不思議な町 - ホタテのフライとか
「ねえ。起きて」
目を開けると、ハナちゃんの顔。
あ。あれ? 僕の部屋じゃない。
あ。そっか。ここは不思議な町のハナちゃんの家だった。
「んー。あー。早いね」
眠い目をこすりながら目を開ける。
シロはまだ寝ている。
「いい天気だからお散歩いかない?」
ハナちゃんが言うと「お。おさんぽ?」シロが言った。
1秒で目を覚ました。
「うん。じゃあ」
僕はシロと抱き合って寝ていたので、シロの体温であったかいクッションベッドから起き上がった。
毛布もきちんと僕の体にかけられている。
僕は寝相が悪いので、いつもお布団とか毛布がどっかにいっている。
きっと寝ている間にシロがかけてくれたんだろう。
☆☆☆
お外を歩いていると、空にはでっかいホタテのフライが浮かんでいた。
「ねえ。なにあれ?」
その言葉にシロが上を見る。
「うわっ。なにあれ」
ありえないものが空に浮かんでいるのを見て笑った。
「あれ。ホタテのフライっていうの? あたしは何かわからなかった。普通はないの?」
とハナちゃんが言う。
「ないよ。あんなにでっかいホタテのフライ。なんでホタテのフライなんだろう」
考えてもわからなかった。
お散歩でしばらく歩いていると、僕の後ろからいきなり声がした。
「おはよ」
いきなり声がかけられて見たら、後ろにみかんちゃんがいた。
「あ。びっくりした。いつからいたの?」
とシロとハナちゃんが後ろを見て言う。
「さっき。お空を飛んできて、あなた達の後ろに着地したの」
とみかんちゃんが言う。
「ねえ。あそこまで行ける?」
お空に浮かんでいるホタテのフライを指さす。
「たぶん無理。あたしもあそこまで飛んで行こうとしたのよ。でも…いくら飛んでもたどりつけなかったの」
とみかんちゃんが言う。
「そうなんだ」
「なんなんだろうね」
「ねえ。あれっておいしいの?」
最後にハナちゃんが僕に聞いてきた。
「うん。おいしいよ。普通のホタテのフライの大きさはこれぐらいだけど」
と指でわっかをつくって見せる。
「そうなんだ。それでそれで? 味はどうなの?」
ハナちゃんが聞いてくる。
「えっとね。さくさくしていて、中身のホタテがおいしいの」
と言う。
「ホタテというのが良くわからないけど。食べてみたい…けどここにはないのよね。過去にお家で見たことがあるんだけど…」
とハナちゃんが言う。
「なんか。お空を見ていたらお腹がすいてきちゃった」
シロが言う。
遠くのお空を見てみると、白いものが浮かんでいるが、どうみても骨であった。
アニメや絵本に出てくるような骨っぽいもの。わんことセットで絵が描かれるような骨。
でもシロとかハナちゃんは見えてないようだった。かなり遠くにあるみたいだし、目があまり良くないのかも。
☆☆☆
他にも不思議なところがあった。
お家は変わっているし、お家の外側にある砂利は砂利ではなくて、良くみると飴だったり…
あと、お菓子のお家があった。
クッキーでできているようだった。
あと人間はいなくてけもの耳の子ばかり。
動物もいなかった。
お菓子のお家の中に入ってみた。
僕はお家の中のテーブルに乗っているお皿を手にとってパリッと割って食べてみた。
「クッキーだよ」
それを見てシロも同じようにする。
「うん。おいしい」
「どれどれ」
ハナちゃんもシロちゃんと同じようにする。
みかんちゃんは、パリっと割らずに、お口で細かくぱりぱりぱりと食べた。
鳥がくちばしでつついて食べるように少しずつ食べていた。
まわりを見るとカーテンの部分は細い焼き菓子が網になった感じで出来ており、上のレースの部分には、甘いお砂糖を溶かしたものがかかっている。
「あれ食べたいけど。背が届かないよ」
僕が言う。
「わたしがとってあげる」
みかんちゃんが飛び上がり、レースの部分を手にとってパリッと割る。
「あたしもあたしも」
とハナちゃんが言い、シロをカーテンのそばに呼び寄せて、シロの体によじ登る。
肩車みたいな感じでハナちゃんがシロにつかまり、レースの部分を手にとって、僕に手渡してくる。
両手に持って上を見上げていると、ハナちゃんがシロから降りてきた。
人数分のかけらを手に持っていたが、それぞれみかんちゃん。ハナちゃん。シロに手渡す。
そして僕は椅子に座る。
「あたしが座っても大丈夫なのかな? これもお菓子で出来ているんでしょ」
この中で体が大きいシロが気にする。
「大丈夫だよ」
椅子に座った僕が言う。
シロは僕の隣に座る。
ハナちゃんは僕の向かいに、みかんちゃんはハナちゃんの隣に座る。
パリッと細い網になった焼き菓子を食べる。甘いお砂糖を溶かしたものがかかっている。
「あまくておいしい」
「うん。ぱりぱりしてる」
夢の国のよう。
それとシロと会話できているし…
ハナちゃんや、みかんちゃんとも会話できている。
みかんちゃんは、鳥なので人の言葉で話せる。
「あ。みかんちゃん。元の町でも人と話せるんだよね」
僕はせっかくなので聞いてみた。
「うん。教えてもらったの。でも簡単な言葉だけ。意味も分かって言っているわけではないの。この子にはこの言葉。お母さんにはこの言葉。お父さんにはこの言葉のような感じ。でもお父さん好き。
愛してるか? と言われたから、愛してるか? とそのまま返したの。そうしたら…喜んでた」
「へー」
インコに愛してると言われて喜ぶね。
「ねえ。シロ。僕の事好き?」
聞いてみた。
「うん。大好きだよ」
普通に返してくる。
ほんわかな感じでお菓子を食べて、一緒に会話して過ごす。
この町には他に何かあるんだろうか。
「ねえ。探検に行かない?」
僕は言ってみた。
「いいわね」
「お散歩にもなるし」
「あたしも参加しようかしら。まだお家の人帰って来ないし」
ハナちゃん。シロちゃん。みかんちゃんが言った。
なので僕達は探検に行くことにした。
☆☆☆
歩いて行くと川が流れていた。
よく見ると、お魚が泳いでいた。だけどシャケのフライが泳いでいた。
「ぷっ。なにあれ…フライが泳いでいるよ」
吹いてしまった。
「普通だと思ってた」ハナちゃんが言う。
「川で遊ぶの楽しいよね」シロちゃんが言う。あまりシャケのフライには興味が無いようだった。
「そうなの」
人と動物の違いかな。
さらに歩いて行くことにした。
畑。
畑は遠くから見ると茶色っぽかったが、やっぱりと思った。
米とか麦とかかと思ったら、小ぶりのエビフライが稲のようになっていた。
「ぷっ。なにあれ…エビフライかよ」
とってもちっちゃいエビフライがいっぱい、豊作のように実っていた。
「なに。あれ。エビフライっていうの?」
「ふーん」
「そうなんだ」
と言う子達。
「普通のエビフライはこんなの」と指で大きさを作って言う。
そして、中身はエビという生き物。それをフライにしたものと解説した。
「フライというのが良くわからないわね」
「茶色のさくさくのやつ」
「あたしはあまり興味はないわね。みかんのほうがいい」
みかんちゃんが言う。
みかんの皮が好きだと言う。実には興味がない。ミカンの白いすじも好きだと言う。
そのまま歩いて行くと森に出た。
切株があった。
ひょっとしてお菓子かと思ったけど、普通の植物だった。
フライとかの食べ物を見ながらあるいて来たことと、遠くまで来たので僕のお腹が鳴った。
「お腹すいたの?」
みかんちゃんが聞いてくる。
「うん」
「ちょっと待っててね」
と言い、みかんちゃんは飛んでいった。
しばらく空を見ていると、みかんちゃんが戻ってきた。
「はい。みかん」
「はい」
「これ」
いっぱいのみかんをかかえてきた。
「これ。どうしたの?」
聞くと「もうちょっと行ったところの木になっているの。でもおかしいのよね。
みかんじゃないのもあるの」
と言う。
みかんちゃんが持ってきたものはどう見てもみかんに見えるんだけど。
僕はむいてみた。
すると「あれ? みかんじゃない」
みかんの皮の中から見えた中身は、おむすびだった。
「あ。やった。あたしのはお肉の団子」
「あたしのは普通にみかんだったわ」
みかんちゃんはいっぱいみかんを持ってきていたのでそれぞれ3個ずつ手にとって食べた。
2個目は卵焼きが入っていた。3個目はみかんだった。
僕はシロを見てみた。
肉団子を食べていた。
みかんちゃんは、みかんの皮を食べていた。
それとみかんの中身の白いすじをとって、白いすじから食べていた。
最後に中身のみかんを食べている。
つまりまるごと食べていた。
「ねえ。みかんの皮。食べるのへんじゃない?」
聞いてみた。
「別に変じゃないと思うんだけど…ねえ。どうかしら」
みかんちゃんが聞く。
「別にいいんじゃない?」
「うん」
とわんこの2人が答えた。
気にしていないようだった。
お食事をしてからもっと遠くへ行くか迷ったとき。
「ねえ。もう帰ったほうがいいかも。天気が気になるのよね」
みかんちゃんが言った。
お空のことはみかんちゃんに任せることにした。
☆☆☆
帰り道。
畑を通り、川を渡りお家へ戻る。
お家が近くなってきたとき、雨が降り出した。
「降ってきた」
お家は誰でも入っていいお家で住人がいなかったりいたりする。
そばのお家に入ることにした。
お家に入ると2人いる。
「わ。びっくりした」
お耳が大きいというか、ウサギのお耳をしてる。
「雨が降ってきたの」
ハナちゃんが言う。
「おじゃまします」
僕は中にいる2人に言う。
「いいよ。濡れちゃうし… ゆっくりしてって」
と男の子が言う。
男の子は女の子のお耳と頭をなでていた。
ゆっくり。まったりとしている2人。
この家にも座り心地が良さそうなクッションベッドがあった。
「ここ。いいかな?」
僕はクッションベッドを見る。
「いいわよ。いっぱいあるし」
「うん」
シロと一緒にクッションベッドに座る。
外から聞こえる雨の音。
雨。空から飴が降ってくるということはないようだった。
ぱらぱらという雨の音。
まったりと頭をなでているうさ耳の男の子。
それを見ながら僕はシロと一緒にクッションベッドの中に座っている。
隣のクッションベッドにはハナちゃんとみかんちゃんが一緒に入っている。
ハナちゃんは「ふわふわね」みかんちゃんをぎゅっとして言う。
「天然の羽毛よ。手入れしているからふかふかなのよ」
うわぁ。あっちもすごいなあ。
こっちはシロがいるし…
僕はシロをぎゅっとした。
ゆったりとした時間が流れていく。
雨はまだ降っている。
お外も暗くなって、もうすっかり夜。
このまま泊まっていくことにした。
☆☆☆
次の日。雪が降っていた。
でもおかしい。
普通の雪ではなかった。
色がついている。
淡いピンク色。
世界は淡いピンク色のパステルカラーに染まっていた。
しんしんと降っている雪。
「うわぁ」
僕はお家から外に出て言った。
「綺麗」
「なんか。世界が優しい感じね」
うさ耳の男の子と女の子にお礼を言って、お外に行くことにした。
お外を歩いていると、いろいろな子がお家から出てきた。
「こんにちは」
「こんにちは」
みんな人間ではないけもの耳の子達ばかり。
体がちっちゃいわんこ少女。
髪の毛がネズミ色のネコミミの男の子。
そのそばにいるお耳が丸い形の男の子。
うさ耳の子。
最初にハナちゃんと会話したお店の前までやってくるといっぱい人がいた。
いろいろな子達からいろいろな話を聞いた。
「お外の黒いものが怖いの。きっとカラスね」小鳥のピコちゃんが言う。
「あたしは怖くないわよ。お母さん大好き。あたまいっぱいなでてくれる」
鳥のコンビの子が言う。
「がおー。あたしが食べちゃうわよ」ネコミミの少女が鳥のコンビに言う。
「そう。あなた。あたしより体が小さいから怖くない」
「カラスのほうが苦手」
ネコミミの少女は僕と同じぐらいの体の大きさだった。
僕はまわりにいる子達に比べて体が小さいほう。
「ねえ。なんで僕のそばにいつも寄ってくるの?」
男の子がネコミミの女の子に言う。
「え? だって。いいにおいがしているし…まあ、本能ね。あなたハムスターでしょ。あたしはネコ」
「いや。だっておちつかないし…」
すりすーりとしているネコミミの子。
ハムスターの子は立ち上がり、僕の方に来て、僕の体の後ろに隠れる。
ネコミミの子も立ち上がり、僕のほうに来る。
僕の前の右のほうにネコミミの子が行くと、後ろにいる男の子は僕の後ろの左のほうに移動する。
ネコミミの子が僕の前の左に行くと、後ろの男の子は後ろで右のほうに移動する。
「じゃあ。えいっ」
ネコミミの女の子は僕に乗っかってきた。
後ろにいる男の子も一緒に倒れる。
むぎゅ。僕の顔にネコミミの子の体が乗っかる。
猫っぽいにおいがした。
僕の体の上を移動して、ハムスターの男の子を捕まえる。
「つかまっちゃった」
ぎゅっと抱きついてすりすりしているネコミミの子。
でもすりすりしているだけであった。
僕は体を起こして2人を見る。
「仲がいいね」
いいのかな?
☆☆☆
動物感たっぷりの子達と一緒に過ごす。
いろいろ過ごして3日が過ぎた。
お庭の前に僕が通り抜けることができる光ったものが現れた。
「ここから帰れるわよ」とハナちゃんが言う。
「あー。面白かった。みんなありがと」
「ありがとう」
僕とシロはみんなにお礼を言う。
通り抜けると僕達の町に帰ってきた。
隣を見るとわんこのシロがいた。
首輪も普通にしている。
さてと帰ろう。
僕はシロに言った。