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幸運を塗り潰す不幸

◇ ◇ ◇

 

 あちゃー。

 あのレベルの英雄で、しかも異能持ちときちゃ、さすがにローズじゃ荷が重いか。


 頑張るローズの姿を影ながら応援してたんだが、まあいい勉強になっただろう。

 話から“幸運”の異能を持っているっぽい男と戦って、驕る危険性と、異能持ち同士の戦い、英雄同士の戦い、本当にいろんなことを学ばせてくれたよあんた。

 どれも俺にはできないことだしな。


「はいはーい、おじゃましますよっと」


ポケットに片手を突っ込みながら、ローズが真っ二つにした男の剣を拾い上げ、ローズの前に立つと、ローズは感激のあまり俺に熱い抱擁と、その瑞々しい唇を押し当てる様なヴェーゼを―――


「な、なにをしてますの!!!あなた程度が出て来ても殺されるだけですわ!早く逃げなさい!」


「あれ。ハグは?ヴェーゼは?」


 おかしいな、この激熱展開で乱入すれば「キャーユーリさん素敵~抱いてぇ!」ってなる予定だったのに。それに対して俺は「ふふっ、五年後、君がお義母さんよりも綺麗になるのを楽しみにしながら待っているよ」とか言うところまで想像してたのに。


「誰だお前は」

 

 ぶち抜かれた民家の中に侵入してきたボスっぽい男が、俺を睨みつけてくる。

 誰だって、あんたね。あれだけ堂々と武器拾い上げたってのに俺の存在に気が付かなかったの?あぁ、雑魚カス過ぎて見えなかったのね。


「ん?俺はこいつの保護者代理だよ」


「そうか………では死―――っな!?」


「………お探しの物はコチラですかねぇ兄さん」

 ボトリ。と、俺が投げた物が男の胸に当たり、地面に落ちる。

 それと同時にシャワーでも出した様な音が周囲に聞こえ、ローズが意味が分からないといった様子の顔を浮かべている。

 あ、もちろん“腕を切り取られた”ボスっぽい奴も。


「いやーほんと、あんたの部下厄介だったよ。適度に強いし、適度に弱いからさ。俺の一番苦手なタイプ」


「ぐ、ぐああぁぁぁぁあ!?」


「ありゃ、それどころじゃなさそうね」


 一人新種のブレイクダンスを始めたボスぽいのを放置し、俺はローズに手を差し伸べる。可能な限りイケメンっぽく。


「助けに来たぞ」


「い、いったい………あなたは何を………」


 何を、か。普通に腕をちょんパして、返しただけなんだけどな。

 まあ、アイツレベルならすぐに腕を生やしてくるだろうし、あれだけ痛がってるのも………俺を油断させるためなんだろうけどさ。


「―――隙ありだッ!!!」


 ローズの手を引き起こした時に、俺の重心がブレたのを目ざとく見計らった男が、蘇生させた腕と、切り落とされなかった腕に剣を持ち、それを振り下ろしてきた。


「あぶな―――い?」


「何言ってんのよ、早く帰るぞ?おじさんお腹減っちゃったからさ」


 その場に転がる8本の“指”を視界に収めたローズが、叫ぶのを中断し、再び驚いたような声を上げてくる。

 背後ではカランカランと、二本の直剣が地面に落ちる音と、男の悲鳴が響き渡っている。


「取り合えずこっから出ない?動きにくいわ」


「え、えぇ、そうですわね………」


 恐怖を顔一面に押し出す男を放置し、俺とローズはそのまま外に出る。 

 これだけイジメればさすがに理解してくれたでしょ。


「うっうおおおおおおぉぉおお!」


 破壊された民家から出ると同時に、背後からナイフが15と、直剣1、トマホーク2が飛んでくる。

 それを視界に収め、“投げられて誰の物でもなくなっちまった”武器を“切取った”。


「俺に武器の投擲とか効かないから」


 自分を守ることに関しては、俺の個性はそれなりに役に立つ。

 まあ戦闘じゃ地面を繰り抜いて落とし穴作るくらいしかできないけど。


「ふ、ふざけるなッ!俺は英雄だっ!異能持ちだ!数多の戦場を生き抜いて、数々の英雄も修羅場も超えてきた男だ!それが、それが何でお前なんかに、お前のような“無能”何かに………っ!!」


 なにあの人。急に怒り出したよ、更年期?誰か介護してあげなさいよ。


「とりあえずさ」


「くそぉぉぉおおお!!」


「死んでることに気が付けよな」


 指を落とした段階で、もう殺し終えてるのに、どうしてこう中途半端に強い奴ってのは自分が死んでることにも、首が繋がってない事にも気が付かないんでしょうね。

 本当におじさん困っちゃうわ。


「へ?」


 ローズの気の抜けた声と同時に、男の額にナイフが突き刺さり、その威力で、ただ乗っかってただけの首がずり落ちた。


 びちゅびちゅと血をまき散らす不細工なオブジェを横目に、ローズの怪我の具合を見てみれば、既に自己治癒と“気合い”で内臓に刺さってた骨が抜けてるのが分かった。

 ほんと英雄とか勇者てすげーよな。尊敬するわ。


「とりあえずローズさん?」


「は、はいっ!」


「他の連中ぶっ飛ばしてきてくんね?俺じゃあいつらに勝てないし」


「え、い、いや、他の者たちはあの男より圧倒的に弱いですわよ………?」


「“だから”勝てないの。分かってもわかんなくても行ってきなさい!!!!」


 ケツでも撫でまわしてやろうかと思えば、即座に背筋に何かが走ったようなローズがその場から逃げる様に走り去ってしまった。

 まあいいか。


 首が落ちて、驚いた顔をしている男に俺は歩いて近寄り、声を掛ける。


「ちょっとばかし運がいい程度じゃ、俺の最悪は乗り越えられないんだよ。残念だったね」


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