始まり - 不思議な魔法磁石
僕は不思議なお店を探していた。
どこにあるんだろう。
一週間前のとある日。
僕はわんこのシロをつれて散歩をしていた。
もう小学1年生だ。
大人になった。
体の大きさはシロのほうが大きいが、シロはわかってくれている。
シロが走っていって引っ張られるとかはない。
僕が車道に近づきすぎると、間に入ってくれる。
そんなとき、あまり行かない裏の路地にお店を見かけて近づいてみた。
ペットと一緒に入ることができるお店。
魔法の国から出て来たかのような外観のおしゃれなお店だった。
「おこづかいもらったばかりだから入ってみる?」
シロに聞くと、わんと言った。
☆☆☆
「こんにちはぁ」
と言いながら入ると、他にお客さんはいなかった。
とっても優しそうなおばあさんがいた。
普通にジュースとお菓子のセットを頼んだ。
シロにもわんこ用のお菓子を出してくれた。
「おいしい?」
シロに聞くと、わんと言った。
「わんね。シロの言葉をわかるようになりたいな。会話したい」
と僕が言うと、お店のおばあさんが「そうなの? できるかしら」
とおばあさんが言い、ポケットからおしゃれなデザインの小物を出して僕の目の前に置いた。
「これは?」
僕が聞くとおばあさんは「これは魔法の方位磁石。方位磁石ってしってる?」
とおばあさんが聞いてきたから答えた。
「たしか、北を向くんだよね」
近所のお兄さんから教えてもらったばかりであった。
「そう。正解。お利口さんね。でもこれは魔法の方位磁石。これが示す方向へ進むと、不思議な町へ3日間だけ行けるの。3日間。不思議な町で過ごすと、3日前のこの町に戻ってくるの。試してみる?
ちょうど今夜は満月だからエネルギーが今夜で満タンになるの」
とおばあさんが言った。
「へー。面白そう。ところでどんな町?」
と僕が聞くと「シロちゃんと一緒に探してみたらどうかしら。きっと気に入るわよ」
とおばあさんが言い、不思議な魔法の方位磁石を僕の手に握らせてくれた。
お店を出るときに、おばあさんは「終わったら魔法の方位磁石を返してね」と言ってにこにこしていた。
☆☆☆
僕は家に帰り、魔法の方位磁石を自分の部屋のまどぎわに置いた。
カーテンをちょっとだけあけて、月明かりが当たるようにした。
次の日。
シロと一緒に魔法の方位磁石を持って散歩に出た。
天気は晴れだった。
☆☆☆
このあたりは田舎のほうの住宅街。
車もあまり通らない。
僕は魔法の方位磁石を見ながら道を歩く。
普通は北をしめすだけだが、くるっと別の方向を向く。
見ると道が続いていて、シロと一緒に歩いて行く。
方位磁石を見ながらあるいていると、矢印がくるっと一回転した。
今来た道を示している。
後ろ?
僕は後ろを振り返ってみた。
すると、見たことがない場所だった。
からん。
横から音がした。
見ると、シロの首輪が外れて落ちていた。
シロはいなくて、1人の女の子がいた。
白い髪の僕より少し背が高いかわいい女の子。
「あれ? 君は?」
きっと…あ。知ってるこの子。
「あ。あ。あたし… ねえ。ことばわかる?」
白い髪のかわいい子が話かけてきた。
その子は僕をじっと見てからいきなり僕を抱き上げてぎゅっとしてきた。
その子を背中ごしに後ろを見ると、見覚えのある白くてふわふわのものがお尻から生えていた。
「ひょっとしてシロ?」
「うん。人間になっちゃった。人間というか半分人間。しっぽはそのままだよ。あとあたしのお耳はある?」
聞いてきた。
見上げると、見覚えのあるシロのお耳が人間の頭から生えていた。
けもの耳というやつだ。
近所のお兄さんが言ってた。
「本当にシロなの?」
聞いてみた。
「うん。そうみたい。あのね。あなたが幼稚園に行っていたときなんだけど…おかあさんのティーカップ。割っちゃったわよね? それをあたしの犬小屋に隠してたの覚えてる?」
シロが言った。
「あっ。忘れてた」
怒られると思って、隠したのだった。その後。お母さんからも聞かれなかったので忘れていたのだった。
「あのカップどうしたの?」
僕が聞いてみると…「あたし。見てたから… きっとあなたが怒られると思って、壊れたカップなんだけど、あたしが穴を掘って埋めたの」
シロが言った。
「そうなんだ」
わんこだし。
僕はシロに少しかがんでと言った。
そしてシロの頭を見た。
たしかに見覚えのあるシロのお耳が人間の女の子の頭の上のほうについている。
頭を撫でてみた。
ふさふさしていた。
人の髪の毛と違う感触。
「きもちいい」
シロが言って目を閉じる。
しばらくシロの頭をなでていたが、まわりを見てみる。
「ここ。おばあさんが言っていた所?」
町だ。
見覚えがあるような無いような不思議な町。
道は見覚えがあるんだけど、建物は全く違う。
まるでおとぎ話に出てくるかのようなお家が並んでいる。
「ちょっと歩いてみない? おさんぽ」
シロが言った。
基本わんこだからお散歩が好き。
シロが鼻を動かした。
「あ。あれ? あなた近所のハナちゃん?」
向こうから歩いてきた女の子。
その子もシロみたいに、頭に犬のようなお耳がついている。お尻にも尻尾がある。
そのハナちゃんらしい子の髪の色はブラウン。
たしかにお散歩中に見たことがあった。
でも近所にいたハナちゃんは死んじゃったはず。
「あら。こんにちは。シロちゃん。なんでここにいるの?」
とハナちゃんが聞いてきた。
「えと。おばあさんから魔法の方位磁石をもらって、見ていたらここに来たの」
シロが言う。
シロは僕が生まれる前からいるわんこ。お姉さんがわりだった。
「そう。あっちにみんないるわよ。たまたま来ている子とかいるし…
あたしは…お散歩中だけど…あとで寄るわね」
と言って歩いて行った。
「ねえ。ここって。死後の世界なの?」
ちょっと怖くなった。
「さあ。どうかしら? でも…あっちに行ってみましょう。声が聞こえるの」
シロは指で前を示した。
シロはわんこのお耳を前に向けて言う。
僕には声は聞こえなかった。
☆☆☆
しばらく歩いて行くとお店の前に出た。
ずっと前に取り壊されてしまった昔ながらの駄菓子屋さん。
お店の人はいない。
だけど…かわいい子ばかりいる。
「あなた。近所のクロちゃんね。あ。あなた。ひょっとしてインコのみかんちゃん?
それと…あたしより体が大きいチビちゃんね」
シロはお店にいる人達を見分けるのではなく、鼻でにおいをかいで言ったみたいだった。
「うん。遊びに来たの」
「あたし。お家の人が出かけている間にだけ、ここの町に来ているの。普段は鳥かごの中だから」
「そう。なんであたしの名前なんで『チビ』って言うのかしら。こんなに体が大きいのに」
と猫のクロちゃんと、インコのみかんちゃん。背が大きいチビちゃんが言った。
「ねえ。ちょっと前にネコのクロちゃんを見たし、インコの声も聞こえるから死後の世界じゃないみたいだけど…」
僕がシロに言う。
「どうやらそうらしいわね。あたしも昨日の散歩のとき、電柱のにおいをかいだら、チビちゃんの新しいにおいがしたし」
シロが言う。
人間はそんなことしないし…間違いなく僕が住んでいる町だとわんことかネコとかインコの子がここにいた。
だから不思議な町。
「ねえ。君達はなんでここにいるの?」
僕が聞くと…
「たまにね。この町へ来る事ができる入り口が開くの。ちっちゃいんだけどね。人には見えないの」
「そうそう。こっちに来るとね。体が大きくなって立って歩けるの。人間の食べ物が食べることができるの。あ。そうそう。お菓子あるの。食べる?」
ネコミミのクロちゃんが言い、奥へと歩いていって、お皿を持ってくる。
見たことがないお菓子。
絵本に書いてあるようなカラフルでとってもおいしそうなお菓子だ。
「うわぁ。おいしそう」
「たべていいの?」
僕とシロが聞くと「いいわよ。いろいろあるの」
とネコミミのクロちゃんが言うので食べることにした。
「うん。おいしい」
「あ。なにこれ。こんな味がするの?」
シロがお菓子を食べて言う。
わんこと人間だと食べ物の味の感じ方が違うようだった。
けもの耳の子達と一緒にお菓子を食べる。
みんなかわいい。女の子や男の子もいるけど、人間は僕だけ。
「ねえ。僕は人間なのかな? 尻尾がお尻から生えていたりして」
言いながら自分のお尻や頭のてっぺんをさわるがごく普通だった。
みんなの言うことを聞いて過ごす。
「あたしの旦那様。すごくいいの。あたしが頭をかいて。と言うと指でなでてくれるの。
最初は下手だったの。でもうまくなったわ」
とみかんちゃんが言う。
「あたしのお家の人。最近ね。猫缶ていうの? 食べ物なんだけど別のに変えたのよ。前のがお気に入りでおいしかったんだけど…今のはちょっといまいちなの」
「そうなんだ」
ネコミミのクロが言いながらお菓子を食べている。
言いながらネコの尻尾を器用にうごかして、自分のあたまをかいていたりする。
僕はそれを見ていた。
「ねえ。聞きたいんだけど…次のお注射はいつなの?」
「え?」
「あっ」
「あれ。怖い」
「いや」
予防接種の話かな。
「うん。僕はよくわからないよ。まあ春になったらだからまだだね」
と言う。
「そうなの」
「まだ先なんだ」
「良かった。いいこと聞いた」
お注射。みんな怖い。僕もだけど… 泣いていた子供もいるし… 鳴き声を聞くと僕も泣きそうになるけど、我慢してる。
「ねえ。あたま。かいて…てっぺんのところ。それとお腹も」
シロが言ってくる。
「いいよ」僕はシロの頭をなでてから、お腹をなでてみる。
見た目は人間の女の子だから触っていいのかと思ったんだけど、この子はシロだから大丈夫。
お腹をしばらくなでてからシロの顔をみると、ほにゃんとなっていた。
後ろから風が来ると思ったら、シロの尻尾が動いていて風を起こしていて、僕の体にあたっているようだった。
「仲。いいわね」
ネコミミのクロが言う。
「うん。僕は生まれる前からいたみたい。お姉さんがわりかな」
「そう。あたしがお姉さん」
僕とシロが言う。
みんなお菓子を食べていると、ハナちゃんが来た。
「ねえ。今夜泊まるとこある?」
ハナちゃんが聞いてきた。
お外を見ると、カラスの声が聞こえていて、夕方っぽい。
「あ。僕達ここに来たけど、帰ることできないのかな? どこに行けばいいんだろう」
僕が言う。
「あのね。おばあさんが言ってたでしょ。3日間って… その間ここにいることになるんだと思うの」
お姉さんのシロが言った。
「そっか。おばあさんの言うことが本当なら、3日後に帰ることができるんだよね。それなら安心。シロも一緒だし」
「うん。ずっと一緒」
隣に座っているシロがしっぽを僕の膝の上にのせてきてぱふぱふとした。
ふっさふさのしっぽ。
僕はシロのしっぽを優しくなでた。
「あなた達。仲いいわね。じゃあ行きましょ」
ハナちゃんが言う。
☆☆☆
僕の家のほうに続く道路に似ているところを通る。
お家がある。
「ここ」
犬小屋を大きくして、お姫様が住んでいるような感じにしたお家があった。
「すごいね」
天井も高く、住みやすそうなお家。
部屋の中は、すごくでっかいふかふかのクッションが数個置いてあった。
「ああ。これいい」
シロはふかふかのでっかいクッションにつっこんだ。
わんこ用のクッションベッドを大きくして人間サイズにしたものだった。
「こっち来て。すごい。一緒にねよ」
すごく気に入ったようだった。
「いいの? 勝手にシロが…」
僕が花ちゃんに聞くと「いいの。あなたもシロちゃんの隣に行ったら?」
とにこにこして言うハナちゃん。
「じゃあ。それっ」
僕はシロの隣につっこんだ。
ふっかふかだった。
それに寝心地が良さそう。
シロが僕にだきついてきて上に乗ってきた。
シロのにおいがちょっとだけする。
僕はシロの背中をなでる。
「ごはんまでテレビを見てて」
テレビもあるの?
リモコンを手にとってスイッチを押すハナちゃん。
普通のテレビ番組をやっていた。
夕方6時になり、いつも見ているアニメをやっていた。
「あ。これ。いつも見てるやつだ」
僕が言う。
「そうね。一緒に見ましょ。今だったら内容がわかるかも」
シロが言う。
モンスターを召喚して、仲間と戦うやつだった。
「おー。いけ。やっちゃえ」
その後。主人公がやられてしまう。
『ねえ。あたしが協力してあげる』
と主人公がやられてしょんぼりしていると、別の女の子が声をかけてきた。
そしてアニメはいいところで終わった。
☆☆☆
「ごはんできたの」
ハナちゃんが言う。
カレーであった。
「すごい。お料理できるの?」
シロが聞く。
ハナちゃんは「えとね。ごはんは教えてもらって、炊けるようになったんだけど…カレーはこれ。お湯で温めるものなの」
台所に置いてあるレトルトのパッケージを見せるハナちゃん。
「そうなんだ。あ。あれ? あー。それ…見たことがある…食べたい」
いきなりシロが言う。
僕は缶を見る。
ずっと前にお店で見たことがあるような無いようなものだった。
「あ。見つかっちゃった。これ。この町にあるの。食べる? 犬用の缶詰だけど。あとカリカリ」
ああ。わんこ用の缶詰か。
僕は食べたことないけど…人間が食べても大丈夫なのかな?
カレーは人間用のレトルトのなので普通であった。
シロはわんこ用の缶詰を食べていた。
「ああ。懐かしい。これしばらく前から出てこなくなったのよね。ずっと前。1週間に1回食べてたのに…」
とシロが言う。
えーとどうだったかな。このメーカー。たしか倒産したとニュースでやっていたかな。
倒産の意味がわからなかったからなんだろうと思ったんだけどね。
別の犬缶が家にあるのを見たことがある。
そういえばカリカリ。おいしそうに食べているよね。
それとジャーキーとか。
家のお父さんが、間違って食べてたことあったっけ。一緒に大笑いしたのを思い出した。
けっこううまいぞと言っていた。
その後。お風呂にもいれてもらった。
なんでもできるね。ハナちゃん。ホント。元わんこなの?
☆☆☆
寝る時間になったので、シロと一緒にクッションベッドで寝ることになった。
「はい。毛布使って」
「ありがと」
僕はシロと一緒に目をつぶった。