラシフィアは身体を横たえたまま、ただただ藻掻き苦しんでいる。
こちらを認識出来てはいないらしい。
『カオスキャンバス・パラドックス』は、範囲内の敵に対して効果を及ぼす魔法だ。
その効果は幻覚、幻聴、ステータス中ダウンの効果に加え、五感、平衡感覚、方向感覚を消失させると言った強力な魔法だ。
クアドラシフィアは今、五感を失った状態で、上下左右すら解らないまま、幻聴、幻覚に苛まれている。
俺もフラウと模擬戦をした時に使用され、こんな感じで無様に倒れ込んだ事がある。
まぁ、地形魔法に含まれるらしく、ブランク・キャンバスで無効化出来てしまうけれど。
さすがに固有魔法を無効化されたのはショックだったようで、その時のフラウは目に見えて落胆していた。
ともあれ、そう言った対処法が無い場合、御覧の通りの有様になる。
「さぁ、倒し切れるかな? ストラトスフィアストライク」
倒れ込んだクアドラシフィアに容赦なくスキルを叩き込む。
背骨を砕いた感覚を感じ取りながら、俺は『クロノスグレー』を発動した。
時間は10秒、攻撃力は単純計算7.2倍。
スキルの威力、補正も含めればもっと上だ。
AGIはオートモーションの攻撃速度にも影響がある。
そちらも上がっているし、モーション時間は一秒を切る。
片手剣の残りのスキルと短剣のスキルまで使用が出来るだろう。
「ここで死んだ方が、痛みを感じずに終われるよ」
剣を構え、聞こえるはずのないクアドラシフィアへ告げた。
◆
94:冒険者@火焔の精霊の加護(オーメル)
LIVE復活したらレベル75が死んでたでござる
俺の目の前では、ぐちゃぐちゃになったクアドラシフィアが転がっている。
自分でやったとは言え、これはさすがに酷い。
再生能力とHPの高さから来るしぶとさだったんだろうけど、防御力はそれほどでもなかったようで、スプラッタな見た目になってしまった。
防御力を下げる為に『カオスキャンバス・パラドックス』まで使用したが、普通にバフと『クロノスグレー』で十分だったかもしれない。
99:冒険者@そよ風の精霊の加護(ロクト)
で、どの程度の強さだった?
「再生能力は厄介だったけど、強さは75相応ってとこかな。普通に追い詰めたら切り札の一つや二つあったかもしれないけど」
翼が四つあった所から見ても、陸上でのあの戦闘がクアドラシフィアの本領であったとは思えない。
命の危険を感じればもっと必死に抗って来た事だろう。
まぁ、クアドラシフィアにはそれを判断する猶予も与えなかったわけだけど。
101:冒険者@鉄の精霊の加護(レーヴェ)
ネームドってわけじゃなかったのかもな
とは言え、大物を倒したのは間違いない。
スタンピードが収まらないだろうかと迷宮方面を見るが、相変わらず魔物の群れが街の方へと駆けて来ている。
「他の様子は?」
101:金剛@泉の精霊の加護(ドレアス)
俺が東門に到着した
破壊者さんはここを俺に任せてどっか行ったけど
どっか行った?
ひょっとして俺の援護に来ているのかと思い、ドレアス側を振り返る。
だが、見える範囲にユークの姿は無い―――と言うか、もっと別のものが視界に入った。
ドレアスの方面から、空へと昇る赤い煙。
…ノノとケインに渡した狼煙だ。
―――二人に何かあったって事か。
そう考えるより早く、俺はドレアス側へと走った。
ユークが移動したのが何時かは解らないが、間に合ってくれているだろうか。
しかし、ユークの死亡フラグが脳裏にチラ付く。
そんなぐちゃぐちゃな気持ちを抱えながら、俺は風を切った。
〇リバーススケッチ
習得レベル110 色彩魔法 使用MP40 効果時間5分 詠唱時間10秒
相手に掛かっているスキルや魔法によるバフを反転させ、デバフに改ざんする。
元々持っている特殊能力などには通じない。
〇ルビーレイジエンハンサー
習得レベル40 色彩魔法 使用MP15 効果時間5分 再使用3分 詠唱時間3秒
対象の攻撃力を1.2倍にする。
同じ対象に掛けても重複はしない。
●共鳴
レベル110以降、ジュエルスキル。
1日に一度だけ、パートナーのスキルを使用出来る。
効果時間があるものは1分間に固定される。パッシブも同様。
EXスキルに関しては同じ武器でないと使用出来ない。
●カオスキャンバス・パラドックス
使用MP300 色彩固有魔法 効果時間120秒 再使用12時間 詠唱時間20秒
一時的に範囲内の常識を上書きし、範囲内に居る者の感覚を狂わせる地形変化魔法。
効果は幻覚、幻聴、ステータス中ダウンの効果に加え、五感、平衡感覚、方向感覚を消失させる。




