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お前もスムージーにしてやろうか

「一回落ち着こう。ね?中でゆっくり話そうよ。あと腕治して欲しいの。肉腫無理やりぶっちぎったから肉とかグズグズだし、それより今しがた折られた指がもう頭おかしくなるくらい痛くてさ」


「にっ、肉腫を無理やり!?あなたバカなんですの!?」


 ようやく反応を見せたローズが、未だに口を開けて呆けているジョニー爺さんの顔面に“グー”で気合を入れ、鼻と口から出血し、ダバダバ血を流しているジョニー爺さんが俺の治療をしてくれた。

 ジョニー爺さんは普通の回復魔法も使えるようで、傷は瞬く間に塞がり、指はくっついたが、あの奴隷マジでやべえという俺の心の傷は回復魔法ではどうにもならなかった。いい加減フラグ立てよ……どんだけカッコつけたと思ってんの?肉腫引きちぎる時、実は手のひらに陣使って、ファイヤーアイアンクローにしたんだよ?正直痛すぎて涙出てきたし、ションベンもちょっと出たけど、それでも頑張ったんだぜ?フラグの為に。

 それなのにさ、なんで“ご都合主義的恋心(テンプレチョロイン)”が発動しない訳?この世界頭おかしいんじゃねえの?なんで悉く女が攻略難易度SSなんだよ。何回死に掛ければフラグ立つんだよ。


 治療の終わった俺は、同じく治療を終えたカリラと、爺さん、そして唯一無傷だったローズに周囲を包囲され、その真ん中で正座をさせられていた。

 もうね。あれだわ。浮気バレた夫の感覚。やましいこと隠してて、それがバレちゃった的な奴。まあ結婚した事ねえけどな。ってかまだ童貞じゃド畜生!!!!


「それで………どういうことか説明してくださるのよね?」


 代表して、ローズが俺の前に出て来て口を開いた。ナニコレ、尋問ですか?仮にもあなたが憧れる千器ですよわたし…………。


「ぼ、ぼくもせんきみたいになりたいなーって…………あははははは」


「ぐちゃぐちゃにされて馬の糞と一緒に捨てられんのと、ここで大人しくゲロっちまうの、好きな方を選ばせてやります」


「私が千器です。500年と少し前にこの世界に召喚されて、魔王が討伐されたんで元の世界に帰って、何故かまたこの世界に召喚されたら500年後でした」


 いや、やっべえよ?マジで。カリラさんマジだよあの目。人間を見る目じゃねえもん。スムージーでも作ろうかなーみたいな気安い顔で、なんか先端にナイフがいくつもくっついてるドリルみたいなの持ち出してギュインギュインさせてたからね?若い子の将来なんかより俺の人生の方が大事に決まってんでしょ?

 ってかそんな物騒なもんどっから出したんだよ。初めましてすぎるわ。


「…………“やはり”そうでしたか」


 この中でただ一人、何かに気が付いていたような顔のジョニー爺さんがそう言ってきた。

 一体どこで気が付いたんだろうね。


「かつて、私の村が大規模な飢饉にあった時、黒い刀身に、青い刃を持つ剣を振るった一人の勇者が、飢饉から村を救い、村に“コメ”という物を流行らせてくださったと、伝承があったのです。のちに、千器伝説に記された千器様が操る神剣の特徴と、その勇者の振るった剣の特徴を示し合わせ、村を救ったのが千器様だったと、村の民が気が付いたそうです。そして、その剣を持つことができ、制御することができるのはこの世にただ一人、千器様だけだと、千器伝説には記されておりました。そこから、あなたが街中で戦っていた話しを聞かせてくれた病人が、その黒い刀身に、青い刃の剣を見たと言っていたのです」


 要するに色々偶然が重なって、俺の正体に気が付き始めてたってことなのね。まあ、そんなことよりもさ。


「千器伝説ってなによ…………」

 

 何その痛々しい名前。それに俺の話しだったら間違いなくカテゴリはギャグコメのはずだろ?

 国を亡ぼした古代種を卑怯な手段と古代兵器フル活用でぶっ殺して国に戻ったら、戦闘で服が消し飛んでたの忘れてて、公然わいせつで憲兵に追い掛け回されたり、遺跡調査で、古代兵器を復活させて、巨大ロボごっこしてたら魔王軍の幹部とか言われて討伐隊が編成されたり、ミハイルと娼館前で捕まったら、俺が国王をたぶらかしたとか言われて追い掛け回されたり、ほんとそんなんばっかりだったし。

 完全にあれだよね?冒険譚とかじゃないよね。明らかにギャグコメだよね。次点でラブロマンス。


「テメエが何者かは分かりました。ですが、なんでキルキス大帝のことを知ってやがるんですか?」


「どういう事?俺がキルキスのことを知ってちゃいけないのか?」


「あたりめえです。キルキス大帝は200年前の女帝の名前です。それが500年前の勇者であるテメエが何で知ってやがんのか不思議だったんです」


 そう野沢雅子っぽい口調で言ったカリラに、俺は少し呆れを含んだ視線を向けた。まぁ、カリラに呆れてる訳ではないけど。


「いや、キルキスの事はまともに考えない方が良いぞ。あいつマジでなんでもありだから。それこそ、マッカランが言ってた、たった一人の例外ってあいつのことだから」


 もう隠す気もさらさらなくなったので、徐々に適当になってきた。

 というか、ローズが何だか推理漫画にでも出てきそうなポージングで眉間に皺寄せてる。

 まあ今までのこともあって、色んな所の辻褄があって来ちゃったんだろう。

 落胆されちまったかな。

 

 まあ今はそんなことより、久しぶりに酒が飲みてえ。それにシガー。この肉体年齢に戻ってからそう言う欲がなくなってたんだけど、一仕事終えるとやっぱり恋しくなるのよ。

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