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54宣伝回


 夏休み後半に入るとこれといったイベントはなく、夏休みが何度も繰り返すこともなかった。


 日課である朝の槍の鍛錬を代田と終えた麗華は、シャワーを浴びた後朝食をとり、2学期初日元気に登校した。入学式や卒業式はセレモニーとして意味があるが始業式や終業式など無意味だと思っている麗華だが今回は珍しく登校したようだ。


 とはいえ、始業式が終わるはずの10時のご登校である。



 始業式が終わるよりも少し早く教室に到着した麗華は、代田の淹れてくれた紅茶を飲みながら、先日何気なくネットで購入した紙の小説を開いて読んでいる。小説のタイトルは『ロドネア戦記、キーン・アービス -帝国の藩屏はんぺい-』。名まえ通り戦記もののファンタジーだ。作者の前作はアニメにもなっているので、そこそこ売れた作家のようだ。アニメのタイトルは『巻き込まれ召喚』。たしか法蔵院グループがそのアニメのスポンサーになっていたはずだ。10月から第2クールが始まるらしい。面白いようなら、BDを買ってみてもいいかと思っている。


『ロドネア戦記』は9巻完結だが、今日麗華が持参したのは2巻と3巻の2冊で、2巻を読み終わったところで、教室に生徒たちが戻ってきた。


 それからしばらくして担任の教師が現れホームルームが始まった。大事な連絡があれば代田がちゃんと聞いているので、麗華は気にも留めず紅茶を飲みながら『ロドネア戦記』の第3巻を読み進めていった。




 こちらは爺咲花太郎の教室。花太郎を含め生徒たちが席についてしばらくして担任の六道あやめが教室に入り、ホームルームが始まった。


「この夏休み、みなさんは、いろんな経験をしたことでしょう」と六道あやめ。


 その六道あやめが少し顔を赤らめ、


「みなさんに報告することがあります。

 実は、先生、季節は真夏で暑かったんですが、この8月に結婚しました!」


 そこでクラスの女子たちが、「キャー」とか言って騒ぎだした。


「名前も、安岡あやめに変わってます」


 さらに「安岡先生、キャー!」。今度は男子生徒も面白がって「キャー」に参加している。


 剣道部員の花太郎はあやめが結婚したことはもちろん知っていたので「キャー」には参加していない。


「ダーリンは教師をやめて専業主婦をしてくれというのですが、それは断りこれからも教師を続けます。そう言うことなので、これからは安岡先生ということで、よろしく。

 今日のホームルームはここまで。

 先生はダーリンのために早帰りするから。バイバーイ」そういって六道あやめあらため安岡あやめは生徒を置いて、バタバタと廊下を走っていってしまった。


 残された教室では、


「キャー、ダーリン!」「ダーリンが来たー!」などと大騒ぎになったのだが、騒ぎの収まったところで生徒たちもそれぞれ教室から出ていき、花太郎も教室を出てアパートに帰っていった。


 夏休み中の剣道部の部活はあやめの結婚式と新婚旅行の間はもちろんなかったが、その後もとびとびになってしまっている。あやめの剣道にかける情熱はすっかり冷めてしまったようだ。


 花太郎は羽田空港でのテロ騒ぎで、巻き込まれた客に対してアルバイトにも関わらず適切な対応をしたということで、チェーン店の本社から賞状と見舞金も兼ねた金一封を頂いている。その金一封が高校生の花太郎にとってはかなりの金額だったため、懐は温かい。


 自宅のアパートに帰る前に、冷房の効いた本屋にでも寄って面白そうな漫画でも立ち読みしてみようかと思い、学校から自宅までの途中にある本屋に寄ることにした。


 暦の上では9月は秋だが、気温は真夏だ。汗をかきながらもなんとか本屋のたどり着いた咲太郎は、入り口の天井から吹き付ける強い冷気で生き返り、額と頭の汗をハンカチで拭った。


 汗が引いたところで、コミックコーナーに向かったが、途中、台の上でラノベが平積されていた。


「ラノベって表紙がハデハデで持ち歩けないよな。もう少しおとなしめの表紙じゃないと人前じゃ恥ずかしくて表紙を隠して読むことになると思う」


 とはいえ、ちょっと、いや、かなりエッチっぽいラノベの表紙は人を引き付けるものがあることは確かだ。


 ここで咲太郎は考える。


『こうしてみると、ラノベの主人公は全員女の子にモテるってことだよな。おっさん主人公だって女の子にモテてる。

 これって、単に作者のエッチい妄想を書いただけなんじゃないか?』


 咲太郎はラノベ界の真実に近づこうとしていた。だが、この真実は誰もが知っているが誰も決して口にしてはならない真実だった。


「おっ! この表紙は渋いじゃないか。それなりに女の子も登場するようだがエッチいところがあんまりないぞ。俺的にはこういった方が好感が持てる。主人公がスケルトンじゃ女の子関係ないものな」


 花太郎は平積みのラノベの中から1冊の本を手に取った。


 その本のタイトルは、『闇の眷属、俺!』。手に取ってあらすじを読む咲太郎。


 なぜかゾンビになってしまった主人公が司法解剖から逃れるため病院から逃げ出し、トラックに轢かれて異世界転生したら、ゾンビ転生だった。そこから、モンスターを斃しすこしずつ進化していくという。


「面白そうじゃないか。よし買った!」


 全3巻のラノベだったが、ハズレだったら痛いので、1巻だけ手にしてレジに向かいながら、表紙についた帯を見ると、あのアニメ『巻き込まれ召喚』の原作者のラノベだった。


 咲太郎は『闇の眷属、俺! 第1巻』を売っていた平積台に戻り、第2巻、第3巻も手にしてレジに向かった。


 ラノベ3冊を空のカバンに入れて、アパートに帰った咲太郎は、部屋のエアコンを入れて、勉強机の前の椅子に座って『闇の眷属、俺! 第1巻』を読み始めた。


 2時間ほどで1冊を読み終え、あとがきを見た咲太郎。


「面白かったー。

 あれ、これってシリーズものだったのか。

 セカンドシリーズが『常闇とこやみの女神』、最後のシリーズが『秘密結社、三人団』。最後のシリーズはまだ完結してはいないようだ。1巻を読んだから闇の眷属はなんとなく理解できるが、それがなんで女神に? さらに秘密結社とは。謎ではあるが読んでいればいずれ謎は解ける。

 もっと早く知ってればよかったー」




書くことがなくなって、とうとう自作の宣伝だけで終わってしまいました。

いつ投稿できるか分かりませんが、次話から『文化祭編』になります。


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