第83話~第84話 幕間 普通と違和感
全身の感覚が鈍るほどの痛みと、遠退いていく意識。
頭の回転すら鈍る中、確かに感じるのは恐怖と不安――――そして、僅かな温もり。
その小さい背中に身を預けながら――――やがて、視界は暗転した。
◆
ふ…と、女は目を覚ます。
なんだか頭が重い…そう思って額に手を当てれば、頭にはVRサポーター『Synchrotron』が装着されていた。
どうやらゲームをしながら寝入っていたらしい。
小さく欠伸をしながら時間を確認し、数時間も眠っていたのだと気付いた。
眠ってしまった事でゲームから強制的にログアウトしたのか、『Synchrotron』の電源も落ちてしまっているようだった。
「ん~……! 夕飯の準備しないと…」
そう独り事を呟きながら立ち上がった時、何か大切な事を忘れている気がして、彼女はもう一度『Synchrotron』に目を向ける。
……少しの間、無言で考えに耽るものの、その答えは出ない。
何か夢でも見ていたか――――そう考えると、女はその場を離れた。
◆
その晩、再びゲームをしようと『Synchrotron』を起動し―――――流れたゲーム情報に目が留まる。
内容は『EW』運営から…ゲームにバグが発見された為、現在復旧作業中との事だった。
「昼間は平気だったのに…」
とは言え、アップデートされた当日で接続も多かった。
それが負荷となり、何らかの障害が発生していると考えればよくある話とも思えた。
「――――……」
ならば仕方ないと諦めようとして、なんだか違和感を感じた。
何…とは言えない。
ただただ、漠然と感じる違和感。
「何か……忘れてるような……」
暫く『Synchrotron』を手にしたまま、女は考え込んでいた。
結局、その答えが何だったか思い出せないまま……なんとなく、温かい感触を感じた気がして、首を捻るのだった。




