どらごん幼女。
朝おきたら異世界だった。
俺が何をしたと言うんだ。こんなのあんまりだ......せっかくの三連休だったんだぞ。
家に引き込もって積んであったゲームの消化、そして馬をピョイする予定だったのに。
くそ、なぜなんだ......。
目の前には果てなく広がる美しくも深く不気味な森林。そして遠目からでもわかる、オークやスライム、ドラゴンなどのモンスター。
あれらが本物だと言うことはわかっている。なぜって、さっき間近でみたからね。
目が覚めたのも付近に迫ったドラゴンの獣臭が凄まじく、びっくりして飛び起きた。
あれは豚と牛と、なんか、あれ、家畜ぜんぶの臭いを足して割って10倍にしたくらいの激臭だ。
冷蔵庫にあるエナドリが飲みたいな......そう思った時、理解した。俺はもうジュースも飲めないのでは?と。
そもそも生きてこの森を抜けることが難しそうだし、お腹も空いた。
わりと起きてから動き回ったし、疲労的なものも出て来ている。この異常事態の原因すらわからずこのまま朽ちていくのか。俺は。
「あー、ごしゅじん。 やっとおきたぁ」
子供の声......!?
背後からしたその声に驚きマッハで振り向く。
「......」
しかしそこにいたのは子供ではなく、よだれを垂らした俺の体の数倍はあるのではないかと言う大きさの、白いふさふさのドラゴンだった。
他のドラゴンと違い臭くないな......むしろ良い匂い。
「......たべるなら、痛くしないで欲しい。 お願いします」
そう言うとその白いドラゴンは表情筋などあるはずもなく、読めるはずもないのに何故かキョトンと驚いてることが察知できた。
「ごしゅじん、食べて欲しいの?」
「......できれば、食べてほしくないです」
「あはは、わけわかんねー! あはは」
めっちゃ笑ってる!
「まあ、いいやー」
そう言ったとたん、白いドラゴンは光輝いた。そしてそのまま堆積がぐぐぐと小さくなっていく。
何が起きているのかも理解が追い付かず、ただ目を丸くして起きている事象を目に焼き付ける。
その光は小さくなっていき、やがて俺の体の二分の一くらいの大きさになってしまった。
そしてそこからあらわれたのは、白いドラゴン......などではなく、ふさふさのポンチョのようなドレスを見にまとった、幼女ドラゴンだった。
角もはえていて、先程の巨大なドラゴンがまさに擬人化したような感じのそんな容姿をしていた。
「ごしゅじんー」
とととっと走り寄ってきて、俺のあしにぼふんと抱きつく。
「......ごしゅじん。 なでろよぉ」
「あ、うぃっす」
絹のように滑らかな銀髪を撫でる。
「ふにゅううう......」
「よしよし」
気持ち良さそうに撫でられている幼女ドラゴン。異世界でドラゴンが幼女にかわるような異様な事態に冷静で居られてるのにも理由があった。
俺、確か昨日この子と公園で話した。多分、この子が原因だわ。
「あの......ここどこかわかる?」
「にゅ? ここ......まかい」
「え、魔界?」
「うん。 ごしゅじん、わたしのお父さんとお母さんさがしてくれるって言った。 だから連れてきた」
「あー......言ったけれども」
確かに言った。公園で一人泣いているこの幼女を見つけ、流石にほっとけないなと思って声をかけたんだ。
そうか、俺はそのせいでこの異常な世界へと連れてこられたのか......。
「ごしゅじん、わたし」
「ん?」
「お父さんもお母さんもさがしてくれるの嬉しい......けど、ごしゅじんがしんだら......嫌だなあ」
「怖いこと言わないでよ」
「だって、ごしゅじん......ここにきてもう七回くらいしにかけてるよぉ?」
記憶にない。あまりの恐怖に記憶消えたのか?
「ごしゅじん、帰りたい?」
「仕事があるからな」
「そっかあ」
「まあ、連休終わる前にかえしてくれ」
「?」
「お前のお父さんとお母さん、さがしてやるっていったの」
「わあ! やったぁ! ありがとう、ごしゅじん」
「ところで、なんで俺ご主人なの?」
「わたしのますたーになったから、だからごしゅじん」
「俺、マスターなの? 君の?」
「そーだよー。 だからますたーと同じ人間の姿になってるん」
「あ、だからなのか......いやよくわからんけど。 何故か府に落ちてしまった」
じっとみつめる幼女の瞳は赤より深い深紅で、魔眼なのか魅力で惹き付けられる。
「ごしゅじん」
「ん」
「ごしゅじんは」
「うん」
「ごしゅじん」
「......うん」
「どゆこと!?」
何の謎かけだ!?
「優しい。 好き」
「あー、うん」
こうして俺は小さな手をにぎりしめ歩きだした。
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