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この世界で一緒に。~おかしな奴等と異世界転移~  作者: シシロ
ヴァイランの公爵令嬢
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第90話 まるでコソ泥

 夜中になり、俺は人に察知されないよう警戒しながら調理場を探る。

スニーク系のゲームの主人公にでもなった気分だ。

…いや、そんなカッコイイ感じじゃないな。

どちらかと言えば…。


674:狂葬@色彩の精霊の加護(ヴァイラン)

俺達、まるでコソ泥だな


675:冒険者@水の精霊の加護(ヴァイラン)

言うなよ

俺だってちょっと情けなくなって来たんだから


 並んでいる調味料を調べ、毒物が混ざって無いかを探る。


 メイドに聞いた所によると、公爵の症状が出たのは一月前。

仮に毒で眠らせたのだとしても、今更証拠が残っているとは思えないが…一応と思って調べてみたけど、想像通り何も無い。


 現在、集まった『ジュエル持ち』で公爵家全体を調べて回っている。


 公爵邸は今、俺のトリックアートの支配下にある。

この魔法、意外と効果範囲が広いのだ。

他の者の目からは『ジュエル持ち』達の姿を隠し、俺の姿は寝室で寝ているように見えている事だろう。

つまり、俺達は自由に探索が出来ると言う訳だ。

 ちなみに、ユークは寝室に残ってロッシュの護衛について貰っている。

公爵がどう動くか解らないと言うのもあるが、また何かやらかしそうだから出歩かせなかった、と言うのが一番の理由だ。


685:狂葬@色彩の精霊の加護(ヴァイラン)

調理場は外れかなぁ


686:冒険者@水の精霊の加護(ヴァイラン)

マジでコソ泥にでもなった気分だ

親に顔向け出来ねぇぜ…


677:冒険者@毒の精霊の加護(ヴァイラン)

この部屋って、もしかしてメイドさんの更衣室?


678:冒険者@水の精霊の加護(ヴァイラン)

い ま す ぐ い く ぜ !


679:破壊者@熱砂の精霊の加護(ヴァイラン)

親に顔向け出来そう?


 公爵邸を移動しながら、コメントを追う。

今のところこれと言った発見は無さそうだ。


 現在俺達が持つ情報では、公爵がどこで何をされたのかが解らない。

ここが完全に外れの可能性だって当然ある。


 一体何をされたんだろうか。

メイドの中にスパイとか? あるいは外を出歩いている時に、遅効性の毒でも飲まされた?

それとも、物証の残らない呪いのようなものでも掛けられたんだろうか。


 どんな手を使ったのか知らないが、ここにヒントがある事を祈るより無い。


『――――して、―――なのか――――」


 何かくぐもった声がして、警戒から立ち止まる。

姿は見えないだろうが、足音を消す為だ。


 どこから聞こえて来るのかと視線を動かせば、何やら豪華な扉が見えた。

……これ、公爵の執務室?


 そっと扉に寄り、耳を澄ませる。


『お前にも素性を掴ませぬとは、どこの者だろうな』

『力至らず、申し訳ございません』

『気にするな。私とて一筋縄で行く相手とは思っていなかったさ』


 部屋の中には二人の反応。

会話の様子からソラン公爵と側近って所かな。

俺達の事を調べようとしたが、情報が掴めなかったって話だろうか。

…ま、もう数日もすればアルテシアの出来事が伝わるかもしれないし、そうすれば俺達が絡んでいると察する可能性もあるが。


 なんにしろ、やっぱり俺達の事を怪しんでるのは間違いない。

問題は、『どう』怪しんでいるのか、かな。


 ソラン公爵が眠った件の犯人とでも思われていたら厄介だ。

わざわざ眠らせて治し、恩を売る事で取り入る……そんなマッチポンプを疑っているのかもしれない。


『お嬢様の護衛から、襲撃の際の話は聞いておりますか?』

『ああ。…夢物語でも聞かされた気分だよ』

『事実であれば、国が召し抱えたいと思うのも有り得る話ですが…』

『だが、それほどの力量があるのならもっと名が知れていると思うのだがな』

『しかし、実際に魔物の襲撃を撃退しているのは間違いありません』


 警戒されてるなぁ。

向こうとしても、俺達が敵か味方か判断しかねてるんだろう。

……いや、味方として扱っていいか判断して、使えそうなら取り込む気か?

そのルート行くと、クラウン王国のアレコレに巻き込まれる流れになりそうだし、遠慮したいんだけどな。


『しかし……亜人庇護派の暗殺か』


 用も無いし立ち去ろうとした所で、気になるワードが飛び出た。

歩き出そうとした足を止め、話に聞き入る。


『公には事故と言う事になっていますが、貴族が調べればすぐに解る事でしょう』

『王はこの国を二分したいのか?』

『むしろ、統一する為…なのでしょうな』

『亜人庇護派を排除して、か? そんな事をすれば、王国全体に被害が出るだろう。正気の沙汰とは思えん。一体、何故今になって動いたのだ』

『何かしらの準備が整った、と言う事でしょう』


 ……公爵がどちらかは解らないが、少なくとも亜人庇護派の排除については否定的であるらしい。

思想はどうあれ、国内が荒れる事を嫌うのなら、俺達との融和に乗って貰える可能性はあるか。


 ついでに言えば、亜人庇護派の暗殺については何も知らないらしい。

この国の中枢と距離を置いていると言う話は事実であるのだろう。


『……何時までも風見鶏を気取ってはいられんか』

『…覚悟を決める時が来たのやもしれませんな』


 ……今回の件、本当にネリエルが絡んでいるのだとすれば。

この人を狙うのも道理と言う事なのかもしれない。

どこか覚悟を決めたような声色に、俺はそんな事を感じていた。





12:狂葬@色彩の精霊の加護(ヴァイラン)

結局、それらしい物は見つけられなかったね


 屋敷内を調べ回ったものの、結局何も見つけられないまま朝を迎えてしまった。

この屋敷内に何かを仕掛けられた訳じゃないのか、すでに証拠隠滅されてしまったのか。

どちらにしろ、朝まで彷徨ったのに何も得る物が無かったと、正直落胆を隠せない。


18:冒険者@病魔の精霊の加護(ヴァイラン)

襲撃された村の方に手掛かりがあったのかもな


19:破壊者@熱砂の精霊の加護(ヴァイラン)

そっちも調査中だろ?

今は情報待ちか


 しかし、そうなると俺達の動きが決められない。

他に調べるような所があるだろうか。


 部屋に扉を開け、中へと入る。

起きて待っていたユークを後目に、眠っているロッシュ達に視線を向ける。

報告が無かったから大丈夫とは思っていたけど、こちらは平和であったらしい。

フラウとノノは別部屋だが、ミニマップの反応を見る限り特に異常は無さそうだ。


25:狂葬@色彩の精霊の加護(ヴァイラン)

本当にネリエルの手が入ってるのかな?


26:破壊者@熱砂の精霊の加護(ヴァイラン)

もし、公爵に毒を盛った奴が居たなら、それを治した俺達は邪魔なはずなんだがな


 ここまで何もしてこないと考えると、この屋敷に犯人は居ないのかもしれない。 


31:冒険者@水の精霊の加護(ヴァイラン)

結局、自然になった病気なのか毒なのかも解らんからな

仮に毒だったとしても、公爵が寝んねした時点で逃げたかもしれない


 やっぱり、一月も経ってから調べるのは無理があるな。


36:破壊者@熱砂の精霊の加護(ヴァイラン)

これからどうする?


37:冒険者@毒の精霊の加護(ヴァイラン)

俺達は街に出てみる

似たような症状が本当に無いのか、調べればすぐ解るだろ


38:狂葬@色彩の精霊の加護(ヴァイラン)

俺達はここに留まるようかな


39:破壊者@熱砂の精霊の加護(ヴァイラン)

公爵を引き入れるか?


40:冒険者@病魔の精霊の加護(ヴァイラン)

そうなれば心強いけど、ちょっと遠慮したい気持ちもあるな

公爵の立場を考えると、本格的に国が荒れるんじゃないか?


41:冒険者@熱の精霊の加護(ヴァイラン)

メリットも多いけど、リスクも多いか

せめて、敵対しないって確約だけでも欲しいけど


 公爵についての情報が少ないし、一度ロッシュと相談してみた方がいいかな。


46:冒険者@水の精霊の加護(ヴァイラン)

ところで、ここの書庫に魔法書とか色々あるんだけど、これ俺達が欲しい奴じゃないの?


47:冒険者@熱の精霊の加護(ヴァイラン)

素知らぬ顔でパクるか?


48:狂葬@色彩の精霊の加護(ヴァイラン)

俺達、コソ泥しに来たんだっけ?




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