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フラグ?知らない言葉ですね

「いえ、大丈夫ですわ………ですが、本当に貴方が千器様だという証拠が欲しいのも事実ですの……疑っている訳ではないのですが、まだ確信には至っていませんの」


 証拠ねぇ。

 

 俺は自分の首にあるバーコードに、横線を入れたような刻印を一度撫で、どうしたもんかと悩む。

 証拠って言うとどうしてもあいつらに話してもらうのが一番手っ取り早いと思うんだけど。


「ユーリ殿。ユーリ殿が消えてから発売された伝記に、千器の倒した古代種の話しが乗せられているのだよ。中でも、モンテロッサ戦と、マセト戦は破格の人気で、その話だけの小説が発売された程なのだよ。その話をしてあげればいいと思うのだよ」


「まて。さっきの千器伝説とか伝記とか、一体この時代の連中は俺のことをどう思ってるんだ。そしてどうしたいんだ」


「ミハイルとあの夫妻が書いた小説がバカ売れしたのだよ。それ以降千器と言うのは特別な力を持たない者たちのヒーローなのだよ。今では特別な力があろうと関係なく大人気なのだよ」


「あの親ばか生きてりゃ殺してやったのに……」


 俺とエヴァンが再び無駄話を始めたせいで、ローズが完全にキレた。

 顔を真っ赤にして、おぼつかない足取りで俺に迫り、胸倉をつかんで、顔を寄せてきた。


「しゃっしゃとしょーこを出すんれすのよぉ」


 あれ。これ酔っ払いじゃね?なんで酒飲んでんの?さっきジュースも出てきたよね?ってかなんでそのジュースをカリラが飲んでるの?バカなの死ぬの?


「はぁ、もういいや。“チョコチ”」


 面倒になったので、ママンに引き取ってもらおうと、チョコチをこの場に呼び出したら…………泡まみれの裸の女が登場した。

 ジョニー爺さんが椅子からひっくり返り、エヴァンが鼻血をまき散らし、俺の顔面にはカリラの鋭い正拳が突き刺さった。

 もうね。なれたよ、こういうの。ってか人妻じゃさすがの俺も守備範囲外だわ。


「…っ!?………精霊の羽衣」


 霊装を発動し、真っ裸から、黄緑色の羽衣を身に纏い、クリーム色の布を巻き付けたような格好になったチョコチ。さすが俺に呼ばれ慣れてるだけの事はあるね。だから早くユーリさんの両頬を残像でも見えそうな速さで殴打するこの奴隷を止めてくれない?なんでこの世界でデンプシーロール喰らわないといけないの?異常な回転率の連打で足浮いてっかんね?

 そもそもラッキースケベが何で人妻なの?俺を犯罪者にしたいの?流石のユーリさんも弟子で人妻は憚られるよ?


「何となく状況は察しました。それと、エヴァンさんお久しぶりです」


「久しぶりなのだよ」


 その後、デンプシーされた俺は酒場の床に放置され、チョコチは俺が千器であることを話してくれた。

 そのおかげで、みんな俺のことを本物だと信じてくれたみたいだ。

 弟子の娘に身柄を保証されて、弟子に身分を証明してもらうクールな師匠だぜちくしょう。


「イイですか?この方が千器であるというのはくれぐれも他言しないでください。ハッキリと言えば戦争になります。それこそ、世界そのものを巻き込んだ、未だかつてない規模の」


 あり得るから怖いよね。よくよく考えれば、俺個人にその価値があるんじゃなくて、俺のコネクションやパイプにこそ価値があるんだもん。当時だってランバージャックが正式に俺と交友を結んでるって発表するまでは、色々なところから声を掛けられたし。

 当然そいつらの目的は俺ではなく、キルキスだったんだけど。何と言っても、たった一人で世界と対等以上に戦える存在だからね。まあ古代種とかの例外は除くけど。

 何しても無傷だし、衝撃も毒も呪いさえ効かない。それなのに、燃え移る氷とか、質量のある炎なんか最悪でしかないし、それをほぼ永久に最大出力で打ち続けられるんだからもうたまったもんじゃないよ。

 限定空間及び、周囲30メートル内の全てを支配するマッカランが何にもできずにぼろ負けするはずだよ。

 支配したはずの相手が悠々と攻撃してくるんだしね。

 矛盾ってのは干渉力の高さが最も危険だったわけだし。他のどんな個性よりも優先順位が高く、干渉力の高い個性だったからこそ、あそこまでの理不尽だったわけだ。


「あ、そうだ。ローズの事はエヴァンに任せるけどいいか?俺は他の装備を探すついでに、なまった体を少し叩きなおさねえといけねえからさ」


 一緒になって酒を飲み始めたチョコチに向かってそう言えば、気分がいい様子のチョコチが話し半分に頷いてきた。


「エヴァンさんもいますし、懐かしい話でもしましょうよ!前みたいに私が仲間になる前の冒険とか聞かせてください!」


「まぁ、それもいいかな。それで?どんな話が聞きたいんだ?」


 酒の回ってきたチョコチだけではなく、赤い顔をしたローズや、冷静なカリラ、鼻に詰め物をした爺さんに、何故かあのウェイトレスまで加わって俺の周囲を固め始めやがった。


「チョコちゃんがいるのなら、キルキス殿がユーリ殿に求愛を始めた…………要塞龍の討伐の話しが良いのだよ」


「要塞龍か、まあ確かにあれ以来キルキスに命を狙われるようになったけど…………って、あれって求愛だったのか…………頭イカレてんじゃね」


 まあたまにはいいかな。少しだけ昔の、懐かしい話をしよう。俺からすれば、30、40年くらい前の、こいつらからすれば、500年以上前の話しだ。

 詰まらねえかもしれねえけど、酒の肴にゃ丁度いい。


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