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この世界で一緒に。~おかしな奴等と異世界転移~  作者: シシロ
アルテシア領と『ジュエル持ち』
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第76話~第77話 幕間2 大体予定通り

 伯爵邸を取り囲んだ『ジェエル持ち』達。

彼等は別に何かを待っている訳ではなく、先に踏み込んだ『ジュエル持ち』達を見て、行く必要性を感じなかっただけ。

出番を失ったと、内心で落胆した者も居ただろう。


 さて、そんな彼等の前に現れたのは、街の住民と兵士達。

各々なんらかの武器を手に持ち、『ジュエル持ち』達を取り囲む。


 現状、伯爵邸を囲む『ジュエル持ち』を、更に囲む形で人々が集まって来ていた。


「…これ、襲って来る気だよな?」


 誰ともない呟きが静かに木霊する。


 相手は操られているだけの可能性が高い。

無駄に傷付ける事は望まないものの、だからと言って無抵抗でやられるつもりもなく。

カチャリ、と誰かが抜刀した音が聞こえた。

それを始まりとして、『ジュエル持ち』達の集団が臨戦態勢へと移る。


721:冒険者@稲妻の精霊の加護(アルテシア)

こいつらってなんで集まって来たんだ?

特定の発言が無いと操れないんじゃなかったっけ?


722:冒険者@雨の精霊の加護(アルテシア)

いや、洗脳・レベル1ってなってたからな

鐘の音を継続して聞いてると、このレベル1って部分が上がって行くのかもしれない

鐘の音一つで特定の行動を取らせる事も可能なんじゃないか?


 ロッシュやキース子爵も、アルテシアに対して疑念を抱いていた。

これは、彼等が継続して鐘の音を聞いておらず、洗脳レベルが低かった為と思われた。


 逆に、洗脳レベルが高かったであろう村の住人達は、この領の状況に疑問を持つ事すら許されなかった。


729:冒険者@時の精霊の加護(アルテシア)

レベルが上がって行けば、違う効果も付与されるのかもな

例えば、特定の回数鐘を鳴らした場合、伯爵を守る為に戦え、とかさ


730:冒険者@悪夢の精霊の加護(アルテシア)

邪神の宝玉って、なんらかのスキルを与える物なんだろ?

なんで鐘の音で状態異常を掛けられる?


731:冒険者@鳥の精霊の加護(アルテシア)

音系のスキルかな?

音に乗せて状態異常を付与するとか


732:冒険者@稲妻の精霊の加護(メフィーリア)

いや、邪神の宝玉の効果は『願いを叶える為に必要な力を与える』ってものだよ

てっきりスキルだと思い込んでいたけど、『必要な力』って言うのが神器のような物品って事も有り得るんじゃないかな?


733:冒険者@昼の精霊の加護(アルテシア)

ロクでもねぇ神器があったもんだ


 スキルだったにしろ鐘だったにしろ、今は両方ともスヴェンの手に落ちた。

彼等に打つ手は無くなった事だろう。


 ジリジリと歩み寄る住民達を前に、『ジュエル持ち』達は身動ぎ一つしないまま、その様子を見守る。

『ジュエル持ち』には焦りの色一つ見られなかった。


740:冒険者@風の精霊の加護(アルテシア)

予定外の行動だったけど、作戦の準備は整ってるぜ


741:聖女@癒しの精霊の加護(レーヴェ)

じゃ、作戦開始

街の人を救うのよ


 合図が飛んだ瞬間、それは起きた。

突如、空中に現れる大量の風船。

それだけじゃない、『ジュエル持ち』達がインベントリから風船を出し、魔法などで空に舞い上げる。


 それを、銃や弓を持った者が撃ち落とした。


 風船が割れる甲高い音が一斉に響き渡る。

そして、その中身が巻き散らされるのだ。


 元々、状態異常に掛かった住民が敵に回ると言う想定はあった。

彼等を傷付けず、元に戻す方法が一番のネックだったのだ。


 状態異常の源を抑える為、あれこれと遠回りした理由。

『ジュエル持ち』が操られ同士討ちすると言う懸念だけでなく、住民達を人質にされない為にも、状態異常を引き起こしている原因を突き止めて制圧する必要があったから。

 原因を止められなければ、治療したとしても再び操られた住民達と武力衝突が起きたかもしれないのだ。

それを避ける為に機を待ち続けていた。

結局、作戦の目的はこれが全てなのだ。


 それを達成する為に、ロッシュ達は囮となり、それをサポートする形で『ジュエル持ち』達が集まる。

周辺の村は予め保護し、敵に回る相手を限定する。

原因を突き止めたら、早急に制圧する。

そして、制圧後に状態異常に掛かった街の人々をどうするか。


 空で割られた風船が全ての答え。

あれの中身は、転移や魔法で空に巻き上げられた万能薬。

千を超える数が、今アルテシアの上空に出現していた。


758:冒険者@空間の精霊の加護(アルテシア)

どんどん行くぞー!


759:冒険者@蜃気楼の精霊の加護(アルテシア)

住民が集まってくれたのは都合が良かったな

用意した分、全部を使い切らずに済むかもしれない


 万能薬の元となる材料は、ある程度リグレイド領で作成して貰える目途が付いた。

保管していた分も大量にあるし、ここでばら撒いたとしても底を付く事は無い。

――――そんな理由から、今回集められた万能薬は万を超えた。

それを街中に降らせ、雨のような形で状態異常を治す。

要は物量での力技だ。


 これならば、外に居る住民は全て救える。


 建物内部に居る住民はどうするかと言えば、本来の作戦では花火が打ち上げられる予定だった。

花火の元となるのは、『爆炎姫』の広域魔法。

空で大爆発を引き起こし、何事かと住民が出て来た所で万能薬の雨を降らす。

一気に住民達を癒す、手っ取り早い方法。


788:爆炎姫@火の精霊の加護(アルテシア)

私いらなかったじゃん


789:冒険者@虫の精霊の加護(アルテシア)

まぁ、こうなるなんて予想してなかったしな


 一部不満もあるようだが、作戦は成功したと言えるだろう。

残るは、伯爵邸に潜む者達だけだ。


「目を覚ましたか?」


 武器を構えていた住民達が、それをゆっくりと下ろす。

その顔には困惑の色が濃く、自分が置かれている状況を理解出来てはいないだろう。


801:冒険者@腐敗の精霊の加護(アルテシア)

街から脱出する奴が居ないか見てるけど、今の所は居なさそうね


 この作戦には二重の意味がある。

元々操られていなかった黒幕側の人間が潜んでいた場合、この街の現状を伝えようと即座に行動を開始するだろう。

街から逃げ出し、連絡を取ろうとするはずなのだ。

これは、敵を炙り出す為の作戦でもあった。


821:冒険者@誘惑の精霊の加護(アルテシア)

ここまでは大体予定通りね


『ジュエル持ち』達が、住民を保護すべく動き出す。

彼等が伯爵達に利用されていた事に気付いた場合、暴徒になる可能性だってあるのだ。

まずは落ち着かせ、避難させるべき状況であった。


 そんな中、伯爵邸の方から轟音が響いた。


「なんだ!?」


 振り向いた『ジュエル持ち』達が見たのは、巨大な影。

伯爵邸の屋根を突き破り、中から双頭の蛇が顔を出している。


「ここから離れろ!」


 誰かが叫んだのを皮切りに、住民達が駆け出す。


「怪我する奴も出るかもしれない! 誰か保護に回れ!」

「俺が行く!」

「私も行くわ」


 さすがに切羽詰まった状況には慣れたもの。

蛇を一目見ただけで、『ジュエル持ち』達は行動を開始した。

蛇を駆除しようとする者と、住民を守る者へと別れたのである。


845:死神@沼の精霊の加護(アルテシア)

あれはなんなんだ?


846:黒騎士@魂の精霊の加護(アルテシア)

レオンって奴が呼び出しやがった!


 外に居た者達からすれば、何があったかは解らない。

ただ、倒すべきなのは間違いないのだ。

それだけ解っていれば、彼等は動ける。


867:冒険者@弓の精霊の加護(アルテシア)

イレギュラー発生か?


868:冒険者@竜巻の精霊の加護(アルテシア)

いや、この人数なら問題ねぇだろ

大体予定通りだ




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